90歳以上で夫婦どちらも要介護にならずに済む確率は?

野口悠紀雄さんは尊敬する経済学者だ。日本経済と日本企業のの現状について正鵠をえた警鐘を鳴らし続けている。最近の同氏のお先が真っ暗になる論考を紹介したい。

「90歳以上で夫婦どちらも要介護にならずに済む確率はたった5%未満」という題名で「現代ビジネス」のWEBで2022年9月18日に発表されたものだ。
https://gendai.media/articles/-/99759?page=5

詳細は是非上記を読んで欲しいが、要点を記す。
「歳をとれば、要介護状態になる可能性が高まる。では、そうなる確率は、どの程度だろうか? これについて正確に把握している人は、それほど多くない。」と筆者は切り出す。70歳代では問題は顕在化しないが、「85歳以上90歳未満では、ある人が要介護支援になる確率はほぼ5割だ。だから、夫婦のどちらも要介護支援にならない確率は、0.5x0.5=0.25でしかない。つまり、この年齢層では、介護と無関係というのは少数派なのである。」 続けて「90歳以上になると、もっと厳しくなる。要介護支援になる確率は、実に78.2%だ。つまり、要介護支援にならない確率は21.8%だ。だから、夫婦のどちらも要介護支援にならない確率は、その2乗である4.75%でしかない。」
そして「長生きすることの意味はなにかと、改めて考え込んでしまう。核戦争が現実的な危機であった1960年代に『核戦争の生存者は、死者を羨むだろう』と言われた。来るべき人生100年の時代にも、長寿者は死者を羨むのだろうか?」という暗い言葉で論考を締めくくっている。

先日、ジャン=リュック・ゴダールがスイスで安楽死を選んだ。後10年も経つと、日本でも安楽死が大きな問題として取り上げられるだろう。

自分は現在71歳だ。母は83歳で肺機能障害で亡くなり、父は100歳で老衰で亡くなった。単純平均すれば91.5歳まで生きることになる。自分の老後はどう展開するのだろうか。

(2022年9月25日 日曜日)

フィリップス曲線

FRBの金融政策についての米国での論考を読んでいたら、経済学上の基本概念であるフィリップス曲線(以下、P曲線)が出てきて驚いた。私が読んだペーパーでは、「FRBのジェローム議長は、インフレ率5%、失業率5%での均衡を目指している」と述べ、考え方の基礎でP曲線を使っているのだ。それでP曲線についておっとり刀で調べてみた。

 P曲線とは、1958年に英国の経済学者、アルバン・ウィリアム・フィリップスが論文で発表した考え方で、「失業率をグラフの横軸に、賃金上昇率を縦軸にとって関係を描くと、賃金が上がる(下がる)ほど失業率が下がる(上がる)右肩下がりの曲線が描けること」が実証的に示され、賃金上昇率と失業率がトレード・オフの関係になるという仮説だ。

 野村証券の用語集をみると、「縦軸の賃金上昇率に代えて物価上昇率(インフレ率)を取り、横軸の失業率の関係をグラフにすると同様の右肩下がりの曲線になる。中央銀行が景気動向(失業率)を考慮しながら、金融政策でインフレ率をコントロールする際の判断材料として参考にするが、デフレ下でも失業率が低下したり、インフレ下での不況(失業率の増大)というスタグフレーションの場合もあり、右肩下がりのフィリップス曲線では説明がつかない経済事象も起こっている。」という詳しい説明がなされており、P曲線の概念を適用する際の限界も示している。

 日本は、直近で、インフレ率が2.8%、失業率が2.8%というレベルだ。インフレ率が上昇するにつれ景気が後退し、失業率も増加して行く恐れがある。米国に比べ、我が国ではインフレを抑制する手段も、失業率を下げる手段も乏しいと思われるのだが、一番問題なのは、このような基本概念を使って経済政策の妥当性を説明してくれる専門家が極めて少ないことだと思う。

(2022年9月24日 土曜日)

世界の動き 2022年9月23日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「為替介入」
 急速な円安をけん制するために財務省・日銀はドル売り介入を行った。ドル売りの資金は外貨準備により制限されるので、介入の金額には制限がある。日銀だけが世界の中銀で大規模緩和を続けており、ヘッジファンドが安心して円売りを仕掛けてくるだろう。どれだけ介入で立ち向かえるかは不透明だ。円安には日本国民すら日本経済の現状と政府に信を置いていないことにあると思われる。

ニューヨークタイムズ記事
1.徴兵を恐れ人々はロシアから逃げ出す
【記事要旨】
 30万人の追加徴兵で、数千人の若者がバスで兵営に送られる一方、ビザなしで入国できるArmenia, Georgia, Montenegro, Turkeyへの航空便は満員だ。徴兵は戦闘経験のある者に限られるとのロシア政府の発表だが、そうでない人々にも徴兵通知が届いている模様。西側諸国は事態への対応に苦慮している。
【コメント】
 ベトナム戦争時、米国のドラフトを逃れてカナダに移住する若者が多くいた。国際化の進んだ現在は、閉鎖的なロシアからでも若者の移動は防げないということだろう。ロシア全土で厭戦気分が広がることを期待したい。

2.日本は円相場に介入
【記事要旨】
 円相場の更なる下落を防ぐために日本政府は24年ぶりに円買い介入を行った。FRBの基準金利を75bp引き上げたことにより円は145円以上に対ドルで低下し、過去一年で20%以上下落してきた。日本は主要国で唯一低金利政策を取り続けているのが、円相場下落の主因とされる。
【コメント】
 各国はインフレ対応で金利を上げているが、日本は2.8%程度しか物価は上昇していないので、金利を上げるのはまだ先だろう。「悪い円安」には当面単発的な為替介入しか手はなさそうだが、いつまで頑張れるだろうか。

3.クメール・ルージュへの裁判
【記事要旨】
 カンボジアで1970年代後半に170万人の人々を殺したクメール・ルージュへの裁判が15年以上続いている。国連主導の裁判は3億ドル以上の費用をかけ勧められたが結局罪に問われたのは3人だけで、クメール・ルージュの主要メンバーはトップのポルポトを始めすでに死んでいる。
【コメント】
 全く知りませんでした。確かポルポトの遺体はどこかに安置されていると記憶。圧政でカンボジアの発展は周辺国に比べて大幅に遅れた。現在はどうなっているのだろうか。

その他:
北朝鮮はロシアへの武器売却を否定
North Korea denied a U.S. intelligence report that it was selling millions of artillery shells and rockets ​to Russia, accusing the U.S. of spreading a “reckless” rumor.
海底火山の噴火が気温を上げる?
Tonga’s enormous underwater volcano that erupted in January may have caused a short-term spike in global warming, scientists said.
世銀総裁が地球温暖化を否定?
David Malpass, the president of the World Bank, refused to acknowledge that human-caused global warming earlier this week. Yesterday, he said he accepted the overwhelming scientific conclusion.

(2022年9月23日 金曜日)

世界の動き 2022年9月22日 木曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「一身上の都合」
Wikipediaの説明によると以下のようになっている。
「労働者の個人的な理由で職を辞する場合、例えば、病気療養のため、結婚により家事に専念するため、老親の面倒を見るために出身地での就職を希望するため、自己の能力を生かせる職場に転職するためという意味で用いられる。
労働者が自らの意思で退職する場合、退職願には具体的事情を記入せず、「一身上の都合により」退職したい旨を記載するのが半ば社会的慣わしとなっている。また、労働法上も退職理由を申告する義務はない。
退職届だけでなく、前の職場を辞めた理由について、履歴書や職務経歴書に記入する場合もある。ただし、リストラなどの会社都合で退職した場合は「一身上の都合により」と記載することはできない。」
ENEOSのCEOがこれを理由に退職する事態が発生し、本当の理由が今日発売の週刊誌で大きく取り上げられている。俳優の香川照之に続いて、自分の一生を棒に振る「一身上の愚行」だ。

ニューヨークタイムズ記事
1.プーチンは戦争拡大を予告
【記事要旨】
約30万人の予備役を動員を示唆。国民への演説で、国土を守るためには核兵器の使用も辞さず脅しではない、と語る。バイデン大統領は国連総会で西側リーダーは一枚岩でウクライナ支援を約す。ロシア国内では抗議運動で1252人が拘束された。国外脱出を図る片道切符で乗る人で飛行機は満員だ。ウクライナでのロシア軍は20万人と見られており、今回の動員は兵力を2倍以上にすることになる。
【コメント】
西側諸国が何を言おうがプーチンは聞く耳を持たない。プーチンを止めることは側近にしか出来ないだろう。

2.イランでの抗議行動が拡大
【記事要旨】
“Mullahs get lost,” “Death to the supreme leader” “Life, liberty and women.”と叫ぶ抗議行動が全土に拡大。政府は暴動鎮圧部隊や私服警官を動員し鎮圧を図る。抗議デモが盛んな地域では携帯電話、ネット、インスタグラムに制限がかかっている。国連で演説したライシ大統領は、デモにも、ハメネイ師の病状にも触れなかった。
【コメント】
行き過ぎたイスラム原理主義に対する女性の反乱がどこまで通用するか見守りたい。

3.ニューヨークはトランプを詐欺罪で告発
【記事要旨】
銀行借り入れを引き出すために資産価値を不正に膨らませた罪状でトランプと3人の子供をニューヨーク州の司法長官が告発した。州法を何点か違反しており連邦法も違反の可能性が高いと説明するが、トランプの立候補を禁ずることは出来ないと見られている。詐欺の一例として、ニューヨークのパークアベニューにある賃料が規制されているアパートが評価人の評価を6倍に改竄し292百万ドルと評価した例があげられる。
【コメント】
粉飾で被害にあったのは銀行ではなく米国民だという論調が出てこないと、トランプを止めるのは難しそうだ。

その他:
イルカの大量死
Around 230 pilot whales are stranded on a Tasmanian beach where 470 whales were beached in 2020. Half have already died.
欧州からの中国投資は冷え込む
European corporate investment in China has fallen steeply. It is now limited to a handful of multinationals.
南太平洋で中国とせめぎ合い
In an effort to counter China’s growing influence in the Pacific, the U.S., the U.K., Australia and New Zealand are conducting joint military exercises with Fiji, The Associated Press reports.

(2022年9月22日 木曜日)

世界の動き 2022年9月21日 水曜日

ニューヨークタイムズ電子版より

今日の一言:
「基準地価」
 基準地価は、国土利用計画法にもとづき、都道府県 がその年の7月1日時点における基準地の1㎡当たりの価格を判定するもの。毎年9月下旬に公表される。 一般の土地取引のほかに、地方公共団体や民間企業の土地取引の 目安として活用され、「都道府県調査地価」とも呼ばれる。
 昨日の発表では、全国平均(全用途)の変動率が前年比プラス0・3%となり、3年ぶりに上昇に転じた。住宅地はプラス0・1%と、バブル景気が終わった1991年以来31年ぶりの上昇となった。商業地もプラス0・5%に転じ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた落ち込みからの回復が鮮明になった。
 驚くのは、上昇率のトップは住宅地・商業地ともに北海道の北広島市であること。人口集中が進む札幌市に比べ割安感があり、駅前の再開発やプロ野球・日本ハムファイターズの新球場の建設が進み、宅地需要や店舗需要が増えて上昇傾向にあるということだ。

ニューヨークタイムズ記事
1.ロシアは併合へ動く
【記事要旨】
 ロシアはウクライナで占領する4つの地域でロシアへの併合の住民投票を行う意向だ。ゼレンスキー大統領はロシアは自分の「国土」を防衛するためには核兵器の使用を辞さないと併合の動きを警戒し世界に警告。ロシアは民衆の草の根の要望で、ルハンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ケルソン地域、ザポリージャ地域で、住民投票を36時間以内に行うとプロパガンダ公表。米国は「茶番」だとするも、2014年には ロシアは同様な手段でクリミアを併合した。ロシア国内タカ派はこの動きを歓迎している。
【コメント】
 やるやると言ってきたが、今回は本当にやるのだろうか。ロシア占領地域の住民の声が西側には報道されない。住民はどう考えているのだろうか。

2.「このままではいけない」グテーレス事務総長
【記事要旨】
 国連総会が開催され、グテーレス事務総長は大胆な演説を行った。“We cannot go on like this. We have a duty to act. And yet we are gridlocked in colossal global dysfunction.” 「巨大な機能不全に対して行き詰まってる状況に対し行動を」と呼びかけた。“Let’s have no illusions. We are in rough seas.”とも訴える。
【コメント】
 岸田首相は国連で何を訴えるのだろうか。

3.イランで抗議運動広がる
【記事要旨】
 22歳の女性が勧善懲悪省警察に収監され死亡したのを原因に、イラン全土の都市と大学で主に女性による抗議デモが起きた。イスラム講和国の終焉と病床にあるハメネイ師の死を叫んだ。死んだ女性は顔を隠すヒジャブを着用せず3日間収監されたあと死亡した。今回の抗議運動は米国でのジョージ・フロイドが警官に殺された事件に例えられる。
【コメント】
 イランはイスラム革命以前は自由な国だった。今後の動きに注目したい。

その他:
パキスタンでは疫病が広がる
Hundreds of people in Pakistan have died in recent weeks from flood-related diseases, including malaria and dengue fever, and officials fear infections could spread, Reuters reports.
大規模補助金不正はアメリカでる
The U.S. Justice Department charged 47 people with stealing $240 million from pandemic aid programs intended to feed children in Minnesota.
アメリカでのFaxを使っていたんですね
Health data in the U.S. is a mishmash of faxes, emails and hand-typed spreadsheets, undercutting the country’s ability to respond to outbreaks.

(2022年9月21日 水曜日)