【株式市場の動き】
米国と日本の株式市場は先週(10月27日から31日)ともに上昇し、代表的な指数はいずれも過去最高値を更新した。特に米国市場はTech主導、日本市場は新首相による大型経済対策期待が背景にある。
米国・日本主要株価指数の終値・騰落率
指数 10/31終値 週間騰落率
ダウ平均 47,562.87 +1.2%
NASDAQ 23,204.87 +1.2%
S&P500 6,840.20 +0.7%
日経225 52,411.34 +3.6%
TOPIX 3,325.47 +1.5%
米国市場はインフレ沈静化やFOMCの利下げ、GAFAMなどの好業績主導で全面高となった。日本市場は新首相による大型経済対策と円安が強気要因だ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月28、29両日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定した。軟化する労働市場を支えるための利下げは、2会合連続となった。またバランスシートのランオフ(償還に伴う保有証券減少)を12月1日で終了するとも明らかにした。
ただ米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、12月の追加利下げを当然のこととして想定すべきではないと、市場に警告を発した。
【金利・為替動向】
米国債長期金利は週内でじりじり上昇し、10年債利回りは4.65%近辺まで上昇しました(金融政策見通しによる変動)。為替はドル高・円安が進み、10月31日時点のドル円は154円付近まで円安が進行した。
【今週(11月第1週)注目イベント】
米国雇用統計(11/1発表)BLSによる雇用統計は予定日に発表されるが、連邦政府閉鎖が長期化した場合は更なる遅延や追加の統計歪みのリスクも残る。
市場参加者やFRBは今月発表の雇用統計を「一過性の歪み」として取り扱う見通し。
米大手企業決算(Amazon, Nvidia, TeslaなどTech大手)
注目セクター・注目株
注目セクター:IT(特に半導体とハードウェア)、金融、ヘルスケア。また米国ではクリーンエネルギー、AI関連に注目。
注目株:米AMD(半導体7.6%高)、Tesla、Google (NVDAも大幅高)、Amazon、日本ではトヨタやキーエンスなどグローバル展開企業
【PE市場・プライベートクレジット市場動向】
PE(プライベート・エクイティ)市場は低金利環境や株高の継続で投資案件が拡大傾向にあり、M&A件数も高水準が続いています。特にテック・ヘルスケア領域への資金流入が顕著。
プライベートクレジット市場も金利環境の安定で資金流入が続き、レバレッジドファイナンスやクロスボーダー案件が活発化している。
【特記事項:信用リスクの広がり】
ただし、自動車部品関連企業の倒産は、プライベートクレジット市場と金融市場に複数の重要な影響をもたらしている。最近の米国自動車部品メーカーFirst Brandsなどの大型倒産は、民間の融資ファンドやCLO(ローン担保証券)などを通じて広く影響が及んでいる。
市場への即時的影響
プライベートクレジットファンドや投資銀行(Jefferies、UBSなど)は、First Brandsへの融資債権で数千万〜数億ドル規模の損失が発生している。
倒産件数の増加により、金融機関や投資家は潜在リスクの再評価を迫られている。「レバレッジドローン」「コベナントライト(契約条件の緩い)」「サプライチェーンファイナンス」などの高リスク融資が、資産価格下落やファンド流出の要因になっている。
信用リスク拡散と投資家心理
投資家や限定責任組合員(LP)はこれまで以上に審査やリスク管理を厳格化する必要が高まっています。流動性・時価評価の難しさを背景に、資産の現状把握・ストレステストへの関心が高まっている。
金融システムへの波及リスク
2008年の金融危機時のCDO問題と構造的には類似し、CLOや高リスクトランシェ(債券の区分)を経由したリスクの不透明性、流動性低下、資産価値下落という懸念が指摘されている。ただし市場規模や規制の強化もあり「システミックリスク」は現時点で限定的とされている。英・欧州の市場でも、一部大手ファンドの損失や監督強化の動きが見られます。
自動車部品倒産によるプライベートクレジット市場への影響は、ファンド損失・流動性低下・信用リスク拡散・審査厳格化・一部資産の価格下落として顕在化しています。今後はさらなる透明性・情報開示とストレステスト実施への関心が高まり、業界構造自体の分岐点となる可能性もある。
【株式市場のまとめ】
米国も日本も株式市場はTech主導の強気、金利・為替はドル高・円安。資金は実体経済の回復期待とインフレ沈静化への期待からリスク資産へ継続的に流入している。
2025年11月1日 土曜日