“The Pandemic and Political Order” by Francis Fukuyama
Foreign Affairs July/August 2020 より
著名な政治学者であるフランシス・フクヤマのフォーリン・アフェアーズ̪誌への寄稿を読んだ。印象深い内容なのでその概要を紹介したい。
(読者登録しておけばこのようなレベルの高い専門誌が無料で読めるのはありがたい)
この論考で、まずフクヤマは、パンデミックのコントロールに成功した国と失敗した国を分け、結果の違いを3つの要因に求めている。
3つの要因は以下。
1.State Capacity: 国家の能力
2.Social Trust: 社会の信頼
3.Leadership: リーダーシップ
これらの要因は、民主国家で有れ独裁国家で有れ変わらないと説明する。
フクヤマが挙げる要因を使って分析すると、
日本はまがりなりにも成功したうちの一つと思うが、
1はB,2はA,3はCという点数ではなかろうか。
ニュージーランドやドイツはすべてにおいてAが付くような気がする。
米国やブラジルは2. 3.がCではないか。
フクヤマは米国については、具体的に言及し、
The US has bungled its response badly and seen its prestige slip enormously.とトランプ政権の対応を批判し、
世界の政治の中心が東に移動する(つまり中国の重要性が高まる)という持論を述べている。
さらに、
政治の不安定性が高まると、ファシズムに向かう危険性が高まるが、自由民主主義(liberal democracy)が再評価される可能性が無いわけではないと説く。
パンデミックをめぐる緊急を要する危機的状況は過ぎたが、世界は長く陰鬱で困難な時期に入ってきている、と述べている。
最後に、
民主主義、資本主義、そして米国は、以前は、変革や対応をリードできることを証明した。
しかし今回は、
They will need to pull a rabbit out of the hat once again.
と意味深な言葉で結んでいる。
コロナの第一波は幸運さもあり日本は乗り切ったように見える。大きなゲオポリティックスのうねりの中で、どのようにすれば、自由な民主主義国として生き残り、発展して行けるのか、グランドデザインを一刻も早く描かなければならないと思う。
(2020.7.7)