NVIDIAの次を狙う

米国で最も著名な成長株投資家であるキャシー・ウッド氏の投資については多くのフォロー記事が書かれており、我々も参考に出来そうだ。彼女が最近投資しているといわれる3つの株式を見てみよう。

1.パランティア・テクノロジーズ[PLTR]
ウッド氏の10大保有銘柄の1つで、諜報機関向けにソフトウェアツールを提供するパランティア・テクノロジーズPLTRは、2023年初来で株価は4倍近くに上昇している。
市場はまだ、パランティア・テクノロジーズの可能性に追い付いていない。6月17日には、アーガス・リサーチのアナリスト、ジョセフ・ボナー氏が同社株を買い推奨としたことを受け、株価は6%上昇した。ボナー氏は、PLTRが従来の公共部門だけでなく、民間の商業セクターにも進出していることで、株価上昇の余地が大幅に拡大するとみている。2024年第1四半期には、商業部門向け売上高は前年同期比40%増となり、全社売上高の21%増と比べて2倍近い成長率となった。
ボナー氏は、2024年にPLTRの収益力が大幅に上昇し、キャッシュフローが急増するとみている。
しかし、株価は決して割安ではない。ボナー氏の予想利益に基づく2024年予想株価収益率(PER)は76倍であり、2025年予想PERでも63倍と、かなり割高だ。
【コメント】
著名な株式ブロガーであるKeith Fitz-Geraldも一押しの銘柄だ。割高だが個人にも購入しやすいレベルで(現在の株価は26ドル程だ)人気がでる可能性が高い。

2.インテリア・セラピューティクス(NTLA)
インテリア・セラピューティクス(Intellia Therapeutics Inc)は臨床段階のゲノム編集会社であり、Clustered、 Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/CRISPR Associated 9(CRISPR/Cas9)技術を用いた治療薬の開発に注力する。
【事業内容】CRISPR/Cas9はゲノム編集のための技術であり、ゲノムデオキシリボ核酸の選択された配列を改変するプロセスである。CRISPR/Cas9は、アンメットニーズの高い疾患に対するin vivoおよびex vivo治療を推進するためのモジュール式プラットフォームの活用に注力する。In vivoの主要候補であるNTLA-2001は、トランスサイレチン(ATTR)アミロイドーシスの治療薬であり、遺伝性血管性浮腫(HAE)の治療薬であるNTLA-2002は、CRISPR/Cas9をベースとした最初の治療薬候補であり、ヒトの標的組織内の遺伝子を高精度に編集するために、静脈内注入により全身投与される。また、免疫腫瘍学や自己免疫疾患に対処するための生体外アプリケーションも開発中である。
ウッド氏の率いるARKKと投信ARKG ETF全体で合計6万6,147株を取得した。この動きは、ARKが遺伝子編集企業への出資比率を高めていることを強調するもので、一貫した買いが見られた数日前の動きと一致している。
【コメント】
この段階のゲノム創薬企業への投資はまさにハイリスクハイリターンだろう。

3.メタ・プラットフォームズ[META]メタ
最後は良く知った銘柄だ。METAはFacebook、Instagram、WhatsAppといった主要なソーシャルネットワークを擁し、毎日32億人が同社のサービスを利用している。同社は既にAIを活用しており、FacebookやInstagramの各ユーザーのためにコンテンツのフィードを調整し、それぞれのユーザーに最も関連性の高い投稿が表示されるようにしている。2023年には、こうした機能のおかげで両プラットフォームのエンゲージメントが増加し、メタに莫大な広告収入をもたらした。
同社にとってさらに大きなAI機能を活用できる場は、Llamaと呼ばれる大規模言語モデル(LLM)かもしれない。Llamaは世界最大のオープンソースモデルであり、開発者は独自のAIアプリケーションを構築するのに、無料で利用することができる。一方でメタにとっては、テストをクラウドソース化することで、改良スピードを速めることができる。Llamaはメタの既存プラットフォーム向けに新たなAI機能を生み出すためのカギとなるため、これはとても重要だ。
例えば、メタは2023年に、Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppからアクセスできる「Meta AI」と呼ばれるチャットボットを発表した。Meta AIは他のチャットボットと同様に、複雑な質問に回答したり、画像を生成したりできるだけでなく、グループチャットに追加してお勧めのレストランや旅行を提案したり、プレゼントのアイデアを出すこともできる。Meta AIは、現在はLlama3を搭載していますが、同社は既に次世代モデルの訓練を進めており、さらに優れた機能が期待される。
最終的に、メタのアプリを利用するすべての企業は、Meta AIをベースにパーソナライズされた独自のチャットボットを持つようになり、顧客からの問い合わせに対応したり、売上処理もしてくれる可能性もある。これは、メタにとって新たな収入機会となる。
メタ株の最大の長所は、株価が割安なことだ。12ヶ月実績1株当たり利益(EPS)17.41ドルに基づくと、株価収益率(PER)は28.9倍であり、ナスダック100指数のPER31.9倍に対して9.4%のディスカウントとなっている。
ウォール街が予想する2025年EPSの21.59ドルに基づくと、PERはわずか23.3倍だ。つまり、ハイテクセクター全体と同水準のバリュエーションになるだけで、メタの株価は2025年末までに36.9%上昇する可能性がある。
【コメント 】
ここに書かれていることの半分ぐらいしか私には理解できないが、AIソフトウェアに関するウッド氏の予測が正しく、そしてシナリオ通りに事が運べば、AIによる全く新しい収益機会が開かれることになる。
GAFAになかで今拾うとしたらメタかもしれないと思わせる記事だ。

2024年7月7日 日曜日

July 4th に考える

アメリカの建国記念日に民主主義を再考してみたい。

米国の建国の父たちのビジョンが精神的な支柱として、現在の米国をもたらした。大西洋岸の密集した14の小さな植民地は、わずか 1 世紀余りで世界の巨人へと成長した。米国での機会と自由を求めて何百万人もの人々を世界中から惹きつけ、彼らの才​​能を利用して、人類史上例を見ない繁栄を生み出した。アメリカの輝かしい歴史であり、誇りだ。

米国精神の中心にある「自由」とは混沌としていて、素晴らしく、革新的だ。その革新は、指示し指示されるのではなく、誰もが他の人々の問題を解決することで得られるより良い未来を想像できるようにするシステムによって生み出され、上からの強制ではなく市場を通じて機能している。これは挑戦者である中国の国家独占資本主義とは大きな違いだ。

米国が存在する以前の数千年の間、エリートが愚民を導くというやり方は、1800 年になっても人類の大多数を貧困に留め、発展の無い世界を生み出していた。米国のもたらした自由は平均寿命を 2 倍にし、何十億もの人々に富ませ、専制政治を打破した。第二次世界大戦に勝利し、冷戦にも米国は勝利した。

ところが、自由と民主主義を取り巻く環境は大きく揺らいでいる。建国の父たちが米国にもたらした秩序に、多くの米国民が疑問を抱き、民主党と共和党、更に無党派層に国論は分裂している。米国大統領選挙ではトランプのような独裁を標榜している候補が勝利する恐れすらある異常な状況だ。

世界的には多くの権威主義国が、自由と民主主義を受け入れず、政府主導の政治経済体制でアメリカのやり方に対抗し、中国は、米国に拮抗してきているように見える。G7の世界経済に占める地位は低下しており、いわゆるGlobal Southは、自分たちを助けてくれる国々が正義で、自由や民主主義を押し付けられるのは御免だというスタンスだ。

日本では、長らく続いた自民党政権下、変化を嫌うぬるま湯的な意識が国民に蔓延しているように見える。アジアを代表する成熟した民主主義国として、中露に対抗してゆく術を考えて、行動しなければならないのに、そんな気概も能力もなさそうだ。

「一燈照遇、万燈照国」伝教大師の言葉だ。
自分が自分の限られた分野で灯をともして片隅を照らす。万人がそうすれば国が照らされることになる。 国を何とかするには、自分の置かれた場所でなんとか頑張るしかない。というありきたりな結論に落ち着く。

2024年7月6日 土曜日

世界の動き(その2) 2024年7月5日 金曜日

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
(結局、いつもより45分遅い6時45分に配信されました。)

1.労働党が英国選挙で地滑り的勝利と予想
【記事要旨】
英国の労働党は昨日の選挙で圧勝し、14年続いた保守党を政権から追い落とすと予想される。
BBCと他の2つの放送局が実施した出口調査では、下院650議席のうち労働党が410議席、保守党が131議席を獲得すると予測された。
この結果は保守党とリシ・スナク首相にとって打撃となった。英国の有権者は、緊縮財政、EU離脱、新型コロナのパンデミック、ボリス・ジョンソン前首相の一連のスキャンダル、後任のリズ・トラス氏の不運な減税案に及ぶ激動の時代に疲れ果てていることを示した。
「これは典型的な反現職投票だ」とロンドン支局長は語った。「英国の有権者は変化を切望している」。
「彼らは、労働党が保守党と根本的に異なる結果をもたらすことができるとは信じていない」と彼は付け加えた。「しかし、現時点では、彼らはリスクを冒す用意がある」
次期首相に就任する労働党党首のキール・スターマー氏は、多くの英国有権者が解決不可能と懸念する問題に直面することになる。移民問題、深刻な資金不足と慢性的な人員不足に直面している国民保健サービスの立て直し、そして生活費危機の一因となっている高インフレに苦しむ経済の立て直しなどだ。
全体像:英国の選挙は左派への動きであり、フランスやドイツなどの欧州諸国で極右勢力が強まっていることに対する潜在的なカウンターウェイトだった。ランドラー氏によると、その結果、スターマー氏は「自由民主主義の防壁のように見える」可能性があるという。
【コメント】
移民以外は英国の抱える問題は日本とそっくりだ。自民党政権が地滑り的な敗北を喫する近未来は見えないが。

2.イラン国民が投票へ
【記事要旨】
改革派と超保守派が本日、イランの次期大統領を決める決選投票で争う。
改革改革派候補のマソウド・ペゼシュキアン博士は、イラン経済を苦しめている制裁を解除するため、西側諸国と核交渉を行うと述べた。超強硬派のサイード・ジャリリ氏は、制裁を打破し、他国との経済関係を強化すると約束した。
主要な核政策と国家政策は、依然として最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師が決定している。ハメネイ師は制裁解除のため、米国との間接的な交渉をすでに承認している。誰が勝利しても、こうした取り組みは継続される可能性が高い。
現地で:私たちはテヘランで6日間過ごし、住民と話をした。ほぼ例外なく、彼らは次期大統領に1つの大きな要求をしていた。経済を立て直すことだ。
【コメント】
イランは現在は親ソ反米だが、元来は親欧米の国だ。シーア派の盟主でスンニー派の諸国とは一線を画している。改革派が大統領になったら、事態の打開が見込まれるように思う。

3.ギリシャでは、週6日勤務も可能に
【記事要旨】
月曜日に施行された法律により、ギリシャの一部の企業は週6日勤務を強制できるようになる。この措置は、多くの国が週4日勤務への移行を検討している時期に実施された。
この法律は主に、特定の工業または製造業の労働者、または1日24時間、週7日間の連続シフト制の企業で働く労働者に適用される。ギリシャ政府はこの措置を軽視しようとしているが、労働組合や左派の多くは激怒している。左派野党のシリザは、この法律を「19世紀の労働条件への回帰」と呼んだ。ギリシャは既にEUで平均週労働時間が最長となっている。
【コメント】
すごい法律が通ったものだ。建設業・運送業の人員不足問題に悩む我が国にこそ必要な法律だ。

その他の記事
中東:
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は米国に対し、停戦交渉のためガザに新たな代表団を派遣すると伝えたが、戦争はイスラエルが目標を達成した後にのみ終わると改めて述べた。
バイデン:
大統領は民主党知事グループに対し、勤務時間を減らす必要があり、午後8時以降のイベントを縮小すると述べたが、選挙戦を続けるつもりだと述べた。
シエラレオネ:
新法により、児童婚の婚姻が無効となり、金銭的補償を受けることが可能になった。
ハリケーン・ベリル:
この嵐により、ジャマイカで少なくとも1人の女性が死亡し、数十万世帯で停電が発生した。
ウクライナ:
欧州は、国内の荒廃した都市を守るため、新たなパトリオット防空システムを急いで構築しようとしている。
中国:
外国人に対する暴力的な攻撃により、中国の厳しく検閲されたインターネット上で拡散している外国人排斥主義や国家主義的な動画に関する議論が巻き起こっている。
フランス:
18~24歳のフランスの有権者の4分の1が極右に投票しており、これは最近の選挙よりも大幅に多い。
ドイツ:
初のアフリカ生まれの国会議員が再選を目指さないと述べた。同議員はヘイトメールや殺害予告を受けており、議員事務所は暴力的な攻撃を受けている。
タンザニア:
ここ数カ月、ケニアの国立公園の境界付近で雄象が数頭殺された。おそらくトロフィーハンターによるものと思われる。

2024年7月5日 金曜日

世界の動き 2024年7月5日 金曜日

今日の言葉
「日経平均史上最高値」
 昨日の終値は40913.65円。外国人と個人が買い上げているようだ。米国大統領選の候補者討論会でトランプが圧倒的な優位に立ったので、トランプが大統領になれば景気の拡大や従来型の大企業が恩恵を受けるという読みが広がっている。
 一方、ドル円は40年来の円安が進み160円台が定着し、輸出企業の業績が改善されるという考えが外国人投資家には根強く存在する。日本国民は輸入物価上昇によるコストプッシュインフレに苦しんでいる。
 景気の足腰は弱く、ハムレット日銀はどうすればよいか迷っており、動きが取れない。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
(今日の配信は遅れています。独立記念日のせいかもしれません。届いたら別途配信します。)

 The New Yorker Dailyという雑誌に「今こそ修正25条を発動する時期だ」という記事があったのでその条項を紹介したい。(以下Wikipediaより)

 『アメリカ合衆国憲法修正第25条(英語: Twenty-fifth Amendment to the United States Constitution、あるいは Amendment XXV)は、アメリカ合衆国憲法第2条第1節第6項の曖昧な語句を部分的に置き換え、アメリカ合衆国大統領の承継を取り扱い、副大統領が欠員の場合にそれを埋める方法と、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができない場合の対処法を規定している。

修正条項の日本語訳
第1節  大統領の免職、死亡、辞職の場合には、副大統領が大統領となる。
第2節  副大統領職が欠員の時は、大統領は副大統領を指名し、指名された者は連邦議会両院の過半数の承認を経て、副大統領職に就任する。
第3節  大統領が、その職務上の権限と義務の遂行が不可能であるという文書による申し立てを、上院の臨時議長および下院議長に送付する時は、大統領がそれと反対の申し立てを文書により、それらの者に送付するまで、副大統領が大統領代行として大統領職の権限と義務を遂行する。
第4節  副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代行として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。

 その後、大統領が上院の臨時議長および下院議長に対し、不能が存在しないという文書による申し立てを送付する時には、大統領はその職務上の権限と義務を再び遂行する。ただし副大統領および行政各部の長官の過半数、または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務の遂行ができないという文書による申し立てを4日以内に送付する時は、この限りでない。この場合、連邦議会は、開会中でない時には、48時間以内にその目的のために会議を招集し、問題を決定する。もし、連邦議会が後者の文書による申し立てを受理してから21日以内に、または議会が開会中でない時は会議招集の要求があってから21日以内に、両議院の3分の2の投票により、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないと決定する場合は、副大統領が大統領代行としてその職務を継続する。その反対の場合には、大統領はその職務上の権限と義務を再び行うものとする。』

 バイデン自らが職務を全うできないと申し立てれば、ハリスに職務上の権限が委譲されると知れる。
 確かにこのプロセスは不透明な状況を改善し、大統領候補の選定作業も公正に進みそうだ。

2024年7月5日 金曜日

世界の動き 2024年7月4日 木曜日

今日の言葉
「年金財政検証」
『財政検証は5年に1度、年金財政の健全性を確認し、100年先までの見通しを点検するために実施されている。公的年金制度では、保険料の上限を決め、その範囲内で年金を給付する。現役世代の減少や平均余命などを勘案し、年金を減額する措置(マクロ経済スライド)が一定期間導入されている。
政府は、モデル世帯(40年間平均的な収入で会社勤めした夫と専業主婦)で、現役の手取り収入に対する年金支給額の比率を示す所得代替率が50%超確保できるよう目指している。24年度のモデル世帯の年金額は厚生年金と国民年金(基礎年金)の合計で月22万6000円。現役の平均手取り月額は37万円で所得代替率は61・2%。19年度より0・5ポイント下がった。
財政検証では、物価や賃金の上昇率などが異なる四つの経済前提を設定。合計特殊出生率や在留外国人数、就業者数なども加味した。経済成長が現状に近い「過去30年投影ケース」は物価上昇率を0・8%、実質賃金上昇率を0・5%などと設定。57年度にマクロ経済スライドが終了して所得代替率は50・4%で下げ止まる。』(毎日新聞より)
どうしても長い説明になるが、政府は年金受給金額を現役時の50%以上を目指しており、いろいろシナリオを替えても何とか維持できるという結論だ。
ただ、経済成長率と出生率維持が大前提となっており、5年後の再見直しの際には、50%の維持は不可能になるという結論に容易に変わりうる。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
(今日は英国の選挙に関するマーク・ランドラー記者の記事だけです)

流れに逆らって
英国は今日、ヨーロッパやアメリカ大陸の他の選挙と同じ要素を盛り込んだ選挙戦の末に投票に向かう。現状を拒絶したいと願う不満を抱えた有権者、信用を失った政府、そしてはナイジェル・ファラー候補に代表されるポピュリズムの要素だ。
しかし、英国は選挙で例外的な存在になりそうだ。他の国の有権者が右傾化する中、英国の有権者は14年続いた保守党主導の政府を追放し、中道左派の労働党を支持すると予想されている。本日のニュースレターでは、他の国と英国の進み方の違いを説明する。

トーリー党(保守党)の混乱
保守党は、2010年にデービッド・キャメロン政権が発足して以来、激動の時代を主導してきた。2008年の金融危機後の厳しい予算削減、2016年のEU離脱投票、新型コロナウイルスのパンデミック、首相の入れ替わりなど、多くの人にとってそれはサーカスのようなものだったが、今やその時代は去らなければならない。
ボリス・ジョンソンは、一連のスキャンダルにより政権を追われた(とりわけ、自身が課した新型コロナウイルス対策のロックダウン中にパーティーを開いた)。リズ・トラスは、金融市場が彼女の提案した減税案に猛烈に反対したため、わずか50日しか政権を維持できなかった。現首相のリシ・スナクは政権を安定させたが、有権者に保守党の政権維持の根拠をほとんど示せなかった。
労働党の政治家は保守党が英国を破壊したと主張している。彼らは言う。「予算削減によって、この国の尊敬を集める国民保健サービスNHSが飢え、緊急治療室が混雑し、選択的手術を何ヶ月も待つ事態になっている。」
他の専門家は、英国のEU離脱が貿易を鈍化させ、経済成長を阻害したと指摘している。パンデミック後の英国の回復は欧州の近隣諸国と同程度だったが、その後経済は停滞し、公的債務は膨れ上がった。
保守党は自党の優先公約でも混乱している。EU離脱以降、移民は急増している。これはウクライナと香港からの難民が一因である。しかし、流入は南アジアとアフリカからの膨大な数の移民によって増えており、その多くは大学で勉強するために来たり、人員不足のNHSで看護師や医師として採用されたりしている。これらの記録された移民に加えて、何千人もの亡命希望者が危険なボートでイギリス海峡を渡ろうとしている。
移民削減の手段としてブレグジットを売り込んだ保守党の指導者たちは、入国者数を減らすと述べている。スナック氏は「ボートを止める」と誓った。同氏は、一部の亡命希望者をルワンダへの片道便に乗せるという、法的に問題のある政策を議会で可決させるために何ヶ月も費やした。しかし、多くの有権者はもはやこの問題に関して保守党に信頼性がないと考えている。

労働党の売り文句
労働党は、英国の国境警備を強化することで移民を抑制すると公約している。(労働党は、ルワンダへの航空便は費用がかかり非効率的だとし、運休させるだろう。)しかし、それ以外では、同党の優先事項は政府の優先事項とそれほど変わらないように思われ、それは偶然ではない。
さまざまな問題で、労働党は保守党と大きな違いを生み出さないように注意してきた。大幅な増税は提案していない。英国が急増する財政赤字を削減するまで、大幅な支出増はしないと公約している。英国は気候変動を抑制するための野心的な計画を縮小した。ロシアとの戦争におけるウクライナへの軍事支援は継続するだろう。
労働党が保守党を拒否するのは、政策の内容というよりも、その無能な統治のためだ。保守党の統治にうんざりしている多くの有権者の支持を獲得したいが、税金と支出を重視する左派、特に前党首のジェレミー・コービンを信用していない有権者を怖がらせたくない。
世論調査は、この計画がうまくいっていることを示唆している。労働党は18か月以上にわたり、世論調査で保守党を2桁リードしている。現労働党党首のキール・スターマーは、スナク氏の有力な後継者として自らを位置づけている。変革の担い手ではあるが、左翼の革命家とは程遠い。

本当の概念上の争い
今回の選挙でイデオロギー闘争があるとしても、それは右派で繰り広げられている。ブレグジットを支持して選挙運動を行ったポピュリストの扇動者であるファラージは、保守党から票を吸い上げている反移民政党リフォームUKを率いている。
英国政治を規定する選挙規則の下では、同党が議会で多くの議席を獲得する可能性は低い。しかし、右派票を分裂させ、労働党に対する保守党の敗北の規模を拡大させ、ひょっとすると保守党を分裂させる可能性もある。
ファラージ氏はドナルド・トランプ氏の同盟者であり、同氏のポピュリスト的な挑戦は、米国におけるトランプ氏の動向だけでなく、フランスやドイツにおける極右政党の躍進にも反映されている。
少なくともこの点では、英国はそれほど例外ではない。
【コメント】
長い分析記事だ。14年間政権を維持してきた保守党もついに政権を明け渡す時期が来た。相手が左派政党の労働党だというのが他の欧州諸国とは違いと言うのが記者の説明だが。労働党の左派色は薄い。
第二次安倍政権が成立したのが2012年12月で、自民党政権が12年継続している。日本でも積年の膿を出すべき時期だ。

バイデン
選挙戦:
バイデン大統領は討論会で惨憺たる結果となった後、再選を目指すかどうか検討中だと、ある支持者が語った。ホワイトハウス当局者はこの主張を否定した。
世論調査:
タイムズ/シエナの世論調査によると、討論会後、ドナルド・トランプのリードが広がった。
企業幹部:
米国のビジネスリーダーのグループがバイデンに退くよう求めている。
候補者:
カマラ・ハリス副大統領は、バックアップ候補の上位に名を連ねている。

その他の大きなニュース
フランス:
各政党は、日曜日の第2回選挙を前に有権者の支持を得るために、生活費の危機に焦点を当てている。
カリブ海:
ジャマイカの災害対策局は、ハリケーン・ベリルが島を襲い、数十の道路が冠水して封鎖され、倒木や地滑りが発生したと報告した。
中東:
イスラエルの無人機攻撃によりレバノンでヒズボラの司令官が死亡、ヒズボラはロケット弾攻撃で報復した。パリでは、調停者が全面戦争の阻止に努めた。
トルコ:
経済が悪化する中、男性グループがシリア難民を拳やナイフで襲撃。
インド:
今週、宗教集会中に起きた衝突で121人が死亡し、ある家族の3世代にわたる女性が死亡した。
台湾:
中国の海上保安庁が台湾の漁船とその乗組員5人を拿捕。

2024年7月4日 木曜日