世界の動き 2025年11月12日 水曜日

今日の一言
「社会民主主義」
 ニューヨークの新市長マムダニ氏は自身を社会民主主義者と標榜している。トランプは彼を共産主義者と批判しているが、どう違うのだろうか。
 社会民主主義とは、議会を通じて資本主義社会の矛盾を解決し、段階的に社会主義を実現しようとする思想だ。共産主義のプロレタリア独裁を否定し、社会保障制度の充実や公正な市場経済の実現、民主的な政策運営を重視する点が特徴だ。
 主な特徴は以下だ。
・議会主義: 共産主義のように革命ではなく、議会を通じた社会政策や民主的な手段で社会変革を目指す。
・混合経済: 公有制と私有制企業が共存する混合経済を肯定する。
・社会保障の重視: 福祉や医療、教育などの公共サービスを充実させ、人々の生活条件の向上を図る。
・市場経済の調整: 市場の機能を認めつつも、格差を放置せず、社会的な規制や監視を通じて公正な市場経済を目指す。
・階級の融和: 階級間の対立を激化させるのではなく、社会の各階級を結束させ、共同の利益を追求する。
 ドイツを中心に一時は欧州を席巻した社会民主主義は衰退してきた。理由はいくつか考えられる。
・冷戦終結と共産主義の終焉:
 1989年の東欧革命と1991年のソ連崩壊により、社会民主主義が目標としてきた平等社会の実現を目指すモデルが、共産主義の挫折と結びつけられるようになった。
・共産主義国家の行き詰まり(特権階級による富の独占、官僚主義、政治的弾圧など)が社会主義全体への不信感につながった側面もある。
・グローバル化への対応の難しさ:
 グローバル化は、資本の移動を容易にし、国内産業の競争力を低下させた。
 社会民主主義が重視してきた、国家による産業保護や再分配といった政策が、グローバルな市場経済の中で制約を受けるようになった。
 経済成長を優先するネオリベラリズム(新自由主義)の台頭と、福祉国家への財政的負担増大も、衰退に拍車をかけた。
・中道左派政党の変化:
 社会民主主義を掲げていた中道左派政党の多くが、市場経済を容認し、財政規律を重視する「第三の道」やネオリベラリズム的な政策へと転換した。
 これは、伝統的な社会民主主義を支持してきた層からの支持を失い、労働者階級という伝統的な支持基盤を弱体化させる結果につながった。
 米国ではトランプの強権政治への対抗策として社会民主主義が再評価されているようだ。日本では参政党による右巻きのブームが発生している。庶民の多くが生活苦を感じる現在、清新なリーダーが率いる社会民主主義政党が注目される時期かと思う。既存政党ではれいわ新選組が近いようだが、今一つ伸びていない。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.女性指導者と右派
【記事要旨】
 ●高市早苗氏の登場とG7の文脈
– 高市氏の自民党党首当選は、日本で約250年ぶりの女性指導者誕生という歴史的快挙。
– G7ではイタリアのメローニ首相と並び、女性指導者は2人に。
– 過去のG7女性指導者の多くは右派出身で、左派はフランスのクレソン氏のみ。
 ●女性指導者の少なさと政治的傾向
– 世界的に女性指導者は少数で、国や時期が異なるため共通パターンの特定は困難。
– G7以外では左派女性指導者も存在(メキシコ、デンマークなど)。
– 先進国では左派政党が女性指導者を輩出できていない傾向がある。
 ●左派の矛盾と右派の台頭
– 左派はジェンダークオータ制など女性進出を推進してきたが、指導者には結びついていない。
– 右派の女性指導者(高市氏、メローニ氏)は、伝統的価値観を支持しつつも、アウトサイダーとして台頭。
 ●政治危機と女性の登場
– 多くの女性指導者は政治的混乱期に登場(サッチャー、メルケル、メイなど)。
– 現代の政治危機の常態化が、異質な存在としての女性指導者に信頼を与える構造を生んでいる。
 ●今後の展望と懸念
– 右派女性議員の増加は鈍化傾向。
– フランスでは極右のルペン氏が高支持率を維持し、2027年の大統領選が注目される。
【コメント】
 日本の地方の首長選では左派系の女性首長も誕生している。山形県知事、仙台市長、杉並区長などがそうだ。国政の自民党のように二世、三世議員が独占する世襲政治から、地方での変化を期待したい。

2.パキスタンの首都で死者を出した攻撃
【記事要旨】
 昨日、イスラマバードの裁判所前で爆弾が爆発した。首都では過去10年間、同様の攻撃はほとんど発生していなかったが、少なくとも12人が死亡、27人が負傷した。
 パキスタン政府に対して激しい反乱を続けているパキスタン・タリバンが犯行に関与したかどうかについては、情報が錯綜している。あるアナリストは、厳重な警備体制が敷かれたイスラマバードでの今回の攻撃は、パキスタンの治安にとって不吉な兆候だと警告した。
 この攻撃は、ニューデリーの地下鉄駅近くで少なくとも8人が死亡した爆発の翌日に発生し、警察はテロ攻撃の可能性もあるとして捜査している。2つの攻撃の関連性を示す証拠はないが、カシミールでのテロ攻撃をきっかけに今年発生したインドとパキスタンの軍事衝突を受け、緊張が高まっている。
【コメント】
 インドとパキスタンで相次いで爆発とくれば、イスラムとヒンズー原理主義の暗躍かと思いがちだが、タリバンという要素もあった。テロの激化を懸念する。

其の他の記事
・イラク国民は、次期政権がイラン支援民兵の武装解除を行うことを望んでいる米国が注視する選挙で、新たな議会を選出した。
・米国上院は、イラク史上最長の政府閉鎖を終わらせる法案を可決し、下院に送付した。
・ソフトバンクは、人工知能(AI)への新たな投資資金を調達するため、保有するNVIDIAの株式すべてを58億ドルで売却した。【コメント:売り時を捉えた印象だ。孫さんはさすがだ】

・日本を代表する映画スターの一人で、「乱」での演技で知られる仲代達矢さんが92歳で亡くなった。

2025年11月12日 水曜日