世界の動き 2025年12月2日 火曜日

今日の一言
「Professional Skepticism :職業的懐疑心」
内部監査人に求められる言葉だ。
日本を代表する一流企業で品質に関する不正がここ数年続いてきた。東芝は不正会計に端を発して消滅した。NIDECも不正会計の全貌がわからない。地方の信用組合が考えられないほどの乱脈計をしていた。最近は電力会社の役員による独断の支払い約束が明るみに出た。
社内で、企業活動の中枢を観察できる立場にいた内部監査人は何をしていたのだろうか。「職業的な懐疑心」をもっていれば、これはちょっとおかしいなと必ず気が付いたはずなのだが。

ニューヨークタイムズ電子版より
1,反分極化の教皇レオ1世
【記事要旨】
– フランシスコ教皇との比較的文脈
フランシスコ教皇は2013年、移民の玄関口ランペドゥーサ島を訪問し、移民・難民・弱者への関心を鮮明にした。これに対し、2025年に選出されたレオ1世教皇については「前任者とどれほど似ているか、どれほど違うか」が注目されている。
– 中東訪問の象徴性
レオ1世はトルコとレバノンを訪問し、キリスト教徒が少数派で紛争が続く地域に強い関心を示した。就任時の最初の言葉が「平和」であったように、訪問中も平和を一貫して強調している。通常ならカトリック多数派の国を最初に訪れるのが自然だが、敢えて中東を選んだ点に象徴性がある。
– イスラエル・パレスチナ問題への姿勢
フランシスコが「ガザでの出来事はジェノサイドの可能性」と強い表現を用いたのに対し、レオ1世はより外交的で、二国家解決支持を改めて表明。さらに、国務長官がハマスの攻撃とガザ戦争双方を「虐殺」と呼んだことも重要な発言として記録されている。
– 価値観と政策の特徴
基本的な価値観はフランシスコと大きく変わらないが、AIのリスクを強調する点が特徴的。環境保護や弱者の尊厳をさらに強調し、最初の公式文書は貧困問題に関するもの。米国司教に対して大量国外追放を非難するよう強く促すなど、社会的弱者への配慮を前面に出している。ただし、直接的な非難や攻撃的な言葉は避け、柔らかいアプローチを取る。
– 「反分極化の教皇」としての役割
世界が分断と対立に満ちる中で、彼は平和と統一を最大の課題と位置づける。教会内部でも女性の叙階、離婚・再婚者の聖体拝領、同性婚など論争的課題が山積しており、分極化への対応が不可欠。
– アメリカ的背景と個性
初のアメリカ出身教皇だが、ペルーで20年過ごし、スペイン語・イタリア語を流暢に話すなど「典型的なアメリカ人」とは異なる側面を持つ。一方で中西部特有のアクセントや映画の趣味(『サウンド・オブ・ミュージック』『素晴らしき哉、人生!』『普通の人々』『ライフ・イズ・ビューティフル』)にはアメリカ的要素が表れている。選んだ映画は必ずしもカトリック的価値観に合致せず、むしろ人間関係や葛藤を描く作品が含まれている点が興味深い。
– 人物像
遊び心があり、ユーモアのセンスを持ち、謙虚な印象を与える。政治家や外交官のように「自分が最重要人物だ」と振る舞うことはなく、観察者として場にいる姿勢が際立つ。
【コメント】
要するに、レオ1世はフランシスコの価値観を継承しつつも、より外交的で柔らかいアプローチを取り、分極化した世界と教会に「平和と統一」を掲げる存在として登場した新しい教皇ということのようだ。

2.ロシアは米国特使の提案を待ち望んでいる
【記事要旨】
トランプ大統領の特使であるスティーブ・ウィトコフ氏は、本日モスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定だ。
ウィトコフ氏は、ウクライナ紛争終結に向けた新たな外交努力のきっかけとなった物議を醸した和平案の起草に尽力した。しかし、最近の活発な会談にもかかわらず、両者間の溝が縮まった兆候はほとんど見られない。それでも、EUの外交政策トップは記者団に対し、今週は「外交にとって極めて重要な週になる可能性がある」と述べた。
【コメント】
ロシアの代弁者に近いが、何もやらないよりは、紛争解決への関心を高める効果はありそうだ。

3.スリランカで甚大な災害
【記事要旨】
アヌラ・クマラ・ディサナヤケ大統領は、先週スリランカを襲ったサイクロンについて、「スリランカ史上最大かつ最も困難な自然災害」と宣言した。
サイクロン・ディトワによる死者は350人を超え、洪水と土砂崩れの被害は100万人以上に達した。昨年、大規模な抗議運動によって強大な政権が倒された後に政権に就いた政府にとって、復興は大きな課題となるだろう。
異例の破壊的なモンスーンシーズンは、インドネシア、タイ、ベトナムにも襲来した。少なくとも1,200人が死亡した。
【コメント】
日本人が閉じ込められたせいでインドネシアの報道が多いが、モンスーン地帯の台風被害は格別に多いようだ。日本政府は支援に資金と人を提供するべきだ。

其の他の記事
・香港のアパートで火災が発生し、150人以上が死亡した事件で、建設業者は安全基準を満たさない足場ネットを使用し、それを検査官から隠そうとしていたと当局は述べた。
・ホンジュラス大統領選挙の暫定結果では、トランプ氏が支持する候補者と対立候補が接戦となった。
・控訴裁判所は、トランプ氏を代理した弁護士のアリーナ・ハッバ氏が、ニュージャージー州の米国検事として違法に職務を遂行していたと判断した。
・英国は、米国の潜在的な関税を回避するため、医薬品への支出を増やすことに同意した。
・ロシアが国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士や物資を送るために使用する発射台は、先週の事故により使用不能となっている。

2025年12月2日 火曜日

世界の動き 2025年12月1日 月曜日

今日の一言
「一年の計は師走にあり」
 今日から12月。あっという間に今年ももう一月しかない。さあ、何をしようか。
 まずは、今年を振り返り、何をしたか・出来たかを考えたい。感謝すべき出来事や嬉しかった瞬間があっただろうか。次に、身の回りの整理だ。今年中に物とデジタルで片づけたいものを断捨離したい。「今年やり残していて、まだ間に合うこと」に優先的に取り組みたい。さらには、来年のイメージをざっくり描き、「仕事・お金・健康・家族・学び」という分野で、やるべきことの一部に、着手することが考えられる。新年からいきなりではなく、12月のうちに小さな新習慣を試し始めて、助走をつけることが考えられる。
 こう考えると、まさに一年の計は師走にありと言えそうだ。
 健康に感謝して寒い時期を乗り越えたい。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.帝国的なイスラエル
【記事要旨】
●イスラエルの軍事行動
– 2023年10月7日のハマス主導攻撃以降、イスラエルは圧倒的な軍事力を展開。
– レバノン郊外でヒズボラ幹部ハイサム・アリ・タバタバイを空爆で暗殺。こうした攻撃は日常化し、多くは報道されない。
– 標的はヒズボラ幹部だけでなく、一般市民が巻き込まれることも多い。
●「戦争と平和の狭間」
– イスラエルとヒズボラの停戦は崩れかけている。米国は年内のヒズボラ完全武装解除を要求するが、実現は困難。
– イスラエルは「ヒズボラが武装解除しない限り撤退できない」と主張し、ヒズボラは「イスラエルが攻撃を続ける限り解除できない」と応酬。
– 各攻撃は敵の抵抗心を強め、和平の可能性を遠ざけている。
●レバノンの脆弱性
– 政府は国家独占の武装権を確立しようとするが、イスラエルの攻撃が妨げとなっている。
– 米国元大使は「イスラエルのさらなるエスカレーションが、近年まれに見る有能なレバノン指導者を弱体化させる」と警告。   ●地域構造の変化と課題
– イラン主導の「抵抗の枢軸」は弱体化。イランはイスラエルとの短期戦で打撃を受け、シリアもアサド政権崩壊後はイラン寄りではなくなった。
– しかし軍事的支配だけでは平和の基盤にならず、パレスチナ国家問題が未解決のまま残る。
– 「支配」だけでは行き詰まりであり、外交的対話の道が必要だと示唆されている。
【コメント】
 要するに、イスラエルの圧倒的軍事力は中東で「帝国的存在」として機能しているが、その支配は和平を遠ざけ、レバノンやガザを「戦争と平和の狭間」A gray zone between war and peaceに置き続けているという記事だ。記事の行きつ戻りつの分析が、現状の複雑さをよく示している。

2.ウクライナの首席交渉官が辞任したが、協議は継続中
【記事要旨】
 ウクライナ当局者は昨日、フロリダでトランプ政権高官らと会談した。トランプ政権は、ロシアとの戦争終結に向けた提案への同意をキエフに迫ってきた。マルコ・ルビオ国務長官は会談後、「やるべきことはまだたくさんある」と述べた。
 ウクライナ側からは、ゼレンスキー大統領の右腕であり首席補佐官だったアンドリー・イェルマーク氏が欠席した。イェルマーク氏は汚職捜査のさなか、金曜日に辞任した。会談は、ロシアがウクライナをドローンとミサイルで約10時間にわたって攻撃した翌日に行われた。
【コメント】
 トランプ政権内でもウィトコフ特使とルビオ長官の間で主導権争いがあるようだ。双方の責任者がぐらついていると、まとまるものもまとまらないだろう。

3.トランプ大統領、ベネズエラへの圧力を強める
【記事要旨】
 トランプ大統領は航空会社とパイロットに対し、ベネズエラ近海の空域を封鎖すると警告し、政権が「麻薬カルテルとの戦い」と位置づける作戦を強化した。
 しかし、ワシントン・ポスト紙がヘグセス国防長官が麻薬密輸の疑いのある船舶の乗組員全員の殺害を命じたと報じたことを受けて、カリブ海における米国の軍事作戦の激化は議会の厳しい監視対象となっている。この報道を受け、軍司令官は9月初旬の攻撃で生き延びた人々を殺害するため、二度目の攻撃を実行した。議会の共和党と民主党の有力議員は、この二度目の攻撃は戦争犯罪に当たる可能性があると示唆した。
【コメント】
 この記事は「軍事的優位を誇示する戦略」と「国際法・人道的規範との衝突」という二重のテーマを含んでいる。前のイスラエルの記事と同様に、軍事力の行使が安全保障を強めるのか、それとも逆に政治的・倫理的リスクを高めるのかという問いが浮かび上がる。

其の他の記事
・インドネシア当局は、壊滅的な洪水の後、行方不明となっている数百人の捜索を行った。
・ホンジュラスでは新大統領を選出する選挙が行われているが、トランプ大統領が候補者を支持し、不人気な前大統領の恩赦を発表したこともあって、多くの人が選挙が不安定になるのではないかと懸念している。
・パキスタンは、タリバンとの関係が急激に悪化する中、アフガニスタン人の大量追放を強化している。
・ローマ教皇レオ14世は、イスラエルとパレスチナが二国家解決に向けて交渉できるよう支援する方法についてトルコ大統領と協議したと述べた。
・香港のアパート火災では、少なくとも8人の移民家事労働者が死亡し、生き残った人々も職を失うことを恐れている。この火災による死者数は現在146人となっている。

2025年12月1日 月曜日