ガバナンス3形態の優劣

今年の株主総会では株主還元より会社のガバナンスの整備を求める声が強かったと日経新聞が報じていた。

日本の会社のガバナンス形態には3つあるのはご高尚のとおり。
指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、監査役会設置会社の3つである。

指名委員会等設置会社:
巷間、欧米のスタンダードに近く、最も進んだだ形態と言われるが、日本企業で先行した東芝は不正会計疑惑にまみれ、ソニーは極度の業績不振に見舞われた。
形式だけ先進っぽくしてもそれが実際に先進のガバナンスをもたらすわけではないことは自明である。

監査等委員会設置会社:
ガバナンス・コードの基準の社外取締役を複数任命要請にこたえるべく、既に複数存在した社外監査役を社外取締役に替えることが可能な簡便な制度である。
従来の監査役が監査等委員になるので、しっかりした監査役会であれば有効な形態たりうる。
また、指名委員会のように3つの委員会を正式に走らせるわけではないので会社のオペレーションの負担はずっと少なくて済むメリットがある。

監査役会設置会社:
実は監査役の権限は強いのです。
取締役は取締役会決議の際しては一票を持つのみです。
正論でも、多数決では負けることが大いにあり得ます。
監査役は独任制だから、監査役が一人でも納得しなければ、
決議に同意しないことが可能です。
最終的な手段として監査役監査報告を発行したい手があります。

結論:従って、結論としては「どの形態が優れているか一概には言えない」ということになる。

数字考 その2 1000羽に一羽

「椋鳥は1000羽に一羽毒がある」

江戸時代の儒学者野中兼山が害虫を駆除する椋鳥を農民が捕食しないようにと語った言葉だと言われる。
100羽に一羽では、椋鳥の毒にあたった事例が無いとおかしいし、10000羽に一羽では恐ろしくなくて農民は椋鳥を捕食し続けるだろう。
1000羽に一羽(つまり0.1%)というのは人を怖がらせるのに絶妙な効果を持つ数字であることがわかる。

厚生労働省の抗体検査の結果、東京都での抗体保持者は0.1%だったそうだ。怖がるには絶妙な数字だろう。
東京ドームに観客が50000人集まると、感染者が50人いることになる。怖いと思うかどうか微妙な数字だ。

東京アラートで言われていた1週間の新規感染者が一日平均20人以下というのは、100000人当たり0.5%と説明されていたが、ドイツの100倍の厳しさとも言われている。

アラートに使うのにどういう数字が妥当性を持つか一概に言えないが、日本の経験則、1000羽に一羽を適用してみよう。

1000万東京都民の0.1%がコロナに罹患しているとして10000人。10000人を365で割ると、一日の新規感染者が30人程度で収まれば許容範囲。
40人を超えると少々注意したほうがよかろう、というのが皮膚感覚がもたらす結論ではないだろうか。

(2020.6.19)

数字考 その1 2週間に一度

今から30年以上前にバンコクに勤務したことがある。
当時のバンコクは夜の歓楽街が有名で日本の本社から来る出張者や接遇を依頼された取引先を案内することが無かったと言えばうそになる。
女性を抱えた店で客引きが言っていたのは「うちの女の子は安心ですよ。2週間に一度病気の検査をしていますからね」というものだった。

2週間に一度の検査というのは絶妙な設定だ。
1週間に一度というとそんな頻度でほんとにやっているか信憑性に欠ける。
1か月に一度だと、間が空きすぎてちょっと怖い。お客が病気に移る可能性がある気がする。

今回、歌舞伎町のホストクラブで新型コロナのクラスターが発生し、ホストに2週間に一度のPCR検査を義務付けると言っていたのには驚いた。
ああそうか、ホストというのはバンコクの女性のように肉体を酷使して働いている人たちなのだ。

読売巨人軍の選手で2人の「微陽性」の感染者が出たあと、巨人軍が発表した、「全選手を2週間に一度PCR検査する」という方針には笑った。
野球選手もそんなに肉体を酷使する職業なのだろうか。

何れにしても、「2週間に一度」というのは
何となくしっかりやっている印象を与える便利な表現なのだ。
曰く、2週間に一度PDCAを確認しよう、とか
2週間に一度フォローアップミーティングしようとか、である。
ビジネスへの展開も容易だ。

(2020.6.17)

日本にいてはわからない日本のニュース

我々は日本に住んでいるから日本のことは何でも知っていると思いがちだ。
そうでもない。

日本のメディアの報道の偏りは今回のコロナウィルス禍を見ればよくわかる。
どのTVも新聞もほぼ同じトーンで同じ内容の報道を繰り返ししている。公表される「政府の発表(=事実)」への確認作業も不十分だ。

こうした偏った国内の報道は、海外の報道に接すると「え、こんなことが日本であったの?」と思わせる状況を起こすことがある。

今日はその一例を紹介したい。
https://www.gzeromedia.com/signal/
はユーラシアグループのイアン・ブレマーが主宰する(多分)ニュースレターだ。

June8,2020に以下の記事があった。
A world of George Floyds として世界の動きを紹介している。日本はというと、以下の記述あり。
(原文はすべて英文だがわかりやすく和訳を加えた)

Japan: 非日本人のマイノリティ人口の少なさ(人口の5%以下)がsource of both pride, controversy, and debate in recent years. と言い、その後にThis Saturday, several hundred people were out on the streets of Tokyo to express solidarity with the Floyd protests, but also to highlight police discrimination in their own city, spurred on by the case of a 33-year old ethnic Kurd from Turkey who was thrown to the ground and manhandled by police after he refused to let them search his car. と米国と同様のことが日本にいるクルド人にも起きたことを伝えて、彼の友人が撮った画像が広まっているとも述べている。

これ読んだので、
「クルド人 警察」でググると画像も出てくる。な「え、日本の警官もミネアポリスの警官に近い感じのことやっているな」という印象を持つ。

この件は全く知らなかった。
日本のメディアで取り上げたところがあるのだろうか。

(2020.06.09)

Agency 理論の実体

Agency 理論とは、以下のように説明される。
情報の非対称性を前提としたうえで、契約関係をプリンシパル(委託者、株主ないし投資家本人)とエージェント(代理人、経営者)の関係としてとらえ、エージェントの行動がプリンシパルの利害と一致しないときに発生する問題の構造を明らかにし、その問題に対処する方法を考察する理論である。

具体例としては、投資ファンド(株主)が、投資先の経営を委ねるためにCEOを見つけてきたが、彼/彼女の働きが期待外れの場合に露見する問題だ。
株主の期待を満たすことが出来ない経営者は契約を破棄(解雇)されることになる。経営者にとっては不名誉なことだが、株主にとっても経営者の人選の不始末と、案件がうまくいっていないことを周知することになるので避けたい事態だ。

株主の意向をCEOが満たさない場合は株主が決断すれば解決は可能だ。(結果がうまく行くかどうかはやってみないとわからないが)

案件的に一番難しいのは、絶対株主(持分2/3以上)がCEOをしている会社に少数株主として参加し、ガバナンスを効かせるにはどうしたら良いかという問題であろう。

業績が良ければ問題ないが、実績が全く残せていない場合はどうするか。
株主=エージェントという経営形態が機能しないことが過去数年で証されたとすれば、論理的な解決策は以下のどれかだろう。
1.株主を変える(既存の絶対株主をその地位から退かせる、大株主を見つける)
2.CEOを変える(株主の同意が必要、人選は困難)
3.株主もCEOも変える
いずれも簡単な選択肢ではない。

株主=エージェントが会社の状況をどの程度理解し、どの程度の危機感を自ら抱いているかに大きく依存するだろう。自分に甘い株主=エージェントだと、状況の改善は難しい。

(2020.6.7)