不正について

 不正とは辞書で調べると「正しくないこと」と説明されている。これでは全く説明になっていない。

 「正しくない」行為がメディアで最近大きく報じられたのは、東京五輪を巡る汚職事件だ。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之・元理事が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」側から賄賂を受け取ったとして、8月17日に東京地検特捜部に逮捕された。AOKIの青木拡憲・前会長ら3人も贈賄容疑で逮捕されている。その後、KADOKAWAの会長をはじめとする役員と、大阪の広告代理店大広の役員も取り調べを受けている。

 何が正しくなかったのだろうか? オリパラ委員会の理事はみなし公務員であるため、自らの口利き行為に対し報酬を受け取っているのは賄賂に相当するという論理だ。高橋氏がもし理事でなければ、汚職にみなされるかどうかは微妙なところだ。贈収賄は公務員に対して成立する概念であり、民間企業の間では成立しないという解釈が一般的だろう。

 高橋氏がもらった金額には及びもつかないが、私も昔銀行の支店で貸付係をしていた時には、お歳暮やお中元をありがたく頂戴していた。飲食やゴルフの接待を受けたこともあった。どこまではOKでどこからはダメかという線引きは難しい。このため今では金融機関では接待はする方もされる方も原則禁止になっている。

 私がタイの金融会社で日系企業・多国籍企業向けの貸し出しの責任者をしていたころ、現地企業向け貸し出しでは、貸し出しを実行すると担当者にお礼として金銭が渡されることを知った。日本の感覚では当然「汚職」行為で、この慣行は最後まで辞めさせることができなかった。現地では当たり前のどの金融機関でもやっている慣行だったからだ。

 日本でも一昔前までは建設業の談合は公認された慣行だった。新日鉄の購買部長をすれば家が建つと北九州では言われていたと聞いた事がある。電通の高橋氏の実弟の治則氏は、EIE Int’lという不動産開発会社を立ち上げ自家用機で金融機関の役員を世界中の開発案件に招待し篭絡した。その不良資産が原因で長銀は破たんしたとも言われている。

 さてさて、何が「不正」で何がそうでないか、基準は世相によっても国によっても変わりうる。一筋縄では行かない難しさがある。

2022年10月8日 土曜日