『米連邦預金保険公社(FDIC)が31日公表した四半期報告書「クオータリー・バンキング・プロフィル」(QBP)によると、財務や運営、あるいは経営上ぜい弱な銀行の数は2023年1-3月(第1四半期)に増加した。
個別名は明かされない「問題銀行リスト」に掲載された金融機関の総数は同時期に4行増えて43行となった。こうした銀行が保有する資産総額は580億ドル(約8兆1100億円)と、22年10-12月(第4四半期)の105億ドルから増加した。
問題銀行リストに載った金融機関の数は、高水準だった時期と比べれば低いが、過去数四半期続いた減少トレンドが反転した。今回の報告書はシリコンバレー銀行(SVB)やシグネチャー・バンクなど米銀3行が破綻した時期に当たっている。
問題銀行は「CAMELS」と呼ばれる主要リスク指標に基づき、5段階評価で、1が最高で5が最低であり、リストに含まれた銀行は4または5の評価を受けた。
市場金利の上昇により、銀行は「投資証券で高い水準の含み損」を抱えていたと今回の報告書は指摘。しかし売却可能有価証券および満期保有目的証券での損失は前四半期から16.5%縮小したとしている。FDICは「銀行業界全体の流動性や資金アクセスを注意深く監視している」と述べている。』(以上、Bloombergの記事より)
FDICのこの発表は市場を怯えさせないための鎮静剤だ。3つの銀行の破綻に関しては、ALMや内部統制が機能しなった「特異な事例」と説明されているが、それを信じる投資家は少ない。
米国の好景気と富裕層の流動性の増加で、破たんした3つの銀行では
預金の増加>貸出の増加 ⇒ 債券投資の増加
という状況にあった。金利の急上昇が債券価格を下落させ、これらの銀行の自己資本を毀損させる事態になった。
SVBを例に見れば、IPOによりベンチャー企業が手にした巨額の資金が預金として溜まっていた。富裕層を主要顧客とする他の二行も、余裕資金を受け入れていた。これらの大口の預金は、ひとたび信用不安のうわさが立つとあっという間に流出する。いわゆるDigital Bank Run(デジタル取り付け)か起きる。
これまでの取り付けの経験則は、数か月で1割程度の預金の減少だった。それがデジタル取り付けでは、1日で25%もの預金が流出したのだ。これでは銀行はひとたまりもない。
こうしたDigital Bank Runは日本では無縁なのかと言えば、そんなことはない。今、地方銀行の多くが収益低下に悩み14行が赤字だという東洋経済の報道もある。デジタル化を推進し富裕層による使いやすさを標榜している大手銀行も多い。
サブプライムローンの問題が米国で起きた際に、そうした問題と無関係と当初思われていた邦銀が最も影響を受けた経験がある。今回の米国の例では、当局による「規制」も「監督」も効果が無かった。注意が必要だ。
2023年6月3日 土曜日