国民文化の特徴を解き明かす

昨日に引き続き、いろいろな国民文化の違いを説明する文化人類学的な論考を一つ紹介したい。

オランダの社会学者ホフステードによる、国民文化を4つの次元で説明しようという考えだ。4つの次元の組み合わせの違いで、経営者や従業員の行動は異なるので、異文化への理解が重要だと説くものだ。

ホフステードの4つの次元;
1.権力の格差 (power distance)
組織内での権力の分配が不平等であることを社会が受容する程度を表す。
2.集団主義(collectivism)対個人主義(individualism)
集団主義においては人々は集団のメンバーとして行動することを好む。 個人主義においては個人として行動することを好む。
3.女性らしさ(femininity)対男性らしさ(masculinity)
女性らしさでは他者との良好な関係、協力、家族、という価値を重視。 男性らしさでは競争、金銭の獲得、主張性という価値を重視。
4.不確実性の回避(uncertainty avoidance)
人々がリスクを許容するかどうか、構造化された状況を好むか好まないかで判断する。回避傾向が強いと、構造化されルールのある状況を好む。

とここまで書いてきて、ホフステードが研究を発表した時期を確認したら1970年代の初めだ。ちょうど大企業の多国籍化、国際化が進んだ時期でホフステードの考え方がもてはやされたのもうなずける。

最近ではホフステードの研究を継承し、コンサルティングを提供する機関が出来ている。彼らによると、現在は 5.短期志向・長期志向 6.人生の楽しみ方 が加わり、6次元で分析しているようだ。

さて、日本人は全般として、どの辺に位置すると思いますか?アメリカ人は?インド人は?
貴方はどうですか?あなたの交渉相手のインド人は?部下のタイ人は?

(2020.7.3)

MタイムとPタイム

顧問先数社でいろいろと案件が同時並行にたて込んできた。
曰く、取締役会決議、PDCAの作成、労務問題の調査、期末監査等々だ。

こうした場合、性格として、一つ一つかたをつけてからでないと次に進めない。融通の利かない性格だ。
一方、友人のインド人社長は融通無碍で、いくつものことを同時並行的に扱ってへいっちゃら。社業に専念しているように周りには見えない。

こうした物事に対する見方を文化人類学的にクリアにしたのがPタイムとMタイム:Mタイムは(monochronic time=単一的時間)とPタイム(polychronic time=多元的時間)と人間の時間のとらえ方を二つに分ける考え方だ。

Mタイムの持ち主の特徴:
・一度に一つのことしかできない
・結果を重視する
・時間に正確だ
Pタイムの持ち主の特徴:
・複数のことを同時に行う
・人間関係を重視する
・時間にルーズだ

さてさて、自分(典型的なMタイム)がインド人社長(典型的Pタイム)とどのように意思疎通を図るか、彼にこちらの考えを呑んでもらうかは、なかなか難しい問題だ。このような悩みは海外で勤務する日本人に共通する。

感染者100人越えの東京。大台突破!
小池知事も典型的なインド・アラブ系の考え方(Pタイム)の持ち主だと理解するとわかりやすい。
7つの前回の選挙公約が中途半端でとどまっていることや、とりわけ築地の決着がついていないのは彼女のそうしたPタイムの表れだと思えば納得できる。
Aはどうなっているのかと追及されると、BやCの説明をするのは、本人にとっては矛盾しない。Aと同じ時間軸で流れている案件なのだから。

(2020.7.2)

解雇すること・されること(2)

前回、解雇するのはつらい仕事だということを書いた。しかし、解雇されるのはもっとつらい。

私は銀行に勤務した後何度か転職をしているが、明確に解雇されたことは幸いなことに無かった。
ただ、自分がもう期待されていない、あるいは、自分が出来ると思う仕事につけてもらえない、ということは、はっきり言われなくても空気を読める大人であればだれでもわかるものだ。

そこでうじうじしても始まらない。
自分の能力(実は自分が自分のことは一番わからないので、客観的に自己評価することが絶対に必要だ。親しい友人を話してみるのも良い)を十全に果たせていないと感じたら、転職を考えるべき時期だ。

ただし、隣の芝生はいつも青く見えるから、Job hoppingはお勧めできない。給料は良くても人間関係がとげとげしい職場は論外だ。会社の社風というのもあまりあてにならない。接するチームのメンバーの考え方・仕事への取り組み方、チームワークが最も大事だ。(これも会社に入ってみないとなかなかわかりませんがね。)

自分に人的ネットワークや資金力があれば自分で会社を始めるのが一番気楽だろう。但し、個人企業であれば大きくなるには限度がある。会社を大きくすれば、経営者としての苦労が大きくなり、勤め人の気安さになれた人にはお勧めできない。

2010年のアメリカ映画The Company Menは歴史ある造船会社を舞台に、業績悪化による人員整理を扱った映画だ。
Ben Affleck, Kevin Costner, Tommy Lee Jonesという芸達者がそれぞれが置かれたポジションでの苦悩と努力を表現している。アメリカ映画らしく最後は全体としてはHappy Endになるが、行員からたたき上げで部長になった人が職が見つからず自殺したり、解雇に直面した心のひだが描かれている。

困難な時に支えてくれる家族(先ほどの部長は理解のない家族に支えられず自殺した)や心を許せる友人のありがたさを思い起させる秀作だ。

(2020.6.30)

解雇すること・されること(1)

ダイヤモンド・プリンセスを運営するカーニバル社の日本法人であるカーニバル・ジャパンが70人の正規社員のうち24人を解雇する通知を出したと報道されている。
解雇される社員の一部はユニオンを結成し対抗するらしい。

コロナ禍による業績不振で致し方のない解雇と思われる。
アメリカでの経験ではPosition closedというのが(解雇する側にもされる側にも)最もまっとうな解雇であった。
朝言われて夕方までに荷物をボックス一つに整理して退社する。ニュースや映画で良く見ますよね。

例えばコンサルティング業界では「給料の最低3倍稼げ」というのが最低限の目標だ。為替のディーラーなら「最低5倍」とか高給になるほどバーが高くなる。間接部門であれば自分が組織に持たらす価値はいくらか公平な目で自己評価するのだ。

自分の稼ぎ・価値より報酬が低ければ転職を考えるほうが良いかもしれないし、万一、解雇されそうなら、転職の用意を怠りなくするべきだ。もちろん、報酬は仕事の一面であり、チームの人間関係が報酬に優先するという考え方もある。

さて、解雇する側に回るのは楽しい仕事ではないが、解雇の対象者が常に自己評価をして自分の競争力を磨いている人だと気が楽だ。こういう人は転職が容易で、解雇前より良いポジションにつくことも多いからだ。(この項、つづく)

(2020.6.29)

目詰まりを防ぐには(2)

「一利を興すは一害を除くに如かず。一事を生かすは一事を省くに如かず」(利益となる事を一つ始めるよりは、従来からの害になることを一つ除いた方がよい)

この言葉は大平正芳元首相の言葉とばかり思っていた。彼が座右の銘としていたからだ。
今日、調べて見ると、チンギス・ハーンのブレーンであった耶律楚材の言葉だということが分かった。

さて、現在はコロナ不況もあり採用が容易だ。
滞留して遅れがちな業務、手付かずだった新規業務、等々を解決するために人員を増員する企業が多い。一利を起こすにはまず人材からという考えだ。

新規に人を採用する際にはその人のもたらすROIを検証し(フロント以外はROIの計算ができないというのは言い訳だ)基準を満たさない人材は決して採用すべきではない。

業務については、Eliminate, Automate and Delegate Tasksという方針を確立したい。要らない業務は減らし、なるべく自動化し、しかる後に業務を委譲する。
「一事を省くに如かず」CEOにとって重要な心構えだ。

(2020.6.28)