文芸春秋5月号は「トランプ劇場まるわかり」という特集記事。その中でも読ませるのはEトッドの「米欧の分裂と日本の選択」だ。
彼の最近の大著「西洋の敗北」と論調は同じだ。
今回の論考の見出しを並べると以下のようになり、トッドの論旨展開がわかる。
「米国=仲介者」というっ茶番劇
信頼できるロシア、信頼できないアメリカ
和平交渉は可能でも必要でもない
西洋との共存を望んでいたロシア
「軍事的敗北」に続く「革命」
憎悪が原動力のトランプ政権
「核の傘」は幻想にすぎない
日本は核武装せよ
ウクライナ戦争の勝者はロシアで、敗者はアメリカとウクライナだ。敗者のアメリカが停戦を仲介する動きをトッドは茶番と一刀両断する。勝者であるロシアは、経済封鎖が解除されるとか、G7に復帰するとかのメリットが無ければ絶対に停戦に応じないとの論旨は明確だ。
トランプもヴァンスも西洋に対するルサンチマン(憎悪)が心の底にあり、欧州への強硬姿勢の原因となっている。
日本が核攻撃されたら米軍が核兵器で反撃すると言うのは幻想だ。米本土が攻撃されない限り米国は核兵器を使用しない。つまり米国の核の傘は幻想だから日本は核武装しない限り、ロシア、中国、北朝鮮の核兵器に囲まれた現状で軍事的に安定を得ることはできない。
以上のような主張である。
彼の前提として不確かなのは、ロシアは人口の少なさ(日本と同程度の人口しか有さない)から、対外膨張政策を取り得ない。従ってNATO諸国への侵略はあり得ないと断定している点だ。
ソ連の解体後、ロシアの周辺国に多くのロシア人がとり残された。これらのロシア人の保護の名目で軍事行動をとる恐れは全く解消していないと思うのだが、そうした疑問への説明は弱い。
世界の軍事力によるパワーポリティックスが継続するのは現実だ。日本の独自防衛を迫るトランプ政権の間に日本も核武装を考え実装してゆくべきだと思う。
2025年4月13日 日曜日