生産性の高い働き方は?

 従業員への「職場復帰」を求める米国辣腕経営者の発言が目立ってきている。

 先週、Elon Muskはテスラの従業員に「週に少なくとも40時間はオフィスに戻るか、職を失うか」という最後通告を出した。テスラの工場で何週間も寝泊りをしていたことで知られるマスク氏は、リモートワークは生産性と個人的なコミットメントを破壊すると考えている。先月、彼は中国人労働者を「午前3時に石油を燃やしている(burning the 3 a.m. oil)」と称賛し、「まったく仕事に行かないようにしようとしている」アメリカ人労働者を批判した。

 JPモルガン銀行のジェイミー・ダイモンは先月、自宅で仕事をすることは「喧嘩したい」人には向いていないと述べた。彼は、意思決定の遅れや「自発的な学習と創造性」の欠如など、在宅勤務の「深刻な弱点」を指摘している。同行はゴールドマンサックス同様に従業員の出社率をデジタル的に監視している。

 従業員を職場に集める他の要因もある。多くの組織がオフィスの不動産に高額な投資を行っており、その結果、最終的にはデスクに労働者を配置することに依存する広大な経済システムが構築されている。ニューヨークのエリック市長は「私はオフィスビルを埋めようとしています。JPモルガンに、ゴールドマンサックスに、すべての人に伝えています。エコシステムを構築するために、あなた方の人々をオフィスに戻す必要があります」と今週言った。当然ニューヨークの職員は出社を要請されている。

 会社での同僚とのふれあいや雑談が新しいビジネスのアイデアに結びついたり、仕事の効果的な進め方について非公式な支援が得られることは、経験上あったので、自分は、出来れば出社賛成派だ。社内ポリティックス上の顔を見せておいた方が有利というのも、いまだ事実だろう。

 ただ、リモートワークに慣れると、通勤地獄から解放され、勤務時間の自由度が高まることが、新しく創造的な時間を生み出せるとも感じる。

 短絡的な結論を許していただければ、エッセンシャルワーカー以外のホワイトカラーワーカーの多くは、「週休3日制+リモートワーク」ヘとシフトしてゆくのではないかと思われる。

 いまTBSテレビのサンデーモーニングを見ていたら、スポーツのコーナーでレギュラーコメンテーターの上原がニューヨークから参加していた。
そういう時代なのだろう。

(2022年6月5日 日曜日)

命の値段

    昔タイに勤務していた時に、日本人(商社マン)が運転する自動車が交通事故を起こしタイ人の小さな子供をはねて死なせるという事故があった。その時にその商社マンは1万バーツ(当時のレートで5万円ほど。当時のタイの生活水準を考えれば50万円ほどに相当する金額)で示談したと聞いた。金額の小ささには驚いたが、それよりも、子供の父親がカップンカップ(ありがとう)と言ってお金を受け取ったということを聞いて更に驚いた。
 貧しい子だくさんのタイ人の父親にとっては、子供の命の値段はそんなものだったということなのであろう。今から40年も前、タイがまだまだ貧しかった日の話だ。私は30歳前だったが、運転手付きの社用車があり、メードのいるアパートに住んでいた。

 日本で自分の子供や親が事故に巻き込まれ亡くなったら一体いくらが妥当な金額になるのであろうか。池袋の高齢ドライバーが自転車に乗った母子を死なせた交通事故では、刑事事件で有罪になった元工業技術院院長に対し、民事訴訟では1億7千万円が請求されている。

 この事故では因果関係が明白だが、因果関係が明白でない事案では、いくらぐらいが妥当なのであろうか。財務省の書類改竄事案では、裁判を長引かせたくない国は、改竄作業の強要が自殺の原因になったという判定は行われていないのに、金を払って強引に結審させた。

 福島原発のせいで故郷を去らざるを得ず、避難先で失意のうちに亡くなった人などは、いくらぐらいの補償・賠償をもらっているのだろうか。

 今の日本で生活苦にあえぐ人が、親や子供を偶発的な事故で亡くした場合には、一体いくらぐらいの和解金を事故原因を作った人に対して請求するのだろうか。昔のタイ人の父親のように、少額の現金に目がくらむようなことは無いのだろうか。デフレと共に日本人の命の値段も下がってはいまいかと、余計なことだが、心配になるのだ。

 さて、6月から外国人旅行者の入国が解禁された。「安い日本」へとタイ人の観光客も沢山訪れることだろう。40年間で彼我の関係は大きく変わった。バンコクに住む日本人駐在員でも電車で通勤する人が多いと聞く。

 これからの40年で、更にどのように変わるのだろうか?命の値段を含めて。

(2022年6月4日 土曜日)

世界の動き 2022年6月3日 金曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
 「老舗も苦しむ」
 横浜の聘珍楼が破産申請だそうだ。負債総額は約6億円。のれんだけでも相当な価値がありそうだが老舗もコロナに勝てなかったということだろう。飲食業の多くが今が辛抱のしどころと考えているだろうが、緊急融資の利払いや返済が始まる今、再生・清算シナリオも含む準備をする時期だ。

1.ロシアがウクライナの5分の1を支配とゼレンスキー語る
【記事要旨】
 侵攻から100日が経過しウクライナの予想以上の奮戦にも拘わらずロシアは国土の5分の一を支配し20万人の子供をロシアに移送したとゼレンスキー大統領は語った。シビエロドネツクをめぐる戦闘は激化し露軍は市全体の制圧に近づく。黒海での数千頭のイルカの死亡は戦争の生態系への影響を懸念させる。
【コメント】
 戦争の激化で武器メーカーは有卦に入り、軍事関連ビジネスの株価も上がっている。ESGの観点からこうした企業は投資対象にならないので運用成績にはマイナスだ。投資対象の制限は市場全体の運用成績を下回る事例だ。

2.英国は史上最長の王室を祝う
【記事要旨】
 クイーンエリザベス2世は、バッキンガム宮殿バルコニーで国旗を振る大勢の国民に姿を見せた。即位70年を祝うプラチナ・ジュビリーは4日間の行事。世界の首脳がビデオで祝賀メッセージを送った。96歳に達しコロナから回復した女王が姿を見せたのは久しぶりで、女王と共に、チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ジョージ王子の3世代の王位継承者がバルコニーに並んだ。70年以上在位の国王はルイ14世(フランス)、ヨハン2世(リヒテンシュタイン)、プミポン(タイ)の3人だけ。
【コメント】
 王室内の不協和を乗り越えて国民から支持される王室を堅持してきたのは女王の資質によるところが大きいと思われる。それにしてもチャールズ皇太子はもう73歳。随分と歳を取られた外見だ。

3.韓国地方選で保守派与党が大勝
【記事要旨】
 主要17首長選挙のうち12で保守派が勝利し与党「国民の力」と尹大統領に国民の大きな支持が判明。前回の地方選で14地区で勝利した「共に民主党」は5勝にとどまり退潮が明らかになった。ただ尹政権での新閣僚中2人が不適切な行為で辞任するというつまずきもある。
【コメント】
 やはり日本との関係改善が気になるところ。竹島周辺で海底の調査をしたり韓国の姿勢は変わらない印象もあるが、論争点が多いので、交渉の余地は大きいとも思われる。

その他:
珍しい経済人事の記事
Sheryl Sandberg, who helped lead Facebook though the last 14 years, announced that she would depart later this year. She leaves far from unscathed.
人口の98%が抗体を持つ南アでコロナ拡大?
Coronavirus infections surged in South Africa in recent months despite, according to new research, about 98 percent of the population having some antibodies.
オペックプラスの増産?
The major oil-producing nations in OPEC Plus agreed to raise oil production by 50 percent more than planned for July and August.

(2022年6月3日 金曜日)

世界の動き 2022年6月2日 木曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
 「外国人観光客の制限緩和。良いけど、なんだかなー」
 国内の制限(自主規制を含む)緩和と並行的に進めないと片手落ちではないかと思う。円安の日本に海外(特に中国、韓国)からの観光客を呼び込んで活性化の目玉にしようという「さもしさ」が感じられる政策。
 素晴らしい日本の観光地が所得の増えた日本人観光客でにぎわう状況が望ましいと思うのはナショナリストの私だけだろうか。

1.ロシア軍ルハンスク州最後の都市に攻勢
【記事要旨】
 ルハンスク州でのウクライナ側最後の拠点 Sievierodonetskへの攻勢をロシアは強めているが米国、ドイツは最新兵器のウクライナへの提供で支援。バイデン大統領はタイムズへの寄稿で米国のウクライナ支援意思の固さを強調するがプーチンの失脚を狙っているわけではないとも述べる。
【コメント】
 プーチンは核兵器の演習を誇示しているそうだが窮鼠猫を噛む愚行が恐ろしい。

2.上海の都市再開は安心感と不安をもたらす
【記事要旨】
 昨日2か月ぶりにロックダウンを解かれた上海では市民が行動の自由を楽しみ街では飲酒を楽しむ人々も見られた。ただ、共産党政府はゼロコロナ政策を堅持しており市民からはどれだけこの自由が続くか懸念の声も聴かれた。イーロン・マスクはSpaceXとTeslaの従業員に職場復帰を求める。
【コメント】
 サプライチェーンの混乱がようやく収まっていくと思われ日本にとっても良いニュース。

3.イスラエルとUAEは貿易協定締結
【記事要旨】
 関税の96%を免除する自由貿易協定はイスラエルとアラブ諸国との初の協定となる。2021年の貿易量8.8憶ドルが5年以内には100億ドル規模まで発展することが期待される。
【コメント】
 イスラエルとアラブですら和解しあえる。同じスラブ民族であるウクライナとロシアが和解できないはずがない。戦争を突然はじめ国家間の憎しみをあおる政治が諸悪の根源だ。民族間の連帯で政治の暴走を止められないのだろうか。

その他:
バイデン政権の台湾政策
The Biden administration said it would pursue negotiations to strengthen trade and technology ties with Taiwan, a move aimed at countering China’s regional influence.
テニスでは
Rafael Nadal defeated Novak Djokovic in a thrilling quarterfinal that lasted 4 hours 12 minutes at the French Open.
登攀のお名誉のために
For two years, an Indian climber named Narender Singh Yadav was barred from mountaineering in Nepal after he was accused of faking a summit of Mount Everest by doctoring photos. Last week, he returned to the mountain seeking redemption. Documenting his ascent with dozens of photos and videos, as well as testimony from Sherpas, Yadav reached the summit and found vindication.

(2022年6月2日 木曜日)

世界の動き 2022年6月1日 水曜日

ニューヨーク・タイムズ電子版より

今日の一言:
 「信頼できなければ任せられない」
 泊原発で運転差し止めの請求が認められた。驚いたのはこの裁判は10年に及ぶものだったという点。裁判所は北海道電力に必要な資料提出求めたが満足な説明がなされなかった由だ。一方原子力委員会に再稼働の申請を北海道電力はしていたがここでも説明が不十分で叱責されていたようだ。

 北海道電力は電力の安定供給義務をどう考えているのだろうか。安全な原発は早急に再稼働するのが経済的には正しいのだろうが、その前提は、ガバナンスのしっかりした企業が責任を持って運転してくれることだ。そこが揺らぐと何もできない。

1.EUはウクライナ支援策をまとめる
【記事要旨】
 EU首脳はロシア原油の禁輸、90憶ドルのウクライナへの支援、ウクライナに貯蔵された穀物の開放について合意。禁輸にはハンガリーは含まれなかった。22百万トンの穀物が輸出出来ないことによる食糧危機はすべてロシアの責任とEUは断言。ロシア外相は来週トルコと訪問し穀物放出を話す見込み。ルハンスク州でウクライナが確保している要衝Sievierodonetskへのロシアは攻勢を強める。
【コメント】
 EUは対立路線を明確にしている。ウクライナがEUに特例加盟するという話はどうなったのだろうか。

2.太平洋での影響力を競う
【記事要旨】
 第二次大戦中に米軍が作った飛行場や病院は南太平洋島嶼国で今も使われているが朽ちつつある。そこへ中国が影響力を増そうとしている。ソロモン諸島とは安全保障条約を締結し、治安維持に部隊を派遣し、中国の投資を守り、民間・軍事用の港の建設に道を開いた。フィジーやソロモン諸島では米国が巻き返そうとしているがとても遅れている。南太平洋島嶼国は巨大パワーのせめぎ合いに関わりたくないと考えているが今中国が提供している資金面・インフラ建設面での支援は必要としている。
【コメント】
 第二次大戦中のミッドウェイ海戦やソロモン諸島での戦闘を思い出せば、このエリアはアメリカと豪州を結ぶ要衝だとわかる。日本も外交でかなり力を入れてきたはずだが全く出てこないのはどうなっているのだろうか。

3.上海での制限は解除
【記事要旨】
 25百万人の都市では2か月間のロックダウンが、最近患者が発生した64万人が住む地域を除き、今日から解除される。公共交通機関や公共施設利用には72時間以内の検査結果の提示が必要とされる。月曜には中国全土で陽性者は97人で3月初めから初めて100人以下になった。
【コメント】
 全土で100人以下というのは驚きの数字。再度陽性者が増えたら共産党政権はどう対応するのだろうか。

その他:
カナダでは銃禁止
Canada is planning to ban handgun sales and buy back most assault weapons from civilians.
ゼロ二酸化炭素は
A report found that only Denmark and Britain were on track for net-zero emissions by 2050 and that 176 other nations were poised to fall short.
マリの内戦
Civilian deaths have spiked in Mali since Russian mercenaries of the Wagner Group began operating alongside its military. A Times investigation identified sites where people were killed and thrown into mass graves during a raid on a town in central Mali in late March. Mali has been fighting armed militants for decades, but the military junta asked the Wagner Group to move in after relations with France soured.
(注:ワグナーグループはロシアの民間軍事会社。各国の紛争に傭兵として介入している)

(2022年6月1日 水曜日)