世界の動き 2025年6月11日 水曜日

今日の一言
「SP500は一服 金利上昇が心配」
 S&P500は、先週末の6日にかけて6000ポイント台を回復した。米中協議の進展に対する期待が拡がったことが大きい。
 一応6000台を回復したことで、市場には一服感が広がり、目先はボックス圏での相場の動きが見込まれる。四月のトランプショックの下げの時期に米国株を増やした投資家は30%以上の利益を上げており、利益の確定売りも出てくるだろう。
 懸念材料は、トランプの減税案が成立した際の政府のデフォルトで、長期金利は上昇している。
 日銀の国債購入減少政策の見込みで日本の長期金利も大幅に上昇しており「市場では40年物国債利回りが3.675%まで上昇(価格は下落)し、昨年末からの上げは1%を超えた。30年物も3.185%になり、ともに過去最高を更新した。」(10日日経新聞)米国より、自国の状況を心配すべき状況だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.なぜ米軍がロサンゼルスに駐留しているのか?
【記事要旨】
 米国において、国内での軍事力行使は稀で、通常は極めて深刻な状況に限って行われる。トランプ大統領は、ロサンゼルスでの移民強制捜査に対する抗議活動に対応するため、4,000人の州兵と700人の海兵隊を派遣することで、自らの権限を極限まで押し広げている。
 カリフォルニア州当局は昨日、ロサンゼルスにおける海兵隊と州兵の派遣を連邦政府所有地の保護に限定する緊急命令を裁判所に申し立てた。「トランプ大統領は米軍をアメリカ国民に敵対させようとしている」と、カリフォルニア州知事のニューサム氏はソーシャルメディアに投稿した。「裁判所はこれらの違法行為を直ちに阻止しなければならない」
 トランプ大統領は自身の対応を擁護し、「もし我々が介入しなければ、今頃ロサンゼルスは燃えているだろう」と述べた。
 私は、ペンタゴンを担当するタイムズの同僚は、 「州兵は山火事、国家災害、さらには抗議活動への対応において地方自治体を支援するためにしばしば派遣されるが、通常は州知事と連携して行われる。この政権の他の多くの事柄と同様に、トランプ大統領は法の限界を押し広げている。」と述べる。
 現役軍人は、大統領が反乱法を発動しない限り、国内法の執行に携わることが禁じられている。この反乱法は、連邦軍の米国領土内での運用を認めるものだ。。「ロサンゼルスの抗議活動は散発的で、都市生活に広範囲に影響を与えていないため、反乱と見なすのは難しい」と同僚は述べた。
 ロサンゼルスの現地で取材している同僚は、抗議活動は広範囲に及んでいないと述べた。「ロサンゼルス全域で起きているわけではなく、ダウンタウン全体で起きているわけでもない「ダウンタウンの一部、主に連邦政府ビル周辺で起きている。」と述べた。
 同僚の一人は、警官が発砲した群衆制圧用の弾丸に当たり、かなり激しい、瞬間的な痛みを感じたという。
【コメント】
 軍のガバナンスについては米国でもしっかり確立していないように見える。トランプのような大統領の下ではいつでも自在に軍を動員して政府への抗議運動を弾圧できることになる。

2.オーストリアの学校での銃乱射事件は欧州最悪の事件の一つ
【記事要旨】
 オーストリアの高校で昨日、元生徒が校内で銃を乱射し、少なくとも10人を殺害した後、自殺したとみられる。オーストリア第2の都市グラーツで発生したこの事件は、近年の欧州における学校銃乱射事件の中でも最悪の事件の一つとなった。
 州警察によると、銃撃犯は21歳で、合法的に購入した拳銃と長銃を所持していた。女性7人と男性3人を殺害し、学校のトイレで遺体で発見された。
 この事件はオーストリアに衝撃を与えた。シュトッカー首相は3日間の服喪を宣言した。
 フランスでは、中学校で荷物検査中に教務助手が数回刺されて死亡した。警察は14歳の生徒を逮捕した。
【コメント】
 学校での銃乱射と言えば米国の専売特許だったが、欧州にも広がって来た印象だ。向学心や明日への希望が顕著に下がっている日本への影響が懸念される状況だ。

3.アッバス議長、ハマスはガザから撤退すべきだと主張
【記事要旨】
 パレスチナ自治政府のアッバス議長は、フランス大統領府宛ての書簡で、ハマスに対し「武器を引き渡し」、全ての人質を解放し、ガザ支配を停止するよう求めた。
 この書簡は、来週ニューヨークで開催されるパレスチナ国家樹立を巡る国連会議に先立ち提出された。フランスのマクロン大統領は、フランスがパレスチナ国家を承認するための条件として、ハマスの武装解除を含むいくつかの条件を提示している。

その他の中東関連ニュース:
・5カ国が、ガザからのパレスチナ人追放を求めたイスラエルの極右閣僚2人に制裁を発動した。
・トランプ大統領は、イランの核開発計画をめぐる交渉において、イランが米国の提案の主要部分を拒否したようだと述べた。
・イスラエルは、ガザ行きの援助船内で拘束されていたグレタ・トゥーンベリ氏ともう1人の活動家について、国外追放したと発表した。
【コメント】
 アッバス議長の発言は当然だ。以前自治政府が支配していたガザで人心が離反したところをハマスが浸透し実質的に支配するようになったからだ。
 マクロン大統領はG7で初めてパレスチナ自治政府を国家として認めるようだが、ハマスが排除されても「自治」を取り戻すのは容易ではない。産業が無く、廃墟のみ残るガザを誰がどうすれば治めて行けるのだろうか。

その他の記事
貿易:米国と中国は、相互に課している制限を緩和する合意に達するため、ロンドンで2日目の協議を行った。
経済:世界銀行の報告書によると、トランプ大統領の貿易政策により、世界経済は今年、急激に減速すると予測されている。
中国:日本の防衛大臣は、中国海軍が演習を行うため、初めて太平洋に空母2隻を派遣したと述べた。

テクノロジー:メタ社は、「スーパーインテリジェンス」を追求する新たなAI研究施設の発表準備を進めている。
英国:政府は、新たな原子力発電所の建設に約190億ドルを費やすと発表した。

ロシアとウクライナ
EU:欧州委員会は、ロシア産天然ガスをヨーロッパに供給するノルドストリーム・パイプラインとの取引禁止を含む、ロシアに対する新たな制裁を提案した。
ウクライナ:ロシアによるウクライナの都市への夜間攻撃は恐ろしいもので、多くの都市で安眠が不可能になっている。
ロシア:2022年のロシア侵攻後にウクライナ東部から連行されたアメリカ人教師が、数ヶ月連絡が取れなくなっていたが、ロシアの刑務所で発見された。

2025年6月11日 水曜日

世界の動き 2025年6月10日 火曜日

今日の一言
「採用凍結:AIかトランプか」
米国の新卒者の求職が急速に困難になっているようだ。
ニューヨーク連銀のデータによると、22-27歳の大卒者の失業率は今春、約4年ぶりの高水準の5.8%に達し、全米平均を大きく上回った。企業各社はこの春の新卒採用予定数を削減しており、銀行大手のエントリーレベル職を手に入れるのは、ハーバード大学に合格するよりも狭き門だ。
人工知能(AI)の台頭により、エントリーレベル職の一部が機械に置き換えられているほか、二転三転するトランプ大統領の関税政策の影響で、米企業の多くが採用凍結に踏み切っているためだ。
実績のある経験者の中途採用が主流の米国では、新卒者の求職が困難な状況が広がって来そうだ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.カリフォルニア州、トランプ大統領を提訴へ
【記事要旨】
カリフォルニア州の指導者たちは昨日、トランプ大統領が移民取り締まりの一環としてロサンゼルスに州兵を派遣したとして、訴訟を起こすと発表した。
訴訟では、トランプ大統領が州兵への出動命令をカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム氏の指示を無視したため、違法であると主張する。
ロサンゼルスでは、不法移民の捜索を目的とした職場への家宅捜索に抗議して街頭に繰り出したデモ参加者と、法執行機関との間で数日間にわたる衝突が発生し、依然として緊張状態が続いている。金曜日以降、約150人が逮捕され、国防当局は抗議活動の鎮圧に向け、500人の海兵隊大隊を「動員」していると発表した。
トランプ大統領は昨日、抗議参加者を「反乱分子」と呼び、カリフォルニア州内、そしておそらくは他の地域でも、暴力的な抗議活動に対処するために軍を行使する広範な権限を与える法律を発動できるような発言をした。ニューヨーク市、サンフランシスコ市など各地で抗議活動が相次ぎ、緊張が高まっている兆候が見られた。
メディア:ロサンゼルスでの抗議活動を取材中、複数の記者が負傷した。CNN系列局9News Australiaの記者は、生放送中に警官から非殺傷性の弾丸を発射され、負傷した。タイムズ紙の記者も日曜夜遅くに非殺傷性の弾丸に当たり、病院で治療を受けた。
【コメント】
不法移民対策はトランプが米国民の過半から支持されており、トランプはズルズル下がる支持率を気にしての強硬策だ。3Kの仕事で不可欠な移民がどうなるか経済上の影響も気になる。

2.ウクライナはこれまでで最大のドローン攻撃を受けたと発表
【記事要旨】
ロシアはウクライナに向けて約500機のドローンとミサイルを発射した。これは3年以上前に戦争が始まって以来、最大のドローン攻撃となるとウクライナ軍は昨日発表した。
ウクライナの防空システムはほとんどの兵器を撃墜し、死者は1人のみだった。和平交渉が停滞する中、ロシアはこのような攻撃のペースを劇的に増加させている。
ロシアとウクライナは昨日、捕虜交換が行われていることも発表した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「負傷者、重傷者、そして25歳以下の者」の交換が開始され、今後数日間継続されると述べた。
クリミアでは、ロシア人観光客が今もウクライナのドローン攻撃を避けようとビーチに出かけている。
【コメント】
ウクライナの「蜘蛛の巣作戦」への報復とプーチンは言うが、軍事目標の攻撃と市民への無差別攻撃は峻別されるべきだ。ロシアの攻撃は非道だ。

3.米国と中国は2日間にわたる貿易協議を開始
【記事要旨】
トランプ政権と中国の当局者は昨日、ロンドンで貿易休戦に向けた協議を行った。ジュネーブでの最初の協議が合意に至ってから1か月後のことだ。
今回の協議は、トランプ大統領による関税導入をめぐる不透明感とサプライチェーンの混乱によって減速している世界経済にとって、非常にデリケートな時期に行われた。交渉は本日終了する見込みだ。
希土類鉱物:希土類鉱物は貿易協議の中心的な争点となっている。中国による輸出規制は、米国のミサイル、戦闘機、その他の軍事装備の生産に影響を与えている。
【コメント】
レアアースへの事前対策も無くトランプは145%という関税を振り上げたのか!? アホだな。

その他の記事
支援船:イスラエルは、ガザに向かう途中の支援船「マドリーン」号を拿捕した後、活動家のグレタ・トゥーンベリ氏を含む乗客を母国に送還すると発表した。
イタリア:市民権に関する規則の緩和を求める国民投票は、有権者の3分の1にも満たない投票率で否決された。
コロンビア:大統領選候補のミゲル・ウリベ・トゥルバイ氏に対する暗殺未遂の動画がインターネット上で急速に拡散し、国民の多くを恐怖に陥れている。

メディア:ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは、ケーブルネットワーク事業とストリーミング事業を分離し、2つの会社に分割すると発表した。
セルビア:トランプ一家がベオグラードにホテル複合施設を建設する計画に、保存活動家グループが妨害を仕掛けた。
YouTube:動画プラットフォームYouTubeは、コンテンツモデレーションのルールを緩和した。
【コメント】
コンテンツ モデレーション (Content Moderation) とは、インターネット上に投稿されるコンテンツを監視し、コミュニティガイドラインや法令に違反するものを削除または非表示にするプロセス。SNSや掲示板など、ユーザーが多数のコンテンツを生成するオンラインプラットフォームにおいて、品質と信頼性を維持するために重要な役割を果たす。

2025年6月10日 火曜日

世界の動き 2025年6月9日 月曜日

今日の一言
「次元が違う」
日本製鉄のUSスチール買収に関しては、その詳細はまだ不明ながら、日本製鉄はUSスチールの株式取得と設備更新のため140億ドルを支出するのが必至のようだ。トランプが声高にそう言っている。かかる巨大な資金需要は日本製鉄の財務体質を蝕む懸念が出ている。大きな成長の見込めない旧来産業への懸念でもある。
一方、BloombergにはMetaの買収に関して以下の記事がある。
『米メタ・プラットフォームズが人工知能(AI)スタートアップのスケールAIへの多額の投資を巡り協議している。複数の関係者が明らかにした。関係者の一部によると、投資額は100億ドル(約1兆4500億円)を上回る可能性がある。実現すれば、未上場企業による資金調達イベントとしては過去最大級となる。取引の条件はまとまっておらず、変更の可能性もあるという。スケールAIはマイクロソフトやオープンAIなどを顧客に持ち、機械学習モデルの訓練向けにデータラベリングサービスを提供する。』
スタートアップ企業に巨大な価格が付き、巨大IT企業は苦も無く投資できる。 次元の異なったビジネスの世界がある。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領、ロサンゼルスに州兵を派遣
【記事要旨】
移民強制捜査をめぐる衝突を受け、トランプ大統領は少なくとも2,000人の州兵をロサンゼルスの路上に展開するよう命じた。昨日は約300人の州兵が市内に到着し、さらに数百人が到着予定である。
土曜日、法執行官は数百人のデモ参加者と対峙した。警官はゴム弾、催涙ガス、閃光弾を使用したケースもあった。移民当局が不法労働者の捜索のため職場を捜索し始めた後、抗議者たちは路上に繰り出した。
昨日、当局はロサンゼルス中心部で数百人のデモ参加者と再び衝突した。
トランプ大統領は、カリフォルニア州のギャビン・ニューソン知事の同意を得ずに連邦権限を行使し、州兵を派遣するという異例の行動をとった。大統領は、移民当局の妨害となるいかなるデモも「反乱の一形態」とみなすと述べた。ニューサム知事は、トランプ大統領の決定を「意図的に扇動的」だと批判した。
背景:抗議活動は、ロサンゼルス南部の小さな都市パラマウントで勃発した。パラマウントはラテン系住民が多く住む地域だ。
関連:トランプ大統領の移民取り締まりは、来年のワールドカップに水を差すものになりそうだ。一部のサッカーファンは、米国の移民捜査の標的になることを恐れている。

トランプ大統領に関するその他のニュース:
・トランプ大統領はイーロン・マスク氏を「無礼」と呼び、彼との関係を修復する意思はないと述べた。二人の同盟関係が崩壊した経緯を詳しく見てみよう。
・トランプ大統領とマスク氏の確執は、トランプの権力に対する「権力は個人的なものだ」という考え方を浮き彫りにしている。
【コメント】
州兵の動員を州知事の承認なしに大統領が命じ、州兵が動いたのは驚きだ。州兵組織の長は、大統領から命令されればその指示に従うのだろうか。これが可能なら全米50州での「異常事態」を「国家の危機」として大統領が州兵を自由に動員できることになる。
大統領令の連発に加え、ここでも、国家組織の長自身によるガバナンスの欠如が明らかになった。

2.秘密文書がロシアの中国に対する懸念を明らかに
【記事要旨】
ロシアのプーチン大統領は、自国と中国の友好関係は揺るぎないものだと述べた。しかし、ロシアの国内治安機関である連邦保安局(FSB)の一部局は、中国を「敵」と呼んでいる。
タイムズ紙が入手したFSBの内部文書によると、ロシアの情報機関は中国を深く疑念し、安全保障上の脅威とみなしている。情報機関員は、北京がロシアのスパイを雇い、機密の軍事技術を入手しようとしていると警告した。
文書によると、ロシアの情報機関は、中国が西側諸国の兵器や戦争に関する情報を得るため、ウクライナにおけるロシアの活動をスパイしていると考えている。情報機関員は、中国の工作員が北極圏でのスパイ活動の隠れ蓑として鉱山会社や研究センターを利用しているとも警告した。
WeChat:ロシアの情報機関は、中国のスパイと接触している可能性のある人物を追跡するため、中国のメッセージアプリWeChatからデータを収集していることが、文書で明らかになった。
【コメント】
ロシアにとっては中国の子分に成り下がる事態は我慢できない。対米で協力せざるを得ないが、本心は中国の脅威を懸念している状況がよくわかる記事だ。

3.イスラエル、ガザ行きの援助船を阻止すると明言
【記事要旨】
イスラエル国防相は昨日、親パレスチナ活動家と一部の援助物資を積んだ船がガザに到着するのを阻止するため、軍は「あらゆる手段」を講じると述べた。
イスラエルによるガザ封鎖に反対する草の根運動「自由小隊連合」が運航する「マドリーン号」と呼ばれるこの船は、6月1日にイタリアを出航し、昨日エジプト沖に到着した。乗客には、スウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリ氏と欧州議会議員リマ・ハッサン氏が含まれている。
背景:イスラエルは過去にも、海路によるガザへの援助輸送を武力で阻止してきた。例えば、2010年には、トルコからの援助物資を積んだ船がイスラエルの特殊部隊の襲撃を受け、乗客9人が死亡した。
【コメント】
このような支援活動があるとは知らなかった。米軍がガザに埠頭を作って支援物資を搬入するという試みが2024年7月に行われたが、20日間で終了したことがあった。再度試みるべきではないのか。

その他の記事
イタリア:同国は市民権取得要件の緩和の是非を問う国民投票を実施しているが、ジョルジア・メローニ首相はこれに反対している。
日本:防衛力の増強が進められており、沖縄に新たなミサイル連隊が配備される。これは中国への対抗措置とトランプ大統領へのアピールを目的としている。
コロンビア:大統領は、ボゴタでの選挙イベントで上院議員と大統領候補が銃撃された事件に関連して、少年1人が逮捕されたと述べた。

教育
中国:ビザ発給禁止を懸念し、一部の中国人学生がアメリカの大学への出願を取り下げている。
アフリカ:アフリカの学生は、高等教育を求めてアメリカではなく中国に目を向ける傾向が強まっている。トランプ政権の締め付けは、この傾向を加速させる可能性がある。
ハーバード大学:アルフレッド・ウィリアムソンは、ハーバード大学1年生の時に物理学を専攻することを目指していました。その後、彼は留学生の積極的な支援者となった。

ビジネスと貿易
関税:中国とアメリカ間の関税は、長年のビジネスパートナーシップを試しています。
テスラ:自動車メーカーのテスラは、売上高と利益が急激に減少した。加えてトランプ大統領の怒りを買う可能性がある。

2025年6月9日 月曜日

米穀通帳

 米国の銀行口座の話ではない。1981年の食糧管理法の改正で廃止されるまで存続していた米の消費を政府が抑制するために作った制度だ。第二次大戦前の戦時体制の確立と、戦中戦後の食糧不足を切り抜けようとして政府が考え出した制度だ。この通帳が無いと一般家庭で米が買えない時代があったのだ。

 私の経験を記す。小学生になり自転車を乗りこなせるようになると、家からかなり遠いお米屋さんにお米を買うお使いに良く行ったものだ。1960年頃の横須賀での話だ。もちろん米穀通帳を持たされた。

 どの米が良いかというようなお米の選択肢はなかった。お米屋さんが米穀通帳に判を押して渡してくれる(多分)5㎏のお米の袋を自転車にのせて家に帰ったものだ。

 その後1969年には自主流通米制度が出来、1972年には米が物価統制令から外れ、米穀通帳は有名無実化した。私の通帳の記憶も60年代後半には途絶える。

 さて、令和の米不足問題だ。

 その解決策として
・減反政策を改め米の生産量を拡大する
・米の輸入を拡大する
・JAを頂点とする流通ピラミッドにメスを入れる
 とか、いろいろなアイデアが自民党から出ている。

 日本国内の米の生産量は、2024年で679万トン。米の消費量は700万トンと言われ、数十万トンほどこれを上回っているようだ。(主食としての消費量と、アルコール飲料用、飼料用の区別が明確でなく、直近の数字も無いので、概算だ) また、一人当たりの米消費量は年間50㎏という統計もある。

 WTOの規制で関税の掛けられないミニマムアクセス米の輸入が77万トンあり、以下の式が成り立ち、需給は均衡するはずなのだ。
  国内生産679+MA米77 > 米消費量700

 日本の人口は年間100万人ぺースで減少しているので、50kg X 100万人=5万トン、毎年米の消費は確実に減少する。こうした需要の自然減を考えれば、米の増産策は悪手だ。放棄地を農地に転換する農家に補助金を出すような施策は農民票目当てのバラマキだ。

 MA制度に頼らず、関税を払ってでもカリフォルニア米を輸入する流通大手が出てきた。その方が銘柄米よりずっと安いからだ。日本の米が、米国や韓国では日本より安く売られているという報道も多い。価格メカニズムが日本でいびつになっている証拠だ。

 米穀通帳を使って需要を抑制する時代はいざ知らず、米の流通を開放し、外国米の輸入を拡大すべきだ。市場メカニズムを通じた市場の公正化は、アダム・スミスの時代からの至言だ。

 日本の農家はどうすればよいのか。作り手の見える銘柄米で価格を維持して行く。高価格でも買い手はいるはずだ。
 大規模化により輸入米に対抗できる価格で、国産米を提供する。これも可能なはずだ。

 政府からの補助金は、真摯に農業に取り組む農家へのミニマムにしてもらいたいものだ。

2025年6月8日 日曜日

オルタナティブ投資の黄金時代は衰退か

6月4日のBloombergの記事から引用する。
・・・・・
 機関投資コンサルタントの草分けリチャード・エニス氏は、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティー(PE、未公開株)などオルタナティブ資産の投資について、高いコストにもかかわらず得られるリターンは平凡であり、今後10~20年で割安なパッシブ投資に押されて衰退すると予測した。
 同氏の研究ではオルタナティブ投資の比率が高いほどパフォーマンスは低下する傾向が統計的に示された。「彼らはカスタムベンチマークという黒魔術を完全にマスターしている。資産の正当な評価を高めるための努力は何もしていない」とエニス氏は述べた。
・・・・・

 PEファンドの経験者として述べると、ファンドが資産の評価を高めるための努力をしていないというのは全くの誤解だ。

 投資先の企業価値を高めるために全身全霊を傾けて努力をしている。但し、波に乗った業界に属する企業は小さな努力で企業価値が上がるが、不調な業界に属する企業の価値を高めるのは容易でない。KKRという世界的にも一流(と言われる)のPEファンドが投資したマレリは民事再生を余儀なくされたのは一例だ。

 過去2年米国の株式市場の指数SP500は連続して25%以上上昇した。PEファンドが目標としているのは20%以上の利回りを達成し、8%を上回った利回りに関してはその20%を成功報酬(キャリーと言う)として頂き、投資家もファンド運用者も成功を享受するというビジネスモデルだ。25%の株式市場全体の利回りと比べると見劣りがするのも事実だ。

 加えて、ファンドの運営費用として2%の運用報酬を投資家から貰うのだが、現在のパッシブ投信の運用報酬が0.5%とかまで下がっていることを考えると、とても高い運用コストだ。

 運用コストに見合うファンドの運用実績をコンスタントに上げて行けるか、PEファンドにとっては正念場であることは間違いがなさそうだ。日本のファンドには是非頑張ってもらいたい。

2025年6月7日 土曜日