今日の一言
「キッシンジャー博士の慧眼」
キッシンジャーは100歳で2023年11月に亡くなった。彼が最晩年に力を振り絞って行ったウクライナ和平の提言がある。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻の初期段階においてキッシンジャーは停戦計画を提唱し、大きな注目を集め、議論を巻き起こした。彼の2022年5月の提案は、以下の主要な点を掲げていた。
• ロシアは、2022年2月24日の本格侵攻以前に存在していた最前線(すなわち、今回の攻勢以前のいわゆる「接触線」)まで部隊を撤退させるべきである。
• ロシアが2014年に併合したクリミアの将来の地位については、停戦協定の中で直ちに決定されるべきではなく、別途交渉されるべきである。
このアプローチは、少なくとも更なる交渉が行われるまでは、ウクライナがクリミアとドンバスの一部に対するロシアの支配を一時的に受け入れることを意味する。
キッシンジャーはこれを、当面の戦闘を停止させ、より包括的な協議への道を開く現実的な方法だと考えていた。キッシンジャーは、交渉なしに紛争を長期化させれば、より大規模な戦争へとエスカレートする可能性があると懸念を表明した。
しかし、彼の計画は、ウクライナ領土を犠牲にして平和を実現するという「宥和政策」を示唆しているように思われるとして、ウクライナと西側諸国から激しく批判された。ウクライナの指導者たちは、いかなる領土の譲渡にも断固として反対し、クリミアとドンバスを含むロシアの完全撤退こそが公正な平和の実現に必要だと主張した。
ドローンがこれだけ安価に製造できる時代になると、ロシアがウクライナへの攻勢を弱める可能性は低く、いつまでもロシアの殺戮が続く可能性が大だ。ウクライナがロシア国内への長距離攻撃能力を拡大すればロシアは核兵器の使用をちらつかせることになる。そういった意味では我々は第三次世界大戦のとば口にある。
トランプの提唱する今回のディールは、キッシンジャーのプランの焼き直しだ。しかし、開戦当初も今も、これ以上の惨禍を防ぐ唯一の方法に思える。博士の慧眼に思いを致す。
ところで、キッシンジャー博士とはニューヨークの街角ですれ違ったことがある。ブランド商品のディスカウントショップの回転ドアで、入ろうとする私と出ようとする博士の視線があった。背丈は私と同じくらい。恰幅がよく、眼光の鋭い紳士だった。
ニューヨークタイムズ電子版より(今日から以前のTop3記事で配信しています)
1.ウクライナとEU首脳がホワイトハウスを訪問
【記事要旨】
ウクライナのゼレンスキー大統領は本日、トランプ大統領と会談する予定です。この会談は、トランプ大統領がロシアのプーチン大統領と会談し、同盟国との交渉を決裂し、プーチンの提案する和平案を支持した直後に行われました。この和平案は、ウクライナに相当量の領土を割譲させるものだ。
ドイツのメルツ首相、フランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相を含む欧州の首脳は、ゼレンスキー大統領に同調し、連帯を示すと述べた。
金曜日にアラスカで行われたトランプ大統領とプーチン大統領の友好的な会談は、ウクライナと欧州同盟国にとって痛手となった。しかし、キエフにはわずかな希望の光が残った。それは、将来のロシアの侵略を抑止するために、ウクライナに安全保障上の保証を与えるという米国の提案です。
背景:ロシアの戦争終結に向けた提案は、ウクライナに対し、東部のロシア語圏工業地帯であるドンバス地方を放棄するよう説得することに重点を置いている。
現地の状況:ロシアの空爆によって故郷を追われたウクライナ人は、トランプ・プーチン首脳会談を侮辱だと非難した。
【コメント】
キッシンジャーの慧眼に私の考えは述べています。
2.米国、ガザ地区への医療ビザ発給を停止
【記事要旨】
トランプ政権は、ガザ地区出身者への訪問ビザの発給を停止したと発表した。これは、重篤な症状を抱える幼児を含む、米国で医療を求める人々にとって痛手だ。
この動きは、右翼活動家ローラ・ルーマー氏による激しいロビー活動を受けて行われた。ルーマーは、SNSへの投稿で、ガザ地区からの航空機を「国家安全保障上の脅威」と非難した。ルーマー氏はトランプ政権の決定において並外れた影響力を行使している。
オハイオ州に拠点を置く、パレスチナ人の家族と子供たちを支援する団体は、今月、ガザ地区で手足を失った11人の子供たちを米国の病院に避難させるため、このビザを利用したと発表した。
イスラエル:軍が攻勢拡大の準備を進める中、数十万人がガザ地区で即時停戦と人質解放を求めて抗議活動を行った。
【コメント】
極右の活動家として知られるインフルエンサーのローラ・ルーマー(31)はトランプに強い影響力を持つ。同氏)からの助言を受け、今年4月には、国家安全保障会議(NSC)の数人の職員と米サイバー軍のトップが解任された。
3.ボリビアの幻の大統領候補
【記事要旨】
エボ・モラレス前大統領は出馬を禁じられ、15歳の少女を妊娠させた容疑で告発されているものの、依然として選挙結果に影響を与えようとしている。同氏は、ボリビア国民が大統領選挙の第1回投票を行う中、森の中の別荘で影の選挙活動を展開している。
忠実な支持者に囲まれたモラレス氏は、支持者に対し抗議として無効票を投じるよう呼びかけている。かつての左派の同盟者たちは、この戦術は、中道右派の実業家サミュエル・ドリア・メディナ氏、あるいは保守派のホルヘ・「トゥト」・キロガ元大統領に有利に働く可能性があると指摘する。
背景:ボリビア初の先住民指導者であるモラレス氏は、疎外されたボリビア国民に発言権を与えることで、政治情勢を一変させた。しかし、4期目を目指した彼の試みは、混乱と一時的な亡命という形で幕を閉じた。
【コメント】
ボリビアといってもどこにあるか知る人は少ないだろう。地理に太平洋への出口を塞がれた内陸国で首都ラパスは高度3600メートルにある世界最高の首都だ。
近時はウユニ塩湖で日本でも知られるようになった。歴史を見ると革命、暴動、動乱が継続し、豊富な資源を生かせない「玉座に座る貧民」という言い方があるそうだ。
その他の記事
カナダ:ストライキ中のエア・カナダの客室乗務員は、交通混乱が続く中、裁判所の職場復帰命令に従わないと表明した。
パキスタン:鉄砲水により1日で少なくとも194人が死亡し、壊滅的なモンスーンシーズンによる死者数は増加の一途を辿っている。
トルコ:数十人の野党幹部が汚職容疑で逮捕された。批評家はこれをレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による政治的弾圧だと非難している。
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プラスチック:世界的なプラスチック汚染防止条約をめぐる交渉は、米国を含む石油生産国の反対により決裂した。
米国:抗議者たちは、トランプ大統領による州兵派遣に反対する平和的なデモを行い、ワシントンD.C.の路上を埋め尽くした。
2025年8月18日 月曜日