寺島実郎氏によると現在は100年前の第一次世界大戦終結直後に類似しているそうだ。同氏の主張する1920年代と現代の共通点を以下に要約する。
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・アメリカの内向き志向と「アメリカファースト」
第一次世界大戦後、アメリカは大きな犠牲を払いながら欧州に兵を派遣するが、戦争への反感や内向的な気運が国内で高まり、ウッドロー・ウィルソン大統領が提唱した国際連盟構想にも最終的に米国自身は加盟しなかった。その後、共和党政権が三代続き、当時のスローガンが「アメリカファースト」だった点は、今日のトランプ政権および現代アメリカにも通じる。
・資本主義の繁栄と「貯蓄から投資へ」
1920年代の米国は大量生産・大量消費社会が隆盛し、自動車を中心とした消費拡大が経済成長を牽引した。フォーディズムの台頭や「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズも当時の特徴であり、現代のデジタル資本主義や金融資本主義のような米国経済の構造と重なる。
・歴史の教訓と警告
第一次大戦後は国際協調の理想(国際連盟)も挫折し、各国が内向きになり、経済的にもブロック化が進んだ。寺島氏は、現代も米中対立や新たな分断、難民問題など「内向き」や「分断」の潮流が強まりつつあり、100年前の空気が現代に再現しつつあると警告している。
・次の危機への懸念
1920年代の繁栄の果てに襲ったのが1929年の世界大恐慌だった。寺島氏は、現在のデジタル資本主義や分断された国際秩序も、同様に大きなリスクを孕んでいるとみている。
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日米の株式市場は最高値を更新中だが、寺島氏のアナロジーで行けば、1929年の世界大恐慌に匹敵する激震が市場を襲うことになるのだろうか。
また、強権中国の拡大と、自国利益中心主義の米国と対峙してゆくにはどうしたらよいのだろうか。
以下は、寺島氏の分析を基に、AIとの会話で導き出した結論だ。
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【具体的な政策提言】
経済安全保障の実態重視
食料、エネルギー、技術など国民生活の基盤となるリソース調達の多角化や強化。単なる「中国封じ込め」論に流されず、冷静に自国経済の強靭化と本質的安全保障を追求すること。
特に日本が緊密な関係を築くべきアジア諸国は、中国と緊密な経済関係にあるので、単純な中国敵視が受け入れられるはずがない。
国際ルール形成への積極参画
一方的な対立に乗るのではなく、国際秩序づくりやルール作り(環境政策、データ流通、人権など)に日本が主体的に関与することで影響力を高めていく。米中両国が事実上協力・競争する場面では、日本も独自の価値観や基準を提案できるポジションを取る。
「全体知」に基づく戦略的判断
通俗的な「米中冷戦」論や、米国への過剰依存、感情的敵対に陥らず、状況全体を俯瞰する知見の構築と、それに基づく外交・経済政策の体系化(DX・産業競争力強化、アジア基軸技術への投資など)。
日本の影響力が強いアジア開発銀行や日本のODAを国家戦略を支える形で活用すべきだ。
アジアでの責任あるプレゼンス確保
日本は民主主義・技術・産業力・ソフトパワーを武器に、アジア太平洋地域における安定、安全、持続可能な発展に具体的な貢献を増やす。また、「米中のどちらにつくか」という単純な選択ではなく、独自外交の余地を最大限活用し、アジア地域のリーダーとして実質的な信頼と影響力を培う例として医療・環境・インフラ支援を行う。
アジアで唯一の安定した自由民主主義大国として強権中国への歯止め役の機能を果たすべきだ。
対中国・対米国との実際的な向き合い方
・米中の「本音」と綱引き構造を正確に見抜く
米国は中国を封じ込める以上に、アジアでの影響力を最大化しつつ、両者をバランスよく動かす外交を展開している。日本はこの現実を理解し、米中の「覇権争い」イメージに流されず、長期的な国益と地域安定を最優先に。
・イデオロギー対立からの脱却
「民主主義vs権威主義」という単純な二分法に依存せず、状況に応じて実利・国益を重視し、必要であれば対話・協調路線も柔軟に取り入れる。対米依存一辺倒、過剰な対中警戒ではなく、多角的な選択肢を持ち続ける。
危機管理体制の拡充と国民合意
安全保障/外交政策は国民的コンセンサスと透明性が強く求められる分野だ。合意形成のためには、国民的対話を通じた質の高い政策意思決定が不可欠だ。
国防予算は現状中国の10分の1で、GDP比2%になっても5分の1に過ぎない。エマニュアル・トッドではないが、核武装の是非についてもどこかで議論を始めることが必要だ。
トランプの米国が安定性と信頼性が欠ける中、日本はAUKUS(豪英米)に加わり安全保障体制を強化することが第一歩になるだろう。
2025年8月17日 日曜日