日本でもESG投資が注目されている。その動きの先導者は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だ。GPIFは厚生労働大臣から寄託を受け、約200兆円に及ぶ年金積立金の管理・運用を行い、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としている世界最大の機関投資家だ。
GPIFでは2017年度から「ESG指数」に基づいた株式投資を行っている。GPIFの投資原則に、「投資先及び市場全体の持続的成長が、運用資産の長期的な投資収益の拡大に必要であるとの考え方を踏まえ、被保険者の利益のために長期的な収益を確保する観点から、財務的な要素に加えて、非財務的要素であるESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資推進する。」と謳われているのだ。
ESG指数とは、企業が公開する非財務情報などをもとに、指数会社が企業のESGへの取組みを評価して組み入れ銘柄を決める指数のことであり、GPIFの運用資産の内約10兆円が、指数運用している。
現在GPIFがインデクスとして使用しているのはFTSE Blossom Japan Sector Relative Indexであり、FTSE社により開発され、ESGにおいて高い評価を得た企業から構成される指数だ。また、温室効果ガス排出量の多い企業については、気候変動リスク・機会に対する経営姿勢も選定基準の一つとしている。FTSEのインデクスを構成するのは約250銘柄におよび、銘柄に選ばれたことをPRする企業が多い。
FTSEのインデクス以上に世界的にポピュラーなのはMSCI ESG インデクスで、これは構成銘柄を個別に格付けしている。格付けは最低のCCCから最高のAAAまである。例えばトヨタはA、ソニーはAAA, MUFGはAといった具合だ。BBB以上で無いとそもそもインデクスに採用されないようで、BBB有名以上の取得を目指す企業が多い。有名企業ではライオンや電源開発、すぎホールディングス等がBBBであり、結構大変そうだ。MSCIは公開情報を基に勝手格付けしているが、ESGを気にせざるを得ない企業にとっては頭がいたい問題だ。
企業の使命の第一番は、収益をあげることにある。収益を上げて顧客、従業員、コミュニティ、株主に還元するのが最も大切で、ESGはそれを可能にする手段のはずだが、最近は「手段の整備が目的化する」状況だ。
本末転倒することがあってはならないことを肝に銘じたい。
2023年6月10日 土曜日