米国の分断を助長する保守系知事

 環境意識に目覚めたウォール街の企業が、保守系の州知事からしっぺ返しを受けている。

 米国の石炭産業の中心であるウェストバージニア州では、州の財務担当者が、同州はゴールドマン・サックス、JPモルガン、ブラックロック、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴとの取引を禁止したと発表した。これらの企業が石炭産業の支援をやめたのが取引停止の理由だ。

 これらの銀行は新しい石炭プロジェクトへの資金調達を大幅に削減し、ブラックロックは、2020年以降、自社が運用するファンドでの石炭会社への投資を積極的に削減している。最も汚染されている化石燃料とされる石炭事業は、近年収益性が低下している。

 ウェストバージニア州の決定は、民主党の保守派でウェストバージニア州選出のジョー・マンチン上院議員が環境法案に賛成を投じた直後に発表された。

 一方、フロリダでは、ロン・デサンティス知事が、一部のESG・環境意識の高い金融サービス会社を批判し、 「大手銀行、クレジットカード会社、送金業者が、宗教的、政治的、社会的信念を理由に顧客を差別することを禁止する」法案を検討していると発表。彼はまた、州の年金基金マネージャーが投資決定を行う際に環境要因を考慮することを禁止したいと述べた。代わりに、彼らは「投資収益率の最大化」にのみ焦点を当てる必要があると同知事は述べた。

 米国の良識の府と従来言われてきた上院では民主党と共和党の議席数は50対50で拮抗し、11月の中間選挙では共和党が勝利するのがほぼ確実だ。下院でも共和党の勝利が確実だ。これまでは国政レベルでの環境保護的政策に保守系知事が抵抗してきたが、上下院で共和党多数派を占めると、国政が大きく右へ舵が切られることになる。ニューヨークやカリフォルニア州の知事が、今度は国政に叛旗を翻すことになるのだろうか。

 良識に訴え合理的な意見の集約機能を果たしてきたメディアはどうか。現在は中道的なメディアは無い。FOXのような保守派は更に右へ大衆を押しやり、CNNのような革新派は更に左に大衆を押しやる。

 ますます分断し世界での指導力が失われる米国が心配だ。

(2022年7月30日 土曜日)