世界の動き 2025年7月17日 木曜日

今日の言葉
「エマニュエル・トッド」
 フランスの歴史学者であり文化人類学的な分析が特徴だ。「西洋の敗北」は世界的なベストセラーになっている。ウクライナ戦争でのロシアの立場に深い理解を示し、アメリカの世界的な退潮を分析している。彼の「すでに米国から誘引された第三次世界大戦がはじまっている」という議論は説得力がある。
 文春オンラインの7月12日号にトッド氏のモスクワ訪問記がある。4月に訪問した印象を語ったものだ。
 「モスクワでは“驚くべき正常さ”にショックを受けました。人口統計学者として乳児死亡率、殺人率、自殺率から、ロシアが“正常な国”に戻ったことを確認していましたが、それは概念的な話です。実際にモスクワに行くと、すべてがあまりに正常に機能する完璧なモダン都市でした。」
 あまりにロシア寄りの言説にも聞こえるが、反ロシアの大合唱の中で、カウンターバランスを取るのには役に立つ見方だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.イスラエル、シリア首都を空爆
【記事要旨】
 イスラエル軍とシリア当局によると、イスラエルは昨日、ダマスカスへの空爆を開始し、国防省の建物に損害を与え、大統領官邸付近を攻撃した。
 今回の空爆は、シリア政府軍と、イスラエルが保護を約束しているドルーズ派少数民族の中心地であるスウェイダ南部で、数日間にわたり死傷者を伴う衝突が発生したことを受けて行われた。イスラエルは、シリア政府軍がスウェイダから撤退しない限り、攻撃をエスカレートさせると警告した。
 イスラエルの空爆直後、シリア当局はスウェイダで地元指導者らと停戦合意に達したと発表した。その後、米国のルビオ国務長官は、米国は衝突に関与したすべての当事者と協力し、「この憂慮すべき恐ろしい状況を今夜中に終結させる」と述べた。
 しかし、こうした外交努力は、イスラエルの攻撃を阻止するのにほとんど役立たなかったようだ。夜が近づくにつれ、ダマスカス周辺の軍事目標に対するイスラエル軍の追加攻撃が報じられた。
 背景:イスラエルがシリア南部に介入する主な理由は2つある。1つ目は、イランが支援する民兵や敵対的なイスラム過激派がイスラエル国境付近に拠点を置くのを防ぐこと。2つ目は、イスラエル政府と密接な関係を持つイスラエル国内のドルーズ派少数派の懸念を和らげることだ。
【コメント】
 驚くべきはイスラエルの戦闘能力だ。建国以来周囲を敵国に囲まれた中で軍備を整備してきた。継続する周囲との戦闘が、特異な能力を増嵩させてきたのだ。

2.イランによるアフガニスタン人大量送還の実態
【記事要旨】
 標的を絞った弾圧と外国人排斥によって、毎日約2万人のアフガニスタン人がイランからアフガニスタンへ国境を越え、国外へ追い出されている。国連によると、1月以降、140万人以上が逃亡または送還されている。これは過去10年間で最悪の避難危機の一つだ。
 Timesの記者は両国間の国境を訪れ、衝撃を受け不安に怯える多くのアフガニスタン人と話をした。中には、アフガニスタンに住んだことがない、あるいはほとんど知らない人もいた。国境のアフガニスタン側にある移住施設では、タリバンが課した規制に抵抗し、公然と爪を磨いたり電子タバコを吸ったりする女性たちがいた。
 「アフガニスタンは女性にとって檻のようなもので、私たちはまたあの檻の中に戻ってしまうんです」と、アフガニスタンに帰国する3姉妹の末っ子、17歳のクルシッドは言った。女性と少女に対する世界で最も厳しい規制のいくつかが待ち受けている。
 なぜこれほど多くのアフガニスタン人がイランから強制的に追放されたのか。イランは安価な労働力として約400万人のアフガン人を使ってきた。イラン経済の不況がそうした需要を無くしている。イスラエルとの戦争の激化でアフガン人はイスラエルのスパイと言う見方がイランで広がっており、追放の動きに拍車がかかっている。

3.トランプ大統領はFRB議長解任の準備をしているか?
【記事要旨】
 トランプ大統領は、下院共和党議員との会合で、ジェローム・パウエルFRB議長を解任する書簡の草稿を披露し、解任すべきかどうかを尋ねたと、会合について説明を受けた2人の関係者が明らかにした。
 ここ数日、トランプ大統領はパウエル議長に対する激しい非難を強めており、ここ数週間、利下げを怠ったとしてパウエル議長を批判している。また、辞任も求めている。トランプ大統領が実際にパウエル議長を解任するかどうか、あるいは解任できるかどうかは不明だ。近代史において、FRB議長を解任しようとした大統領はいない。政権内には、解任は大統領が予想している以上に悲惨な結果をもたらすだろうと警告する者もいる。
【コメント】
 後任選定のプロセスは始まっているとベッセント財務長官が明言している。パウエル議長の行方に注目だ。

その他の記事
イスラエル:マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使が、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の汚職裁判に異例の出席を果たした。
米国:トランプ大統領は、ジェフリー・エプスタイン被告の捜査における政権の対応を批判する支持者を攻撃した。
イラン:フランス外相は、英国、フランス、ドイツが、来月末までに核合意に進展がない場合、イランに対する国連制裁を復活させることで合意したと述べた。

AI:中国は、自国のAI企業と米国のAI企業との間の急速に縮まる格差を埋めるため、数十億ドルを費やしている。
ビジネス:NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、北京で行われた長時間の記者会見で、AI分野における米中の協力を促した。

スポーツ
サッカー:クラブワールドカップの騒ぎが収まった今、2026年ワールドカップに活かせる教訓は何かあるだろうか?
テニス:イギリスのタラ・ムーア選手は、アナボリックステロイドの陽性反応が出たため、4年間のドーピング出場停止処分を受けた。
サイクリング:フランス革命記念日のツール・ド・フランスで、フランスチームのサポートカーに乗るのはどんな感じだろう。
【コメント】
 MLBのオールスターゲームについて一言も触れていないのはちょっと酷いなTimesは。

2025年7月17日 木曜日