世界の動き 2025年7月18日 金曜日

今日の一言
「シュレーディンガーの猫」
 もともとは量子力学における重要な概念で、相反する状態が重なり合って存在する状況を指す。量子力学からその後、形而上学的思考実験としてひろまった概念だ。
 この実験では、猫が毒の入った小瓶の入った箱の中にいる。毒が放出され、猫が死ぬ確率は50%だ。箱の中にあって目に見えない間は、それは生きているようでもあり、死んでいるようでもある。
 最近のパウエルFRB議長を巡るごたごたは、まさにシュレーディンガーの猫状態だ。
 トランプ大統領は、別の議長が就任した方が米国は良くなると信じているようだ。解任の噂を意図的に発することで、大統領は市場の反応を試すだけでなく、パウエル議長解任という概念を社会に浸透させ、実際に解任する際に、解任が容易に受け入れられるようにしようとしているのだ。
 シュレーディンガーの猫のように、パウエル議長の状況は同時に生と死を繰り返している。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.シリア人、突発的な暴力事件後の被害状況を調査
【記事要旨】
 シリア人権監視団によると、日曜日以降、シリア南部スウェイダ県を襲った宗派間の暴力で500人以上が死亡した。アサド政権崩壊後、シリアで最も多くの死者を出した騒乱の一つとなった。
 Timesの記者は、政府軍と少数民族ドルーズ派の民兵との衝突が周囲で激しくなる中、数日間自宅に閉じこもっていた33歳のホッサムさんに話を聞いた。ドルーズ派のホッサムさんは昨日、被害状況を確認するために車で各地を回った。行く先々で、路上には血が溢れ、窓ガラスは割れ、死臭が漂っていた。
 スウェイダでの暴力事件は、相当数の少数民族ドルーズ派が居住する隣国イスラエルにも波及した。イスラエル軍がダマスカスへの空爆を実施した後、シリアのアハメド・アル・シャラ大統領は昨日、イスラエルがシリア国内に「混乱」を招こうとしていると非難した。
 今週、シリアのドルーズ派に対する扱いをめぐり、イスラエル国内の小規模ながらも影響力のあるドルーズ派の間で動揺が広がった。彼らは抗議活動を行い、道路を封鎖し、中にはシリア国内に強制的に入国する者もいた。
 イスラエル:イスラエルがシリア南部における長期的な軍事作戦にどれほど真剣に取り組んでいるのか、あるいは今回の攻撃は主にイスラエルのドルーズ派の怒りを鎮めるための短期的な試みだったのかは不明だと、Timesのエルサレム支局長は見る。
【コメント】
 せっかく安定しそうなシリア新政権の足許が揺らいでいる。ここでもイスラエルが不安定さの原因だ。

2.英国、選挙権年齢を16歳に引き下げる計画
【記事要旨】
 英国政府は昨日、16歳と17歳の若者にも投票権を認めると発表した。この計画は、英国において過去数十年で最大の投票権拡大と評されている。
 キア・スターマー首相率いる労働党政権は政策文書の中でこの計画を発表し、英国の制度への信頼低下に対処し、民主主義を刷新すると述べた。16歳への投票権付与は、昨年の総選挙で労働党が勝利を収めた公式綱領の一部だった。
 ある保守党議員は、この計画を「不人気に怯え、協議なしに憲法改正を強行しようとしている労働党による、図々しい試み」と評した。
 影響:英国の投票率は低下傾向にある。世論調査では、若い世代の英国人は左派寄りであることが示されており、これは労働党にとって有利に働く可能性がある。しかし、最近の世論調査では、ナイジェル・ファラージ氏が率いる新たな右派ポピュリスト政党「リフォームUK」への若者の支持が高まっていることも明らかになった。
【コメント】
 高校生にも投票権を与える試みだ。労働党の選挙公約のようだが、実現すればポピュリズムに大きく振れるのではないだろうか。

3.米国、数十億ドル規模の対外援助削減を採決
【記事要旨】
 下院は昨日、トランプ大統領が要求した対外援助と公共放送への90億ドルの支出削減案を承認する準備を進めていた。このうち約80億ドルは対外援助プログラム向けで、残りはNPRとPBSの資金提供団体向けだった。
 上院は水曜日の夜にこの法案を可決した。共和党議員はわずか2人しか反対しなかったが、賛成票を投じた議員の中にも不安を表明する者がいた。上院議員たちは、トランプ政権がどのプログラムが影響を受けるのか詳細を明らかにしていないと述べた。
【コメント】
 対外援助削減の隙間に忍び込むのは中国だ。質の高い米国の公共放送にも大きな打撃だ。毎日PBSのニュースを見ているが今後どうなるのだろうか心配だ。

その他の記事
欧州:英国とドイツは、一方に対する脅威を他方に対する脅威とみなすという両国の誓約を含む画期的な防衛条約に署名した。
日本:日曜日の国会選挙を前に、農林水産大臣は価格を下げ、有権者の支持を得るため、備蓄していた米を放出した。
ブラジル:ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は来年の選挙で苦戦を強いられていた。しかし、トランプ大統領の関税措置によって状況は一変しつつある。

アジア:中国の空母2隻は、長らく米国が支配してきた太平洋海域で、1か月間にわたり戦闘機とヘリコプターの離着陸訓練を行った。

特集記事
韓国の美容品ブーム
 韓国の美容製品の売上が米国で急増している。ファンは、韓国製品は価格に見合った価値があり、米国製品よりも軽くて刺激が少ないと述べている。そのため、トランプ大統領が韓国からの輸出品に25%の関税を課すと警告したことで、パニック買いが起きた。中には1年分の韓国製マスカラを買い込む消費者もいる。

お悔み:1950年代後半から60年代初頭にかけて、「Who’s Sorry Now」や「Don’t Break the Heart That Loves You」などの曲でヒットチャートを席巻したコニー・フランシスが87歳で亡くなった。

2025年7月18日 金曜日

世界の動き 2025年7月17日 木曜日

今日の言葉
「エマニュエル・トッド」
 フランスの歴史学者であり文化人類学的な分析が特徴だ。「西洋の敗北」は世界的なベストセラーになっている。ウクライナ戦争でのロシアの立場に深い理解を示し、アメリカの世界的な退潮を分析している。彼の「すでに米国から誘引された第三次世界大戦がはじまっている」という議論は説得力がある。
 文春オンラインの7月12日号にトッド氏のモスクワ訪問記がある。4月に訪問した印象を語ったものだ。
 「モスクワでは“驚くべき正常さ”にショックを受けました。人口統計学者として乳児死亡率、殺人率、自殺率から、ロシアが“正常な国”に戻ったことを確認していましたが、それは概念的な話です。実際にモスクワに行くと、すべてがあまりに正常に機能する完璧なモダン都市でした。」
 あまりにロシア寄りの言説にも聞こえるが、反ロシアの大合唱の中で、カウンターバランスを取るのには役に立つ見方だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.イスラエル、シリア首都を空爆
【記事要旨】
 イスラエル軍とシリア当局によると、イスラエルは昨日、ダマスカスへの空爆を開始し、国防省の建物に損害を与え、大統領官邸付近を攻撃した。
 今回の空爆は、シリア政府軍と、イスラエルが保護を約束しているドルーズ派少数民族の中心地であるスウェイダ南部で、数日間にわたり死傷者を伴う衝突が発生したことを受けて行われた。イスラエルは、シリア政府軍がスウェイダから撤退しない限り、攻撃をエスカレートさせると警告した。
 イスラエルの空爆直後、シリア当局はスウェイダで地元指導者らと停戦合意に達したと発表した。その後、米国のルビオ国務長官は、米国は衝突に関与したすべての当事者と協力し、「この憂慮すべき恐ろしい状況を今夜中に終結させる」と述べた。
 しかし、こうした外交努力は、イスラエルの攻撃を阻止するのにほとんど役立たなかったようだ。夜が近づくにつれ、ダマスカス周辺の軍事目標に対するイスラエル軍の追加攻撃が報じられた。
 背景:イスラエルがシリア南部に介入する主な理由は2つある。1つ目は、イランが支援する民兵や敵対的なイスラム過激派がイスラエル国境付近に拠点を置くのを防ぐこと。2つ目は、イスラエル政府と密接な関係を持つイスラエル国内のドルーズ派少数派の懸念を和らげることだ。
【コメント】
 驚くべきはイスラエルの戦闘能力だ。建国以来周囲を敵国に囲まれた中で軍備を整備してきた。継続する周囲との戦闘が、特異な能力を増嵩させてきたのだ。

2.イランによるアフガニスタン人大量送還の実態
【記事要旨】
 標的を絞った弾圧と外国人排斥によって、毎日約2万人のアフガニスタン人がイランからアフガニスタンへ国境を越え、国外へ追い出されている。国連によると、1月以降、140万人以上が逃亡または送還されている。これは過去10年間で最悪の避難危機の一つだ。
 Timesの記者は両国間の国境を訪れ、衝撃を受け不安に怯える多くのアフガニスタン人と話をした。中には、アフガニスタンに住んだことがない、あるいはほとんど知らない人もいた。国境のアフガニスタン側にある移住施設では、タリバンが課した規制に抵抗し、公然と爪を磨いたり電子タバコを吸ったりする女性たちがいた。
 「アフガニスタンは女性にとって檻のようなもので、私たちはまたあの檻の中に戻ってしまうんです」と、アフガニスタンに帰国する3姉妹の末っ子、17歳のクルシッドは言った。女性と少女に対する世界で最も厳しい規制のいくつかが待ち受けている。
 なぜこれほど多くのアフガニスタン人がイランから強制的に追放されたのか。イランは安価な労働力として約400万人のアフガン人を使ってきた。イラン経済の不況がそうした需要を無くしている。イスラエルとの戦争の激化でアフガン人はイスラエルのスパイと言う見方がイランで広がっており、追放の動きに拍車がかかっている。

3.トランプ大統領はFRB議長解任の準備をしているか?
【記事要旨】
 トランプ大統領は、下院共和党議員との会合で、ジェローム・パウエルFRB議長を解任する書簡の草稿を披露し、解任すべきかどうかを尋ねたと、会合について説明を受けた2人の関係者が明らかにした。
 ここ数日、トランプ大統領はパウエル議長に対する激しい非難を強めており、ここ数週間、利下げを怠ったとしてパウエル議長を批判している。また、辞任も求めている。トランプ大統領が実際にパウエル議長を解任するかどうか、あるいは解任できるかどうかは不明だ。近代史において、FRB議長を解任しようとした大統領はいない。政権内には、解任は大統領が予想している以上に悲惨な結果をもたらすだろうと警告する者もいる。
【コメント】
 後任選定のプロセスは始まっているとベッセント財務長官が明言している。パウエル議長の行方に注目だ。

その他の記事
イスラエル:マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使が、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の汚職裁判に異例の出席を果たした。
米国:トランプ大統領は、ジェフリー・エプスタイン被告の捜査における政権の対応を批判する支持者を攻撃した。
イラン:フランス外相は、英国、フランス、ドイツが、来月末までに核合意に進展がない場合、イランに対する国連制裁を復活させることで合意したと述べた。

AI:中国は、自国のAI企業と米国のAI企業との間の急速に縮まる格差を埋めるため、数十億ドルを費やしている。
ビジネス:NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、北京で行われた長時間の記者会見で、AI分野における米中の協力を促した。

スポーツ
サッカー:クラブワールドカップの騒ぎが収まった今、2026年ワールドカップに活かせる教訓は何かあるだろうか?
テニス:イギリスのタラ・ムーア選手は、アナボリックステロイドの陽性反応が出たため、4年間のドーピング出場停止処分を受けた。
サイクリング:フランス革命記念日のツール・ド・フランスで、フランスチームのサポートカーに乗るのはどんな感じだろう。
【コメント】
 MLBのオールスターゲームについて一言も触れていないのはちょっと酷いなTimesは。

2025年7月17日 木曜日

世界の動き 2025年7月16日 水曜日

今日の言葉
「日産の追浜工場閉鎖」
 やはり閉鎖だ。2027年末までに希望する従業員は九州の工場へ配置転換可能のようだ。
 1961年に出来たばかり工場を、小学校の時に見学した記憶がある。当時は日本一の自動車工場で、とても自分には手が届かないようなピカピカの新車が次々に生み出される光景に「横須賀にもこんな工場が出来たんだ。凄いな。」と、憧れと誇りを感じたものだった。
 敷地は1.7百万㎡(工場のHPから。数字の桁が違うのではないかと思う)あり、東京・横浜近郊の土地としてはとても貴重だ。手に入りやすい高層住宅の再開発が進む可能性が高いと思う。都心からの車のアクセスも良いので、テーマパーク等のアトラクション施設も可能だろう。
 横須賀のもう一つの誇りと言えば、東京電力の横須賀火力発電所は家から近かった。久里浜海岸に出ると空を圧する100mの煙突が数本立っていた。こちらは1960年に一号機が開業し1970年に8号機が開業した時には世界一の火力発電所だった。老朽化と電力需要の変化で2017年には運転が停止された。その後JERAに運営が移され、現在は2023年から新鋭の2機が稼働している。
 1960年代は本当に「三丁目の夕日」の時代だった。その時代に生まれ、生きて日本を支えた人も企業も老齢化している。消えゆく事業があれば再生する事業もある。事業と人生はどこか似ている。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領の関税にもかかわらず、中国経済は成長
【記事要旨】
 公式統計によると、トランプ大統領の高関税にもかかわらず、中国経済は今春、着実に成長した。中国の回復力の一因は、工場や高速鉄道などの大規模プロジェクトへの投資、そして世界への継続的な輸出である。また、関税を予想した買い手が今年最初の3ヶ月間に注文を増やしたことも、経済を押し上げた。
 中国が現在の成長ペースを維持すれば、経済は年率約4.1%で成長すると予想され、これは今年最初の3ヶ月間の成長率をわずかに下回る程度となる。
 中国のGDP報告は、米国が最新のインフレ率データを確認する中で発表された。このデータは、トランプ大統領の関税が物価上昇につながり始めていることを示している。家具など、関税の影響を最も受けやすい製品の価格は、6月に大幅に上昇した。
 チップに関する方針転換:NVIDIAの中国向けAIチップ販売を停止してから3か月後、トランプ政権は方針を転換し、中国のハイテク企業によるNVIDIA製チップの購入再開を許可すると発表した。
 EV:中国政府は、電気自動車用バッテリー製造に必要な8つの主要技術の中国国外への移転を禁止すると発表した。これにより、EUが求めている中国の電気自動車メーカーによる海外工場の設立が困難になる可能性がある。
 オーストラリア:中国を訪問したアンソニー・アルバネーゼ首相は、米国からの圧力を受けながらも、両国関係の深化を目指し、習近平国家主席と会談した。
【コメント】
 中国の成長を阻害しようというトランプの政策は実現しそうもない。巨大な中国は世界経済の中にしっかりと組み込まれているからだ。中国への反感もグローバルサウスには殆どない。米国が世界で後退する隙間をしたたかに埋めるのは中国だ。

2.トランプ大統領のウクライナ政策転換は、今のところヨーロッパにとってプラス
【記事要旨】
 トランプ大統領が、ウクライナへの供給を目的として、米国製の最新鋭兵器をヨーロッパに売却することに同意した際、ヨーロッパの指導者たちはこれを重要な転換と捉えた。しかし、トランプ大統領が突如としてプーチン大統領を痛烈に批判しているにもかかわらず、彼らは慎重な姿勢を崩していない。
 EUから米国に輸入される全ての製品に対する関税を30%に引き上げるとのトランプ大統領の脅しに、ヨーロッパの人々は憤慨し、歯を食いしばって笑っている。 ある専門家はトランプ大統領の新たな姿勢について「良いニュースかもしれないが、その良いニュースはいつまで続くのか、そしてどのような条件の下で続くのか」と問いかけ、「大西洋横断関係の問題を解決することには全く役立たない」と付け加えた。
【コメント】
 トランプの動きは本当に理解しがたい。対露強硬姿勢への転換も表面的なものに見える。50日間の猶予も長すぎる。

3.英国、4,500人のアフガニスタン人を秘密裏に再定住
【記事要旨】
 政府は昨日、タリバンがアフガニスタンで政権を奪還する前に英国と協力関係にあった1万8,000人のアフガニスタン人に関する情報を誤って公開し、報復の恐れがあると判断された人々を秘密裏に再定住させていたことを初めて認めた。
 当時の首相リシ・スナック氏は、裁判所の「スーパー・インジャンクション(特別差止命令)」を利用して、2022年の治安情勢の不備を国民から隠蔽することに成功した。これにより、ジャーナリストはこの誤りについて報道することができなくなった。これまでに4,500人のアフガニスタン人が英国に到着しており、さらに600人とその家族が今後到着する予定である。
【コメント】
 本件についてのAIによる詳報だ。
 「政府は、2021年のタリバンによる実権掌握後、アフガニスタン難民を最大2万人受け入れる計画を発表した。このうち、英軍や英政府に協力したアフガニスタン人には永住権と生活支援が提供され、特に成人女性や少女、その他困難な状況にある人々が優先的に支援対象となった。
英国のアフガン人移住に関する主な動きと支援策:
・難民受け入れ計画:
 最大2万人のアフガニスタン難民を数年かけて受け入れる計画で、初年度は5000人が対象となり、成人女性や少女などが優先された。
・英協力者への永住権付与:
 英軍や英政府に協力したアフガニスタン人に対し、永住権と生活支援(就学支援、医療、住宅支援など)を提供する「オペレーション・ウォーム・ウェルカム」が実施された。
・奨学金と英語訓練:
 アフガニスタン人の大学生・大学院生最大300人への奨学金や、成人への無料英語訓練などが提供されました。
情報漏洩問題:
 英国防省が、移住資格のあるアフガニスタン人の個人情報を複数回漏洩させる事案が発生し、謝罪と調査、特別なサポート提供が行われた。
補足情報:
 2021年のタリバンによる実権掌握は、アフガニスタンから多くの人々が国外へ避難する大きな要因となった。
 アフガニスタン難民の受け入れは、英国だけでなく、隣国のパキスタンやイラン、ドイツ、トルコなども行っているが、受け入れ規模や支援内容は各国で異なる。」

その他の記事
中東:イスラエルは、シリアの政府軍とレバノンのヒズボラ民兵を標的とした一連の空爆を実施した。
イスラエル:ネタニヤフ首相率いる政権の将来は、超正統派ユダヤ教政党が与党連合からの離脱を発表したことで不透明になった。
エチオピア:国境なき医師団は、同団体の援助活動員3人の殺害事件について、政府が適切な捜査を怠っていると非難した。

航空:インド、シンガポール、韓国の航空会社は、先月発生したエア・インディアの墜落事故を受け、ボーイング機の燃料制御スイッチの点検を行っていた。

2025年7月16日 水曜日

世界の動き 2025年7月15日 火曜日

今日の言葉
「フードスタンプ」
トランプ政権の連邦予算削減でフードスタンプ(以下FS)の受給者が大幅に削減されるというNYタイムズの以下の記事があった。
「アメリカのように豊かで先進的な技術を持つ国で、いまだにこれほど多くの人々が飢えに苦しんでいるという事実は、驚くべきものです。約4,200万人のアメリカ人が、FSとしても知られる補足栄養支援プログラム(SNAP)に頼っています。しかし、トランプ大統領が新たに可決した国内政策法により、200万人以上がこの給付を失う可能性があります。」
以前ニューヨークの郊外に住んでいたころスーパーマーケットでFSを使って食料品を購入する人の姿を希に見かけた。富裕層が多く住む地域だったのでFSを使用する住人が少なかったからだろう。
FSについてWikipediaによれば、
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フードスタンプ(Food Stamp)とは、アメリカ合衆国で低所得者向けに行われている食料費補助対策。公的扶助の1つ。現在の正式名称は「補助的栄養支援プログラム」(Supplemental Nutrition Assistance Program, SNAP)。
形態は、通貨と同様に使用できるバウチャー、金券の一種。一般のスーパーマーケットでも使用できる。対象は食料品であり、タバコやビールなどの嗜好品は対象外となる。
近年、磁気テープが装着されたプラスチックカード化して、買い物やATMからの補助金の引き出しに使用できるようになってきており、これは「EBTカード」または単に「EBT」という呼び名が広くアメリカ国内で使われている(en:Electronic benefit transfer)。
需給状況
所管省庁は農務省であるが、基準の設定や運用は、州毎に任されていることから受給資格はまちまちである。概ね、4人家族で月収入2,500ドルを下回ると対象者となることが多く、最大1人あたり月100ドル相当のスタンプ(スーパーマーケットなどで使用可能なデビットカードの形式が多い)が支給される。ある程度の自給自足が行われる地方では、受給対象となる収入でも十分に生活が維持できるとされ、フードスタンプの存在を知らない、制度を知っていても受給しない者も多数存在しているとされる。2018年9月時点では、約1,940万世帯、約3,858万人が利用し、約48億ドルが給付された。
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NYTimesの記事では受給者が4200万人になっているから、Wikidepiaの言う2018年の数字より大幅に増加している。Wikipediaの説明による給付の金額は一人あたり年間124ドルにすぎず、一人月に100ドルと言う制度にしては少なすぎる。
いずれにしても、米国の人口は3.4億人だから、約8人に一人がFSを受給していることになり、大変な規模の食費支援策である。
従来からFSに寛容な民主党と、縮減すべきだと言う共和党の間で大きな議論があり、トランプ政権でのFSの取扱いが注目される。
日本での食料支援策では「子ども食堂」がまず思い浮かぶ。こちらも全国で10000か所以上に増え、公立中学校の数よりも多くなったそうだ。この現状については機を改めて述べてみたい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領、ウクライナへの武器供与とプーチン大統領への期限を発表
【記事要旨】
トランプ大統領は昨日、米国は欧州によるウクライナへの武器供与拡大を支援すると述べ、50日以内に和平合意が得られなければロシアは「非常に厳しい関税」を課されると警告した。
関税の脅威は大きな影響を及ぼさない可能性が高い。ロシアは米国にほとんど輸出していないからだ。しかしトランプ大統領は、制裁対象国と貿易を行う他国や団体に課される制裁である二次制裁の発動も示唆した。
トランプ大統領はこの発言を、ウクライナへの武器供与拡大の取り組みを調整してきたNATO事務総長マーク・ルッテ氏との会談中に行った。この取り決めの下、NATOはより高性能なパトリオットミサイル防衛システムを含む米国製兵器を購入し、キエフに引き渡すことになる。
引用:トランプ大統領は、プーチン大統領に「失望した」と述べた。「彼との会話は非常に楽しいのに、夜になるとミサイルが発射される」と彼は述べた。
分析:トランプ大統領は、ロシアに対して前任者とよく似たアプローチ、つまりウクライナへの武器供与を採用したようだ。しかし、彼がこのアプローチを続けるかどうかは疑問だ。
キエフ:ゼレンスキー大統領は、ウクライナの首相交代を目指すと述べた。戦場での敗北と国内の雰囲気の悪化の中での大規模な人事異動となる。
【コメント】
ロシアに対してトランプは常にTACOだった。今回のような制裁はDay1からできたはずだ。

2.パレスチナ人の移動計画、停戦交渉を頓挫させる恐れ
【記事要旨】
イスラエルがガザ地区住民の多くをエジプト国境付近のキャンプ地に強制的に収容するという提案は、停戦交渉の進展を阻む恐れがある。法律専門家はこの計画は国際法違反だと警告しており、ハマスの幹部は「全く受け入れられない」と述べた。
ハマスの幹部は昨日、「これはゲットーのような孤立した都市になるだろう」と述べ、「パレスチナ人は誰もこれに同意しないだろう」と付け加えた。
イスラエルはまだこの計画を正式に発表していない。法律専門家は、パレスチナ人の帰還を禁じることは民族浄化に当たると指摘している。イスラエルの批判者たちは、このキャンプ地を現代の「強制収容所」に例えている。
【コメント】
ネタニヤフがトランプと会談後の動きであり、米国も承認していると見るべきだ。ガザが中東のリビエラになるというトランプの不動産屋的発想が実現に一歩近づくようだ。

3.シリア南部の戦闘で少なくとも50人が死亡
【記事要旨】
シリアのスウェイダ県で昨日、ベドウィン集団とドルーズ派民兵との衝突が2日目となり、50人以上が死亡したと、地元当局者と監視団体が明らかにした。
シリア政府は自制を求め、軍を派遣して「迅速かつ断固として」紛争を解決すると誓ったが、国防当局者によると、派遣された兵士18人が死亡した。この暴力行為は、昨年12月にアサド政権が崩壊して以来、シリア政府が全土を掌握することが困難になっていることを浮き彫りにしている。一方、イスラエル軍は、シリア南部での軍備増強を許さないという誓約を履行するため、スウェイダに向けて進軍する戦車を攻撃したと発表した。
【コメント】
NHKニュースの6月8日の報道がわかりやすい。
『シリアでは、去年12月8日、親子2代にわたって半世紀以上続いたアサド政権が崩壊し、反政府勢力の指導者だったシャラア暫定大統領率いる暫定政権が新たな国づくりを進めています。
10年以上続いた内戦からの復興に向けては旧政権下で科せられた欧米など各国による制裁が大きな課題となってきましたが、先月、アメリカが制裁の緩和を発表したほか、EU=ヨーロッパ連合や日本も制裁の一部を解除し、現地では復興への期待が広がっています。
一方で、この半年の間には、旧政権の支持者や少数派の宗派の人たちなどが標的となる事件や衝突がたびたび起きていて、国内の融和や治安の回復など課題は山積しています。
また、隣国のイスラエルがシリアとの緩衝地帯に部隊の駐留を続けているほか、首都ダマスカス近郊でも軍事施設などを狙った空爆を繰り返していて、シリアの安定は依然として見通せない状況です。』

その他の記事
ヨーロッパ:気候変動により、大陸で最も人気の高い保養地が、逃避行の場へと変貌を遂げている。(避暑地となるべき砂浜が各地で波に侵食されている状況を指しています)
アメリカ:最高裁判所は、トランプ政権が数千人の職員を解雇することで教育省を解体できるとの判決を下した。
テスラ:2019年にオートパイロット作動中に運転されていたテスラのセダンの事故に起因する米国の訴訟が、陪審裁判に持ち込まれた初めてのケースとなった。

教育:中国のある大学は、「外国人との不適切な接触」を理由に学生を退学処分にすると発表した。

2025年7月15日 火曜日

世界の動き 2025年7月14日 月曜日

今日の一言
「ミンスキー・モーメント Minsky moment」
 株価や資産の急激な上昇後、崩落する状況を説明する際によく使われる言葉だ。経済学者のハイマン・ミンスキーHyman Minskyにちなんで名付けられ、特に、過剰な債務とレバレッジによって生じたバブルが崩壊する転換点を意味する。以下AIの説明を引用する。
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ミンスキー・モーメント(以下MM)の背景:
 景気後退期には、投資家は慎重になり、リスクを回避する傾向があるが、景気が回復し、資産価格が上昇すると、投資家は楽観的になり、リスクを取るようになる。この過程で、過剰な債務とレバレッジが発生し、資産価格が実態以上に高騰することがある。この高騰が限界に達し、バブル崩壊の引き金になるのがMMだ。

MMの特徴:
 以下のような現象が起こる:
・資産価格の急落: 株価や不動産価格が急激に下落する。
・信用収縮: 金融機関が融資を渋り、信用が収縮する。
・流動性危機: 市場での取引が困難になり、流動性が低下する。
・経済活動の停滞: 企業や家計の活動が停滞し、景気後退に繋がる。
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 バブル崩壊への警鐘としてMMという言葉は役に立つと思う。現在がMMかと言うと、現在の株高・不動産価格の高騰は「過剰な債務とレバレッジ」によってもたらされたものではないと筆者は考える。
 金融機関へのレバレッジ規制が機能し、ヘッジファンドも株高に賭ける投資行動をしていないように見える。東京の不動産バブルは都心に住みたいという実需と中国の過剰マネーが流入したものと理解する。「崩壊」と言うほどの値下がりが起きるとは思えない。
 MMは、金融市場の不安定性と、それに対する警戒の重要性を教えてくれる。特に政策立案者は、この概念を理解し、安易な国債増発による過剰な債務やレバレッジに注意を払う必要があると言う警句としてとらえたい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事(今日は2つです)
1.「100年に一度の頭脳獲得のチャンス」
【記事要旨】
 大学は右派ポピュリストにとって格好の標的だ。世論調査によると、多くのアメリカ人は大学をリベラルすぎる、学費が高すぎる、エリート主義的すぎると考えている。それも当然のことだ。しかし、トランプ政権とハーバード大学の戦いはそれ以上の意味を持つ。大統領が自らの政治的アジェンダを全米2,600大学に押し付ける力を試す場となっているのだ。学生、教授、科学者は皆、プレッシャーを感じており、これはアメリカの科学が数十年にわたって享受してきた優位な地位を揺るがす可能性がある。

これは世界にとって何を意味するのか?
 欧州諸国は、米国に拠点を置く科学者を誘致しようとしており、「科学的避難所」、あるいはあるフランス大臣の言葉を借りれば「暗闇の中の光」を提供している。
 カナダは、権威主義とファシズムを研究するイェール大学の終身在職権を持つ教授3名を含む、著名なアメリカ人学者を数多く惹きつけている。
 オーストラリア戦略研究所は、この瞬間を「100年に一度の頭脳獲得のチャンス」と表現した。

その秘訣は誰にあるのだろうか?
 20世紀半ば、アメリカは科学の自由と民主主義に尽力する温和な大国と多くの人に見られていた。ヨーロッパのファシズムと権威主義から逃れてきた優秀な頭脳を引きつけたのだ。
 今日、最大の恩恵を受けるのは、長年にわたり世界トップクラスの科学人材の獲得に努めてきた中国と中国の大学だろう。そして今、トランプ氏が彼らの代わりにその役割を果たしている。中国の優秀な人材獲得キャンペーンの成功を示す一つの兆候は、世界で最も若い大陸であるアフリカだ。アフリカでは中国語を学ぶ人が増えており、中国で学ぶ人の数はアメリカのほぼ2倍に上る。
 アメリカはイデオロギーのために科学的優位性を賭けて手放す可能性があるだろうか?それは以前にも起こったことだ。ナチス政権下、ドイツはわずか数年でアメリカに科学的優位性を失った。ドイツ人として、私は1930年代の教訓にすぐに目を向けてしまうかもしれないが、今回の場合はこのアナロジーが示唆に富んでいるように感じる。留学生や研究者への弾圧による影響を取材していた同僚の何人かは、ヒトラーが科学者や知識人を沈黙させたことを指摘した。
 現在、アメリカを科学革新の原動力とした資源、自由、リスクを恐れない文化、そして移民を歓迎する文化といった秘訣を再現できる地域はどこにもない。しかし、もしアメリカが科学超大国の地位を失い、潜在的なブレークスルーが阻害されれば、それは世界全体にとっての痛手となるだろう。
【コメント】
 こうしたまっとうな意見に対しトランプ大統領は聞く耳を持たない。日本は米国から人材を獲得しようとしても報酬面で全く太刀打ちできない状況なのが寂しい。

2.レアアース再考
【記事要旨】
 先週、私はレアアースについて、そしてよりクリーンで倫理的に生産された、中国産ではないレアアースを、ある程度の費用をかけてでも誰もが手に入れられる可能性について書いた。同僚のハンナ・ビーチは、タイとミャンマーの国境から、カーボンフリーエネルギーへの安価な移行を支えているトレードオフの不穏な実態を描いた、衝撃的な特集記事を書いた。
 ミャンマーで採掘されるレアアースは、電気自動車、風力タービン、原子力発電所に使用されている。しかし、中国企業によって可能になったその採掘は、ミャンマー内戦における民兵組織の資金源となり、近隣の水源を汚染している。
 この要約では、彼女の複雑なストーリーを十分に伝えることができない。ぜひ全文、少なくともハンナの解説記事、あるいは上記の動画を見てください。実質的に無法地帯であるミャンマーでは規制がないため、レアアースを低コストで採掘できます。しかし、その地域の人々が支払う代償は高くついている。
【コメント】
 NYTimesの動画は以下でみることが可能です。https://www.nytimes.com/video/world/asia/100000010272461/thailand-kok-river-myanmar-rare-earths-explained.html?campaign_id=7&emc=edit_mbae_20250713&instance_id=158421&nl=morning-briefing:-asia-pacific-edition®i_id=153728061&segment_id=201797&user_id=bad9ac9a15a4d9a3d1f1458b2e5694f5

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貿易:EUは今週末、米国が8月1日からEUに30%の関税を課すと発表した。貿易上の混乱が深刻化する中、米国の同盟国は新たな世界貿易の枠組み作りを模索している。
アジア:米国への供給に重点を置く経済圏の国々にとって、米国に代わる明確な選択肢はない。しかし、新たな貿易相手国を見つけるために全力を尽くしている。
エア・インディア墜落事故:先月の事故に関する予備調査で、離陸後に両エンジンの燃料が停止されていたことが判明したが、その理由は説明されていない。

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ヨーロッパ:30年以上前、バルカン半島は第二次世界大戦以来最悪の紛争に巻き込まれました。スレブレニツァでは、8,000人のイスラム教徒が虐殺されました。
中東:トランプ大統領の「アブラハム合意」として知られる外交協定が、なぜこの地域に平和をもたらさなかったのか。
【コメント】
 アブラハム和平協定合意(アブラハム合意):アラブ首長国連邦とイスラエル国間における平和条約及び国交正常化 に関し、2020年8月13日にアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された外交合意である。
 アラブ首長国連邦とイスラエルの間の合意に止まらずUAEとバーレーンとを皮切りとして,その後スーダンやモロッコがこれに倣って陸続としてイスラエルとの関係正常化に踏み出した現象を総括してアブラハム合意と呼ぶ。こともある。

2025年7月14日 月曜日