ビッグマック指数

世界の物価(あるいは実効為替レートと言ってもいい)をマクドナルドのビッグマックの価格を使って比較しようというのがビッグマック指数だ。
2020年の指数が以下に示されているので参照されたい。https://ecodb.net/ranking/bigmac_index.html

アメリカがベンチマークになる。一個5.71 ドルの値段がついており、107.23円で換算すると、613円になる。
日本では一個390円。ドルに@107.23で換算すると3.64ドルになる。アメリカでの価格5,71ドルと比べると36.3%も安い。この-36.3というのがビッグマック指数(BMI)だ。日本のBMIは-36.3である。

2020年で見るとアメリカよりビッグマックの価格が割高な(つまりBMIがプラスの)国は3か国しかない。

1位スイス+20.94、2位レバノン+4,24、3位スウェーデン+0.80だ。
国家破綻しているレバノンを除き、いかにも物価の高そうな国々だ。

アジア圏では、14位シンガポール4.25ドル、15位タイ4.08ドル、20位韓国3.75ドル、そして日本は25位3.64ドルになる。さらに、37位中国3.10ドル、39位フィリピン2.87ドル、41位ベトナム2.85ドル、と続く。

日本の価格の安さには驚く。このBM の価格は労働者の収入に比べてどんな水準であろうか。

現在東京都の最低時給は1018円だから、東京の労働者は一時間働くと2.6個のビッグマックを食べることができる。
こうした最低賃金とビッグマックの値段を比較すると以下のようになる。
一時間働いていくつBMが食べられるか
日本(東京)    2.6
韓国       1.2
中国       0.8
ベトナム              0.4
ニューヨーク州  2.0
スイス          1.9

デフレ傾向を脱していない日本は、ばかばかしいほど暮らしやすい国のようだ。

消費者の皆さん:デフレ脱却を目指して、アメリカ並みに一個613円のビッグマックを食べる決心は出来ていますか?

経営者の皆さん:自分の商品のValueに自信を持っていますか?価格引き下げ競争から、Valueを提供し適切な価格を請求する方向へ舵を切ることは可能ですか?

(2020.8.16)

日航機墜落から35年

昭和60年(1985年)8月12日に起きた日本航空123便墜落から35年経った。8月には粛然たる気持ちになる日が多くあるが、自分自身が実感を持てるのはこの事件だけだ。

【歴史的な事故】
それは歴史的な大事故だった。
・墜落するはずがないと信じられていた日本航空(のジャンボ機)が520人の死者を出す航空史上最悪の事故を起こした。
・多くのビジネスマンが働き盛りの命を落とした。
・驚くべきことに4人の生存者がいた。救出活動が早ければもっと多くの命を救えたかもしれない。
その後、事故調査報告書が公表されたが、一読しても、誰のどの行為が事故に結びついたのか、事故原因が判然としない。

【戦後の折り返し点】
敗戦から75年、日航機事故から35年。とすれば
この事故は戦後日本の折り返し地点で起きた事故と見ることも出来る。

1975年ころから言われだした「一億総中流」という言葉に影が差し始めた頃ではなかろうか?自分が中流だと思う人が90%、上・下流は合計10%という意識に変化が出始めたころだと思う。

円高の進展、日経平均の上昇基調、地価の上昇により、上流階級はよりリッチに、中流から下流に滑り落ちる人が出てくる社会情勢だった。地価と株価の上昇は1989年末のバブル破裂まで続き、社会の分断は広まった。

エズラ・ボーゲルのJapan As Number 1が出されたのが1979年。日本は経済面のみに感心が行き浮かれていた。本来、国力の上昇期に解決しておくべき、韓国、中国、ロシアとの歴史問題・領土問題への真摯な取り組みが出来なかった。

【安定した雇用環境の消滅】
フリーターという言葉は1986年に朝日新聞がフリーアルバイターという言葉を使い始めてから広まった(wikipediaより)。バブル期には、求人難のコンビニなどで自分の好きなように働く今風の若者の働き方だととらえられていた。

しかし、バブル崩壊後の就職氷河期を経て、現在、非正規雇用が就業者の37%を占める不安定な日本になるとはそのころ誰が予想しただろうか。

【大企業はつぶれない神話の崩壊】
事故を起こした日本航空が不満経営で2010年に経営破綻するのは事故の25年後だ。

1997の金融危機で、山一証券や北海道拓殖銀行がつぶれたが、これは事故の12年後に過ぎない。2000年代初頭には、金融庁による金融機関の不良資産半減の掛け声の下、多くの大企業が倒産した。

現在でも大企業の人件費圧縮圧力は強く、フルタイマーでも明日の雇用はわからない状況になっている。

【高齢者人口の増加】
日航機事故で多くの働き盛りの人を失ったと書いた。人口統計を見るとそれもそのはずで、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は1985年には12.5%。2020年の推計は37%である。

日航機墜落事故は航空機事故としても重大だが、戦後の歴史の変換点と見てもとても重大だとご理解いただけるだろう。

(2020.8.15)

Glass Ceiling

女性が社会の階段を上がろうとするとガラスの天井があり頭を押さえられそれ以上上昇できない。それを指す言葉がGlass Ceiling だ。

バイデン大統領候補が副大統領候補に選んだ Kamala Harrisはガラスの天井を突破してきた女性だ。

父親はジャマイカから、母親はインドからの移民だ。
大学は黒人大学で有名なハワード大学へ進み、その後、カルフォルニア大学のHastings College of Lawを卒業し弁護士になった。

この大学院は全米でも中位の学校で、彼女は特別成績優秀というわけでもない。その後、地方の司法局を皮切りに、2003年にはサンフランシスコ市の、2010年にはカリフォルニア州の司法長官に就任している。
さらに2016年にカリフォルニア選出の上院議員に当選している。

この経歴を見ると、とても職業の選択が上手で、政治家に向いた人のようだ。
演説はとても上手で説得力のある話し方だ。ヒラリー・クリントンのように頭の良さが鼻につく感じは(いまのところは)無い。

もし、今年バイデンがトランプを破って大統領になっても、80歳を超える二期目は無く、普通であれば副大統領の彼女が大統領候補になるのが妥当だ。
バイデンが今年トランプに敗れても、次回大統領選で民主党の候補に選ばれる可能性が高いだろう。

こうしてみると、今年の大統領選挙の結果がどうなろうとも、2024年には米国のガラスの天井の最終段階を突破する女性を世界は見ることになりそうだ。

(2020.8.14)

国際化して勝つということ

グローバル経済が進展した新自由主義の時代には、国際化は善と単純に信じられてきた。

我が国企業の場合、国内市場がそこそこ大きいので、日本市場に軸足を置いた国際化であった。国内市場が小さい韓国や台湾企業の国際化とは大きく異なる。日本企業に体力があった時代は、国内市場を軸にして、それに塩コショウで味付けして海外市場に対応してきた。こうしたおっとり刀ではもう勝てないのは明らかになった。

とはいっても、市場への取り組み方はマーケティング問題であり、解決は比較的容易だ。
困難なのは人材・経営陣の国際化だ。

売上の過半を海外で稼ぐ企業でも、役員の人員構成の多様化は進まず、外国人を取締役に迎える企業はとても少ない。
外国人が取締役に多い(多かった)のは、カルロス・ゴーンがCEOをしていた時の日産とか、海外の大型買収を行った武田や日本板硝子等、指折り数えるほどであろう。
我が国の商社や金融機関は経営陣が国際化していない典型だ。

筆者が金融機関に居たときは、売り上げや収益のたらずまいは、国際部門や市場部門で(根拠もなく)数字をかさ上げしていた。こんなことは日本人が経営陣を固めている企業でこそできる数字合わせの悪しき実例だ。

これから海外展開を本当に考える企業は、経営能力があり、数か国語が操れ、ITにも精通した経営層(できれば日本人から始める)を揃えなければ話にならない。そして、その人たちが企業理念を熱く説き、賛同する優秀な外国人マネージャーが集まり、わいわいがやがや議論して、新しい戦略がふつふつと湧いてくる会社。そうならないと海外のトップ企業に対抗して勝ち抜いて行けない。

(2020.8.11)

コロナ後の日本経済

コロナ禍から脱する見込みもないが、一段落した後はどのような状況になっているのか年末ぐらいまでを見通してみたい。

まず、雇用は大きな調整が起きる。失業者が増大しつつあり今後も増大するだろう。
米国のように失業保険2000万人という極端な話にはなっていないが、日本は、何事も「ハンドルの遊びが多い」社会システムで、調整が表面化するとその影響は大きく長く続くのが経験則だ。
非熟練若年層労働力の受け皿になっていた、飲食、コンビニ、配送といった職種が厳しい状況にある。

次に、金融が心配だ。
コロナ禍への対応策として、無担保無保証の長期融資を金融機関が積極的に取り組んでいるが不良債権化するのは間違いない。
日本の金融機関は国際的には強固な財務基盤を有しているが、政策的に不良資産の積み上げを強いられ、一方、成長に向けた資金需要ニーズは非常に弱い。
このような状況では金融機関の経営が立ち行かなくなる恐れが大だ。

最後に、経済全体だ。
2020年4-6月期のGDPの公表はまだだが、米国並みの前年比-30%はありうるだろう。民間調査機関の推定では日本の2020年のGDP予測は前年比-5.2%だ。

GDPの公式 GDP=消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)でどこがどう変化するのか?
投資は、企業の先行き慎重姿勢を考えれば良くて前年比0%。輸出・輸入も国際貿易の先行き不透明で0%。
政府支出は、第一次補正予算で25兆円、第二次で33兆円。真水部分は合計88兆円ある。88/554=+15.9%
そうすると、全体で-5.2%を前提とすると、消費の落ち込みは-21.1%まではカバーできる。

この辺は読者の皆さんに考えていただきたい。コロナ禍で消費はどうなっていますか?
外食は非常に減ったし、衣服や嗜好品の消費も減っている。筆者の実感では20-30%は支出が減っているが。。GDPの減少は民間調査機関の-5,2%で済むのだろうか。10%は落ち込みそうだ。

GDPが10%落ち込むということは、全国民一人当たりの所得が10%
落ち込むのと同意なので、笑い事ではない状況になる。近い未来に。

この間、政府の財政支出と日銀の買い支えで株式市場は好調で、株式運用をしている富裕層は潤っている。公務員や大企業従業員といった雇用と賃金が守られている層と、給与が下がり解雇に怯える層の、二層化が一層あらわになると思われる。

社会の不安定化も大いに心配だ。

(2020.8.10)