ウクライナの都市でのロシア軍による市民惨殺・拷問・強姦が戦争犯罪として非難されている。無抵抗の市民に対する人道上の大罪だという判断だ。
最大の戦争犯罪と言えば、ナチスによるユダヤ人へのホロコースト(犠牲者数600万人)と第二次大戦末期の米軍による日本の諸都市の市民を対象にした絨毯爆撃(犠牲者50-100万人)。広島(犠牲者14万人)と長崎(犠牲者7万人)への原爆投下だろう。
東京空襲を始め昭和20年に入ってから日本の都市を焼き払い多くの市民を殺戮した責任者は第21爆撃旅団の指揮官だったカーチス・ルメイだ。高性能を誇るB29を駆使し、日本の諸都市を効率的に焼き払った。非戦闘員を殺戮することについての良心の呵責は感じなかったと述べている。
原爆についてはレズリー・グロッグスという原爆開発のマンハッタン計画の陸軍責任者が投下の責任者とされている。ルーズベルトの急死後大統領になったばかりのトルーマンの承認を得ずに進めたと言われている。原爆投下の候補都市についてスティムソン陸軍長官が京都を含めるのに反対したが、広島・長崎は軍事都市として候補に残されたという。
スティムソンは日記に「ヒトラーを凌ぐ残虐行為をしたという汚名を着せられてはならない」と記していると言われるので、人道上の罪は自覚していたもの思われる。
人道上の罪でナチスドイツと日本の戦時指導者は軍事裁判で処罰され絞首刑に処せられた。敗戦国は戦争犯罪を問われ処罰されるが、戦勝国側は問われることは無い。ロシアの指揮官やさらにはプーチンの戦争犯罪を問い、罰を負わせるためには、ロシアが戦争に敗れることが必要だが、そのような事態はあり得ない。
カーチス・ルメイは、驚くべきことに、1964年に日本から勲一等旭日大綬章を送られている。佐藤栄作政権で防衛庁長官は小泉純也。日本の航空自衛隊の発展に寄与した功績だそうだ。勲一等は天皇陛下から授与されるのが通例だが、ルメイには入間基地で防衛次官から授与されたそうだ。「日本国民を多数殺してくれてありがとう。勲功大だ」というのだろうか。
日本の戦争指導者は連合国の軍事法廷で罪を問われ罰を受けた。ただ彼らが日本を破滅に導き多くの国民の命を奪ったことについての罪を問われたことは無い。
(2022.4.9 Saturday)