世界の動き 2023年3月8日 水曜日

今日の言葉
「TV番組」
ここ数日TVを見ると、WBC、ウクライナ戦争、徴用工問題についての報道が殆どだ。一番組内での報道の偏向を自民党が総務省にねじ込んだ問題も騒がしいが、そもそも日本のメディアの視野の狭さが気になるところだ。

ニューヨークタイムズ記事
1.中国、米国の「抑圧」を非難
【記事要旨】
習近平国家主席は全人代での月曜日の演説で、「米国を中心とする西側諸国は、中国の全面的な封じ込め、包囲、抑圧を実施しており、これはわが国の発展に前例のない深刻な課題をもたらしている」と述べた。
中国の新しい外相秦剛は「米国は中国が攻撃されたり呪われたりしても反撃しないことを望んでいるが、これは不可能だ」と昨日語った。秦はまた「米国がブレーキを踏まずにスピードを上げ続ければ、どのガードレールも脱線を止めることはできない」と語り、米国に対し、中国への対立姿勢を緩和するよう求めた。
米国が台湾を支持していることや、中国が偵察気球を運用しているとの米国の非難をめぐり、米中間の緊張が高まっている。 ウクライナでの戦争をめぐって孤立させようとしているロシアへの中国の緊密な連携は、新しい冷戦への懸念を強めている。
【コメント】
中国への制限は西側企業にとって両刃の剣だ。西側企業が撤退したロシアでは、自動車で、消費物資で、中国企業がその穴を埋めてシェアを急拡大している。

2.米国経済をクールダウンする取り組み
【記事要旨】
アメリカ経済は、雇用は堅調で失業率は 1969 年以来最低であり、個人消費は年初に持ち直し、堅調に見える。
しかし、連邦準備制度理事会にはリスクがある。賃金の上昇は消費者支出が増加しインフレを促進する可能性がある。FRB は昨年、度重なる利上げを行ったが、インフレ率は予想ほど低下せず、1 月も予想よりも高いままだという報告がある。
インフレのペースを落とすために、FRBのパウエル議長は、中央銀行が金利を引き上げる可能性が高く、FRBの動きが労働市場にいくらかのコストをもたらす可能性が「非常に高い」と述べた。金曜日発表の雇用統計やその他のデータが活発なままであれば、より速いペースの利上げの可能性がある。
連邦準備制度理事会 (FRB) は金利引き上げで、消費者支出と企業の借入にいる事業拡大を減速させる。製品と労働の需要が冷え込むにつれ、賃金の伸びが鈍化し、失業率が上昇する可能性があり、消費がさらに減速し、景気が減速する可能性がある。
この夏には下院共和党が借入限度額の引き上げに民主党に加わることを拒否した場合、700万人が失業し、経済は2008年型の金融危機に陥る可能性があると警告するエコノミストがいる。
【コメント】
米国経済はハンドルの効きが良い。FRBの政策に経済が反応し株式市場が動く。我が国の遊びの多いゆるゆるの経済とは違いが大きい。日本では誰が何を行っても変化が起こりにくい。老衰経済だなーと思う。

3.フランスの年金をめぐる争い
【記事要旨】
過去 2 か月で 6 回目のストライキがフランス全土で行われ、列車や飛行機が混乱し、教室が閉鎖された。 マクロン大統領の法定退職年齢を 62 歳から 64 歳に引き上げるという計画に反対し、世論を彼らに有利に動かそうとしている。
労働組合は昨日、フランスを「停止させる」と誓った。 世論調査は、フランス人の大多数がマクロンの「団塊の世代が退職して長生きするにつれて、年金制度の財政を均衡させる必要がある」という提案への反対を繰り返し示してきた。
どちらの側も妥協の兆候を示していない。労働組合は継続的で破壊的なストライキを開始したいと考えており、マクロン大統領は再選キャンペーンの土台となる法案を今月末までに通過させたいと考えている。
フランスは、貧困のリスクにさらされている年金受給者の割合がヨーロッパで最も低い国の 1 つである。
【コメント】
年金制度が政府の考えで簡単に変更できる我が国とは大きく違う。これだけ我が国で実質賃金が下がっている状況で、労働組合はストを打たないでいつ行動するのだろうか。

その他:
尹大統領の訪米
President Yoon Suk Yeol of South Korea will make a state visit to the U.S. next month as tensions with China and North Korea rise.
日本のH3失敗
Japan’s newest rocket, intended to be the county’s flagship vehicle for sending satellites into orbit, failed minutes into its first test flight.
ノードストリームの破壊はウクライナか
A pro-Ukrainian group sabotaged the Nord Stream pipelines last year, new intelligence reviewed by the U.S. suggests.

2023年3月8日 水曜日

世界の動き 2023年3月7日 火曜日

今日の言葉
「日韓徴用工問題の解決」
 韓国政府が財団を設立し韓国最高裁の判決で決められた日本企業の賠償責任を肩代わりする解決策を発表した。
 現時点では最善の解決策に見える。韓国内野党の反対を押さえ解決策を打ち出した尹大統領にはその胆力に敬意を表したい。
 これを契機にまだまだ存在する課題解決に向かって関係改善が進むことが望まれる。我が国と国境を接する中国、ロシア、北朝鮮に比べれば価値観を共有する唯一の隣人なのだから。

ニューヨークタイムズ記事
1.韓国と日本が紛争を緩和
【記事要旨】
 韓国は、第二次世界大戦中の強制労働の犠牲者に支払うための基金を設立すると発表した。 これは、中国と北朝鮮からの脅威が高まる中、アメリカの最も確固たるアジアの同盟国間の関係が強化されている兆候だ。
 この基金は、1910 年から 1945 年までの日本の植民地化にさかのぼるいくつかの歴史的紛争の 1 つである、深刻な歴史的紛争を解決しようとするために両国が取った最も注目すべき行動だ。韓国の譲歩との見方もある。
 日韓協力強化の約束は、中国が強大化する中、地域同盟を強化しようとしている米国にとって恩恵である。 バイデン大統領は、この取引を「協力とパートナーシップの画期的な新しい章」として祝った。
 この基金はより広範な関係改善の一部だ。地域の脅威が高まる中、ユン・ソクヨル大統領は、東京との関係を改善することを外交上の最優先目標としている。 彼は日本と米国との合同軍事演習を拡大し、国民に日本を「軍事侵略者」ではなく「協力的なパートナー」と見なすよう求めた。
 韓国の野党指導部はこれを「降伏」と呼んだ。 韓国の最高裁判所が認めた15 人の被害者のうち、支持を表明したのは 4 人だけだった。 94歳の男性は「飢えてもお金を受け取るつもりはない」と語った。
 韓国の最高裁判所は、この問題は 1965 年の条約に基づいて解決されたと日本が主張しているにもかかわらず、日本企業は補償金を支払わなければならないとの判決を下した。
【コメント】
 今日の言葉に述べたとおりだ。

2.ウクライナはバフムトで反撃
【記事要旨】
 ロシアが東部の都市をほぼ包囲し、ウクライナの撤退の可能性についての憶測が高まる中、ウクライナのトップ将軍はバフムトの防御を強化したいと発表した。
 バフムトをめぐる争いはここ数日、最高潮に達しているように見える。一部のウクライナ当局者は、撤退の可能性に備えて準備を始めたが、ウクライナの突撃旅団は攻撃を続け、今週末、ロシア軍を押し戻したように見えた。
 バフムト自体には戦略的価値はほとんどないが、双方にとって象徴的な重要性が高まっている。
 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ワーグナー傭兵グループとの緊張が高まる中、占領下の南部の都市マリウポリを訪れた。 ワグナーの創設者は、バフムトで彼の戦闘が継続できるためにロシア軍に増援と弾薬を送るよう促した。
 ウクライナは、無人機の 1 つがロシアの無人監視塔を破壊したと述べた。
 エストニアの有権者は、ウクライナの最も強力な支持者の 1 つである政府を選出した。
【コメント】
 バフムトはウ露戦争のスターリングラードだ。市民を巻き込んだ殲滅戦が継続している。ニュースで写される市街の映像を見ると、そこにあるのは戦争の狂気だ。

3.米国はTikTokにどう対処するか?
【記事要旨】
 バイデン政権は、アメリカ人の機密データを中国に公開する可能性のある中国所有のビデオアプリやその他のテクノロジーに対処するための法的権限を議会に与えるよう、議会にますます圧力をかけており、セキュリティ上の懸念が高まる中、TikTok は両国間の技術的冷戦の戦場となっている。
 TikTokのようなアプリを取り締まる権限を米国政府に与えるために、民主党上院議員が策定中の法案をホワイトハウスが支持するかどうかを検討している。 法案は、アプリを禁止する法律に代わるものを提供する。
 就任以来、バイデン政権は TikTok と非公開でアプリの米国内での運用を許可する交渉を行ってきたが話し合いは停滞している
 ホワイトハウスは先月、連邦政府機関に対し、政府のデバイスから TikTok を削除するのに 30 日間の猶予を与えると発表した。 カナダや EU の行政機関と同様に、20 以上の州が政府のデバイスからのアプリの使用を禁止している。インドは 2020 年半ばにプラットフォームを禁止した。
 TikTokの最高経営責任者であるShou Zi Chewは、今月後半に下院委員会で証言する予定だ。
【コメント】
 これだけ広がった便利なアプリを禁止するというのは難しい。若者は使い続けると思われる。政府機関内でデバイスからアプリを削除しても情報漏洩に備えるには不十分だ。今後の動きが注目される。

その他:
ノートルダム聖堂の再建
 Experts are working to restore Notre Dame’s unique sound as they rebuild the fire-torn cathedral. You can experience its acoustics in our interactive story. (Use headphones!)
アカデミー賞
 “Everything Everywhere All at Once” has now won all the top prizes from Hollywood’s major guilds. The four other films that have done so went on to win the best picture Oscar.
チョコレートのパッケージに変化
 Toblerone will drop an image of a famous Swiss mountain from its packaging as it moves some production out of Switzerland.

2023年3月7日 火曜日

世界の動き 2023年3月6日 月曜日

今日の言葉
「花粉症」
 薬局に行くと花粉症薬の多さと高価さに驚く。
 TVで宣伝している薬は7000円近くする。今年は症状が酷くて、薬を服用したがもう効かなくなってきた。高い薬に替えようか悩んでいる。
 花粉症は日本特有化と思ったら今では世界中で広がっている。木の植え方の工夫で花粉の量を少なくすることが出来るそうだが、何とかして欲しいものだ。

ニューヨークタイムズ記事
1.中国の新しい経済目標
【記事要旨】
 不満の冬が去り、中国は全人代の開始時に今年の経済成長目標を5%前後にすると発表した。
 新しい目標は比較的控えめだが、経済活動が回復するにつれて達成可能かもしれないが、かなりの公共の借入と支出が必要になる。 「ゼロコビッド」の措置と封鎖が中国経済を窒息させた。 一部のエコノミストは、国の公式2022年の成長率である3%を誇張と見なしている。
 習近平は党主席として画期的な第3期を迎え、忠誠な部下を主要な政府の立場に任命し、全人代を使用して州の省庁を再編成することが見込まれる。
 中国は、軍事的および外交的努力への支出を増やすことにも焦点を当てている。習は西洋の専門知識への依存を減らすために、科学技術の能力を開発するよう党に指示した。
【コメント】
 コロナが去り中国は再成長へと舵をきった。日本は強権中国へとう対応してゆくのか国家的対応が必要だ。

2.ロシアは3方からバフムートを攻撃
【記事要旨】
 ウクライナ東部でのロシアの攻撃の中心であるバフムートではロシア軍が徐々に周囲の領土を奪い都市をほぼ遮断した。
 バフムート市内には数千人が残っているが、避難は困難になった。
 一部のアナリストは、ロシア軍は「すぐに都市を取り囲むことはできないだろう」と述べたが、重要な道路での閉鎖により、ウクライナが撤退する可能性があると述べた。
 ウクライナ軍司令官は、ロシア軍の軍隊をできる限り、バクムートで防ぎたいと言う。
 米国のような伝統的な武器サプライヤーが戦時中の生産不足に直面しているため、韓国武器の供給を開始しているが、モスクワを挑発しないためにウクライナに直接武器を送ることは拒否している。
 G7のリーダーは、ロシアの戦争が激化しても、外交上の最大の長期的な課題は中国と見なされている。
【コメント】
 現代塹壕戦だ。第一次大戦での遺物と思っていたが現代にもあるのだ。

3.主要な生物多様性取引
【記事要旨】
 大多数の国が、気候変動、乱獲、海底採掘などから脅威にさらされている海洋生命を保護するために国連条約に同意した。 待望の条約は、20年に及ぶ緊張した協議の後、発表された。
 現時点では、「公海」は、ほとんどが統治されていない荒野だが、条約は保護地域を指定することができ、漁業や海洋生物に害を及ぼす活動が制限または禁止される。海洋種や生態系を保護する国際的な枠組みが作成される。
 多くの専門家やグループは、条約を生物多様性の大きな勝利として祝った。公海には「おそらく、地球上に残された未発見の生物多様性の最大の保護区」があるからだ。
 条約が有効になるには、国家は条約を批准する必要がある。
【コメント】
 このような動きは全く知りませんでした。笹川平和財団による以下の記事が役に立つ。
  「国連では、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(Marine Biodiversity of Areas Beyond National Jurisdiction:BBNJ)を保全し持続的に利用するための国際ルール(BBNJ新協定)策定に向けた政府間交渉が進められています。公海および深海底から構成される国家管轄権外区域は、マグロやサケ等の水産有用種や、サメやウミガメ等の希少種が生息域とする重要な海域であり、経済的な利益をもたらし得る海洋遺伝資源が多く存在するとされています。しかし、これらを包括的に管理するためのBBNJ新協定に関する議論については、一般的に認知されていません。」

その他:
カンボジアで野党弾圧
 A top Cambodian opposition politician was sentenced to 27 years of house arrest, as Prime Minister Hun Sen tries to crush threats before the July elections.
タイの不敬罪を巡る
 Two hunger strikers in Thailand, aged 21 and 23, are at risk of dying. They are calling for the repeal of a law that criminalizes criticizing the royal family, among other causes.
韓国でのいじめ判決
 Accusations of past school bullying have hurt public figures in South Korea. The often-anonymous takedowns have public support, despite concerns about credibility.

2023年3月6日 月曜日

ジム・ロジャースの警告

 ジム・ロジャースは世界的に有名な投資家だ。いつも蝶ネクタイを締めた剽軽な印象のおじさんだ。

 彼は今シンガポール在住で、日本のTV局やメディアがインタビューに行くのに喜んで会っている。

 今回は、YouTubeで【ジム・ロジャーズ 最新経済予測】6つの最悪シナリオが日本を襲う/米国経済に楽観的になれない/10代がやるべきこと、40代が準備すべきこと・・・、という番組を見た。

 彼はここ20年以上日本については非常に悲観的だ。今回「捨てられる日本」(SB新書)を発刊し、その本の内容について,日本からのインタビュうーを受けている。

 ジムの言う6つの最悪シナリオは以下だ。
1.日本円は捨てられる
2.膨大な負債を抱え、日本は沈没する
3.金利上昇と通貨切り下げで日本経済は大打撃を受ける
4.インフレで競争力が減退する
5.低迷する食料自給率が新たな危機を生む
6.人口減少、少子高齢化で国力が地に落ちる
 いずれも的外れの指摘ではない。

 私はこれに
7.大震災で経済が壊滅的な打撃を受ける
を加えたい。

 最悪のシナリオへの対策は、ジムによれば、「政府の放漫は財政支出をストップする。移民を大量に入れ生産力人口を維持する」と言うことに尽きるのだが、彼はさらに、「日本政府にはこうした政策は取れない」と付け加える。

 若者には、未来の無い日本からの脱出を勧めている。好きな国へ行って好きなことが出来るのが若者の特権だと言うのだ。中堅でも腕に自信がある人は日本にとどまる必要はないと説く。

 面白いのは、彼はアメリカにも決して楽観的でないことだ。最盛期を過ぎた国は没落するのが歴史の教訓だ。1920年にピークだった大英帝国は1976年に破産した。僅か50年後の話だ。

 彼によれば、次に台頭するのは今のところ中国だと思われ、大国が後退するときに戦争が起きたのがこれまでの歴史だから注意が必要だと説く。彼はシンガポールに住み娘を中国語Nativeに育てたようで、彼の中国への入れ込みもわかる。

 米中対立のはざまで日本はどうしたらよいか。彼は、日本はせっかく戦争を禁止する憲法を持つのだから米中の紛争から距離を置く賢明な道を歩むべきだ。最近の軍備増強策には感心しない、とアドバイスする。明確だ。

 知日派だけに、飲み込むのが難しい警句を発している。

2023年3月5日 日曜日

プロレスからゲーム理論について

 先週土曜日に、武藤敬司の引退試合を取り上げた。武藤は引退試合を内藤と戦い負けた。さらに、リングサイドで解説していた蝶野をリングに呼びあげ、敗北し、完全燃焼して引退したという感動的なストーリーだった。

 この経緯をゲームの理論で考えるとどうなるか。武藤は1対1で2試合を戦ったので、2者間のゲームの理論が使える。

 2者間のゲームの理論でよく引用されるのが「囚人のジレンマ」だ。

 囚人のジレンマとは、各々が自分の利益を追求するよりも、お互いに協力した方がリスクは小さく、利益を得られるというゲーム理論モデルのひとつだ。具体的な例として、ある犯罪に関与した2人の囚人が別々の部屋で尋問されている、という状態で、自白と黙秘、それぞれの選択肢のどちらを選ぶかによって結果が異なるという状態のことを指す。

【囚人のジレンマのイメージ】
 二人の囚人が警察に収監されている。れぞれが自白した場合は両者とも懲役10年、それぞれが黙秘した場合は両者とも懲役2年、片方だけ自白した場合は、自白した方が無罪、黙秘した方は懲役20年という状況下で、互いに協力するか、自分の利益のみ追求するかによって結果が大きく変わる。

 2人の囚人にとって全体の利益を考えるのであれば、「両者とも自白」をして懲役10年になるよりは、「両者とも黙秘」をして懲役2年の刑を受ける方が得な結果となる。
 しかし、どちらの囚人も自分の利益だけを追求すると、結果的に「両者とも自白」、となるジレンマの状態となる。

 「パレート最適」と「ナッシュ均衡」の概念を説明する。

 パレート最適とは、全体の利益が最大化されている状態のことを指す。前述した囚人のジレンマにおいては、両者が黙秘を続け懲役2年を科せられた状態だ。無罪ではなくなるものの、懲役10年or20年という大きなリスクを避け、お互いに利益をもたらしている。

 武藤・内藤戦ではどちらも全力で勝を目指すのでパレート最適はあり得ない。

 ナッシュ均衡とは、自分にとって最も利益が最大化する選択をそれぞれがとる状態(他者の利益を考えない)のことを指す。囚人のジレンマにおいては、「自白」という選択肢を選ぶことだ。最大のリスクは懲役20年が科せられることなので、リスクを避けつつ自分の利益が最大化されるのは自白しかない。

 プロレスでナッシュ均衡を目指すというのは勝を目指すということだろう。

 さて、プロレス同様に相手と1対1で戦う場合は簡単だが、実社会ではそういった状況はまれで、武藤と内藤と蝶野が1度にリングにあがるバトルロイアル状態になるのが普通だろう。

 こうした場合のゲーム理論は飛躍的に難しくなる。戦う人間が3人に増えるだけでなく、戦術も多彩になる。

 2者が組んで一人を攻撃するとか、フォール勝ちを狙わずに反則勝ちする(タイトルは移動しない)とか、リングアウトで負ける(肉体的なダメージを受けない)とかのバリエーションが多彩になる。

 今日の結論:プロレス同様に登場人物が増えるとゲームの理論は飛躍的に複雑になり、実社会ではまだまだ使えない。

2023年3月4日 土曜日