リモート授業の大学生

今日の昼のワイドショー番組で、立命館大学の新入生にアンケートしたら、4分の1が休学を考え、10分の1が退学を考えているという結果が出たそうな。

入学以来実際の授業が無く、授業はすべてリモートで行われ、予想していた大学生活とは大きくかけ離れているのが理由らしい。コストに見合ったリターンが得られていないのも大きな理由のようだ。

大学にも学生にも問題がありそうだ。

大学は何故、少しでも実際の集合授業を始めないのだろうか。コロナがうつるのを防ぐため、というのは言い訳に過ぎるのではないか。新型ウィルスの感染力はやや強いものの、適切な予防手段を講じ、狭い場所で口角泡を飛ばしたりせず、ものにペタペタ触ったりせず、触った手を眼、鼻、口に持ってこなければ感染は防げるというのが専門家の共通の見方だ。

通常の授業であれば半期15コマのうち5コマは実際に教室での授業にするとか、ゼミは8コマを実開催するとか、ルールの決め方の問題ではないか。教室が過密にならない時間割の決定も大学の裁量で可能だろう。

サークル活動も大学が音頭をとって、希望を持つ学生のマッチングが出来るはずだ。在学生にやり方を考えさせれば若い頭脳が柔軟なやり方を考えるだろう。

今は世界中の大学の授業をオンラインで受講することが出来る。ハーバードでもエールでもMITでも公開講座があり、単位をくれる講座もある。
学生は、世界の一流の大学が提供する講座を受講し、大学に単位として認定してもらうように掛け合うべきだ。このような要求が大きくなれば大学も動かざるを得ない。

インターパーソナルなスキルは実際の人間の触れ合いを通じなければ磨くことが出来ない要素が多い。ここは実学習で体得しよう。知識は自分の大学にこだわらず世界に目を広げてみよう。

コロナ下の大学生活は大変だろうが、工夫と努力で道が開ける部分もかなりあるのではないか。

(2020.8.21)

ストックデールの逆説

Harvard Business Schoolのニューズレターでコロナ禍の先の見えない状況をどう耐えてゆくかのヒントとしてストックデールの逆説(Stockdale Paradox)が紹介されていた。

私は聞いたことのない概念だったので紹介したい。

ジェームス・ストックデールは海軍のパイロットとしてベトナム戦争に参加。撃墜され7年半ものあいだ北ベトナムの捕虜収容所で拷問に耐え生還した。

彼はその秘訣を以下のように話している。
This is a very important lesson. You must never confuse faith that you will prevail in the end—which you can never afford to lose—with the discipline to confront the most brutal facts of your current reality, whatever they might be.
「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない」
この言葉は、ジェームズ・C・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」で紹介され人口に膾炙するようになった。

「わたしたちが置かれている深刻な現実を受け入れつつ、明るい将来を信じる」というのが結論だ。

ここまで書いてきて、コレハ一体逆説であろうかと考え及ぶに至った。人の仕事の進め方は多かれ少なかれそのようなものだと思われるのだが。

(2020.8.20)

Sleepy Joe

8月18日、民主党の全国大会で大統領候補にジョー・バイデンが指名された。20日に受諾演説が予定されている。

トランプ陣営は反バイデン・キャンペーンを大々的に始めているがその一つはバイデンの判断力を疑わせるビデオだ。数年前と現在のバイデンを対比して映しているが、現在のバイデンは言い間違えが多く、しばしば言葉に詰まることが映し出されている。ビデオが示唆しているのは、バイデンは認知症だということだ。

キャンペーンの間に、バイデンは、自分の奥さんと娘を取り違えることがあったが、ご愛敬だと思われていた。今になってみると本当に区別がつかなかったのだろう。

幸いなことに民主党大会はリモートで行われ、バイデンが多くの人たちの前で当意即妙にコメントをする必要はなかった。大統領候補指名の受諾演説は原稿を読むので何とか乗り切れそうだ。

バイデンが選挙運動中、表に出てこなかったのと対照的にトランプは地方での集会に積極的に出向いている。自分の健康と判断力をアピールする戦術だ。

8月初めまで2桁以上の支持率の差があり、バイデンの勝利が見込まれていたが、11月3日まではまだ2か月半。バイデンの健康問題が注目されると、トランプに米国民の支持が大きく傾くことが見込まれる。

(2020.8.19)

30歳からの希望退職募集

武田薬品工業で、30歳からの希望退職を募集するそうだ。日本の製薬業界最大手企業の決断は驚きを以って受け取られている。

多分理由が二つある。

一つ目は、2014年にCEOについたクリストフ・ウェバーが果断だということだろう。これまでも希望退職を募る日本企業はあったが、対象は最年少で40歳の社員までだった。今回は、30歳に大きく引き下げられた。
会社の残って貢献できる人かどうかは30歳までには、見極められる。武田に合わない人はなるべく若い時代に再チャレンジの機会が与えられるほうが良い。というウェバー社長の考えがベースになっていると思われる。

二つ目は、希望退職に関する退職手当は、特別損失として認識される点だ。
武田の役員に対するインセンティブ・プランを見ると、業績の評価基準として、営業CF, EPS, TSRといった指標が出てくる。
今回の処置で、一時的な退職金支払損失が発生するが、会計上は特別損失であり、営業損失ではない。従って営業利益は下がらない。果断な処置が市場で評価されれば株価は上がる可能性が高い。

ついでに加えると、アイルランドの製薬会社シャイアーの買収に係る約4兆円ののれんは、シャイアーの業績次第で減損の恐れがあるが、のれんの減損が発生したとしても特別損失で営業損失ではない。

繰り返しになるが、今回の希望退職の発表は外国人CEOによる果断な決断だ。同時にその決断を行わせたのは、退職費用が特別損失になるために、彼の賞与にネガティブな影響を与えない、というのも重要な要素だ。

(2020.8.18)

夏を乗り切る

現在滞在している那須は、一般的には避暑地のイメージがあるが、酷暑でエアコンが必要だと思い始めた。

日本の家は夏向きか冬向きか:
ずいぶん前に読んだ本に、明治初期に日本に来たお雇い外国人が耐えられなかったのは冬の寒さだと書かれていた記憶がある。
広い廊下、障子戸やふすま、木の戸、いずれも夏の暑さをしのぐためにできているが、冬は寒気をまるで防ぐことが出来ない。
当時の日本人は冬の寒さより夏の暑さに弱かったのかもしれなし。暑さをしのぐために、廊下、障子戸、ふすま、木の戸が工夫された。これは、気候への消極的な対応だ。

気候への積極的対応:
「部屋の中の空気の温度を自分の好きなレベルにしてしまえばよい」という考えは、気候への積極的な対応で有ろう。では、エアコンは誰が発明したのだろうか。世界初の電気式のエアコンは1902年にシラキュースのウィリス・キャリアーが印刷工場の温度と湿度を調整するために使用し始めたのが始まりだという。
1930年にキャリアは自分の会社を創業。その後世界最大の空調会社へと成長して行く。

工夫と改善で暑さに耐える日本流に比べ、プレーしているグランドの状況を変えてしまおうと言うのは、積極的な取り組みだ。

コロナカ禍で、今までの経営のやり方の継続では、じり貧に陥る可能性が高い。与えられた環境を所与とするのではなく、積極的に取り換える発想も必要だ。

(2020.8.18)