Cash is king.

「現金は王様である」は相場の格言で最も有名ではないだろうか。特に相場の下落時には現金以上の資産はない。価格が下がらので、やられようがないからだ。多くのファンドマネジャーは、投資対象に「現金を最大10%までしか認めない」というような運用上の縛りがあるため、下落相場への対応に四苦八苦している。

 最近岸田政権が「資産所得倍増プラン」を打ち出している。これは、投資による資産所得の倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める国家戦略だ。現預金を持つものはアホだと言わんばかりのメディアの報道もある。

 今のような相場が不安定な時にこのようなプランを国を挙げて打ち出すのは悪い冗談だ。預貯金から資産有用に資金が動かなかったのは、バブル崩壊後の殆どの時期で庶民にとっては、預貯金の運用成績の方が株や債券での運用より堅実だったからだ。デフレ下では資産価値の減額を防げば実質的にはプラスの運用になる。

 自分は長年運用に従事してきたものだが、証券会社が安全だとして推奨するラップ口座でも運用利回りはかなりのマイナスだ。一部の株式投資で大幅なキャピタルゲインが出たので、ラップ口座を含む各種の投資からのマイナスは、ゲインとの相殺に使っている。価格変動が異なる性質をもつ各種資産にアセットアロケーションが可能なほど運用資金に余裕がなければ、政府の口車に乗って運用に大金をつぎ込むべきではない。

 まさに Cash is king. なのだ。

2022年10月9日 日曜日