IPPFの進化 (備忘録的メモ)

内部監査人協会(IIA、本部米国フロリダ州)は、「内部監査の専門職的実施の国際基準」(International Standards for the Professional Practice of Internal Auditing)(IPPF)更改のため新基準の公開草案を、2023年3月1日に公表し、コメントは5月30日まで受けつけた。コメントを反映した最終案はまだ提示されていない。2023年末か2024年初頭には日本語訳も示されると予想される。

新基準の名称は「The Global Internal Audit Standards(グローバル内部監査基準)」。冒頭には、新基準の役割として以下のように記されている。
・品質の高い内部監査の専門職実務を導くための要求事項と推奨事項を提供する
・内部監査業務のパフォーマンス評価の基礎となる

新基準について以下に概説する。
(1)新基準は以下のように構造化されている
• Principles(原則)
• Standards(基準)

o Requirements of the professional practice of Internal Auditing(内部監査の専門職実務の要求事項)
o Considerations(考慮事項)
Implementation(基準の実装についての考慮事項)
Evidence of Conformance(基準への適合性についての考慮事項)

(2)新基準は、次の5つのDomain(領域)から構成されている
• I. Purpose of Internal Auditing(内部監査の目的)
• II. Ethics and Professionalism(倫理とプロフェッショナリズム)
• III. Governing the Internal Audit Function(内部監査部門の監督)
• IV. Managing the Internal Audit Function(内部監査部門の管理運営)
• V. Performing Internal Audit Services(内部監査業務の実施)

(3)新基準は、IPPF全体の更改の一部として計画されている
IPPFには新基準の他、ガイダンス(主にPractice GuideとGTAG)と目下検討中のTopical Guidanceが含まれる予定である
新基準を含むIPPFの更改計画はに内部監査人協会のWebsiteに公表されている

(4)現行のIPPFの以下の構成要素は、新基準に整理統合され単独では存続しない
• 内部監査の使命(Mission of Internal Audit)
• 内部監査の定義(Definition of Internal Auditing)
• 内部監査の専門職的実施の基本原則(Core Principles for the Professional Practice of Internal Auditing)
• 倫理綱要(Code of Ethics)
• 内部監査の専門職的実施の国際基準(International Standards for Professional Practice of Internal Auditing)
• 実施ガイダンス(Implementation Guidance)

(5)2017基準から新基準への変更の理由
国際内部監査基準審議会は、そのガバナンス・プロセスに従い、少なくとも3年に1度、「内部監査の専門職的実践の国際基準」の改訂が必要かどうかを検討するよう義務づけられている。
2020年から、基準審議会は、基準だけでなく、IPPF(基準を含むフレームワーク)を見直すプロジェクトに着手し、今日の急速に進化する世界情勢の中で、内部監査の現在の実務を導くのに十分な内容であるかどうかを検証した。基準審議会は、広範な調査と意見に基づき、ステークホルダーの利益に対応しつつ、内部監査人や所属する組織体をより適切に導けるようにIPPFと基準を改訂することを取り決めた。

5つの主要な目標を達成するためにIPPF進化プロジェクトが実施されている
• IPPFの構造を簡素化すること。
• すべての要素を明確にし、整合させること。
• 基準とガイダンスが、タイムリーで、実用的で、適用可能であり、新たなテーマに対応していることを確保すること。
• 基準を内部監査人だけでなく、ステークホルダーや規制当局にも提唱すること。
• 内部監査の実務と質を高め、組織体の価値を維持・向上させること。

参考資料:
• 新基準の目次(Table of Contents Proposed Standards)
• 2017基準から新基準へのマッピング(Standards Mapping)
• 2017基準の用語一覧から新基準の用語一覧への整理(Disposition of Glossary)