Miles Davis “My Funny Valentine”

 今朝の日経新聞17面「名作コンシェルジューMusic」で取り上げられている。Milesのクインテットが1964年2月12日にNYCリンカーンセンターでのコンサートを収録したLPだ。

 YouTubeで捜してLPを聞いてみる。(何と便利な世の中になったものだろうか!)日経新聞で解説者吉田俊宏氏が書いているように素晴らしい演奏だ。これには理由があるが記事では触れられていない。

 LPの最初にクインテットを紹介するリンカーンセンターの司会者の言葉が収録されている。彼は「リンカーンの誕生日にセンシティブは問題に興味を持つ聴衆が素晴らしい演奏を聴くために集まった」と言っているのだ。

 確かに2月22日はリンカーンの誕生日だ。ではセンシティブとは何を指しているのか? 1963年はケネディ大統領が人種差別を禁ずる公民権法の議会通過に大変な努力を払った年だ。ケネディは同年11月22日にダラスで凶弾に倒れ、1964年になってジョンソン大統領の下でやっと議会で承認された。

 黒人のMilesが、ケネディが凶弾に倒れた後、公民権運動のさなかにリンカーンセンターで記念すべき演奏をしていたわけだ。Milesの入魂の演奏の理由がわかる。

(2022年7月3日 日曜日)