科学論文第4位を憂える

今朝の日経新聞の一面トップは「中国、科学論文数で首位」という記事だった。ちなみに日本は、中国、米国、ドイツについで4位というこだ。(論文数は、中国306千本、米国 281千本、ドイツ 67千本、日本 65千本であり、日本は中国の5分の1)

深刻な状態だ。
日本のノーベル賞受賞は30年前の研究成果だと言われる。日経の記事によれば、2005年に中国の科学論文数は日本を上回ったので、今後はノーベル賞受賞者で中国人研究者が増加して行くことだろう。

日本の大学の世界ランキングでは東大や京大が、米英の一流半というレベルの大学の後塵を拝している。英語を使った国際化の遅れから点数が下がっているのは明らかだ。東大や京大の研究レベルは世界の超一流レバルだと信じているが、世界的な評価は評価であり改善するほうが良いのは自明だ。改善するポイントも絞られる。

国を挙げて自然科学教育に力を入れるべきで、そのためには財政支出が重要だ。自然科学を志す優秀な若者を育てるために、一流の研究者を育成し集積するために、お金が必要だ。日本の研究者の報酬レベルが世界的にお話にならないほど低いのを改善しなければ、国内からも海外からも日本で研究しようという優秀な人材を集めることは出来ない。

コロナ禍対応で、政府は11兆円をこえる「予備費」を補正予算で計上しそのうちの1兆円以上の支出が決定されたという報道があった。11兆円のすべてを一時的な経済対策に使ったとしてもGDPの押し上げ効果は2%に過ぎない。

短期的なコロナ対策はもちろん重要だが、越後長岡藩の「米百俵」の精神を思い出したい。日本の将来の競争力を確保する政策に資金を投入してもらいたいものだ。

(2020.8.8)

広島から75年

8月は日本人が厳粛な気持ちになる月だ。
・広島の日 8月6日
・長崎の日 8月9日
(ソ連が日ソ平和条約を破棄し参戦した日でもある)
・終戦の日 8月15日

8月6日は無辜の市民が30万人も一発の原子爆弾で命を奪われたなんとも割り切れない気持ちを抑えきれない日だ。
戦争中だったからと言って非戦闘員の市民を虐殺する権利が交戦国にあったとは到底考えられないし、国防の任を全く果たせず、無謀な戦いをとめることも出来なかった政府の責任は追及しても仕切れるものではない。

日本の右翼は「極東軍事裁判史観」が日本人の精神構造を歪めたと言い、左翼は「天皇制が温存され旧体制が日本に残置された」と言う。
筆者個人としては、日本を破局に導き多くの人命を失わせた当時の指導者に対し、日本国民自らがその責任を追及する機会が永久に失われたことが一番残念なことだ。

さて、今日は核兵器の話をしたい。
オバマ前大統領が核兵器廃絶を目指すと演説しただけでノーベル平和賞を受賞したが、現状はどうなっているのか。

現在世界で配備されている核兵器は以下のとおり。
ロシア   6375基
米国    5800
中国    320
フランス  290
英国    215
パキスタン 160
インド   150
イスラエル 90
北朝鮮   30-40

戦略核兵器削減条約(START)でロシア、米国は其々1500基程度まで核兵器を減らすとして配備核兵器の数は漸減しているが、一方で、両国とも核兵器の近代化に努めており、近中距離核兵器の開発はあらたに進めている。

米ソが圧倒的多数の核兵器を保有しているが、次に来る中国は両国と足並みをそろえて核兵器を削減する意図はない。米ソが中国と同レベルまで核兵器を削減したら、あるいは中国が米ソと同レベルまで核兵器を増やしたら、共通の土俵に乗るというのが中国のスタンスだ。

パキスタン以下の国々は自国の防衛をお題目に核兵器の削減には全く乗り気ではない。

唯一の被爆国を標榜する我が国が「核兵器禁止条約」に参加していないことも理解できない。

国際政治の現実から、広島の日から75年経った今も核兵器の廃絶の道は厳しい。

(2020.8.6)

何のために働くのか

丹羽宇一郎という経営者を尊敬している。

伊藤忠商事を倒産の危機から救い、会長職をあっさり退き、乞われて中国大使を引き受け、弱腰だなんだとのそしりを物ともせず信念を貫いた経営者だ。

伊藤忠の社長時代は朝の通勤に電車を使い、自家用車はカローラ、服装にも金をかけず、贅沢はせず、余ったお金は読書に費やしたという。

著書がたくさんあるが、「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」という講演録はとても刺激的だ。
・資源の無い日本にあるのは人的資源だけだ。それが働かなくなっては国の繁栄はあり得ない。
・経営は、清く正しく美しく、あるべし。
・年収800万円をすぎると報酬増が幸せをもたらさない。だから金の亡者になってはいけない。
・同じ井戸の水を飲み続けるのでは進歩がない。海外へ出たり井戸を変えるべきだ。
という主張が繰りかえし述べられている。

当方、読書に金と時間の糸目はつけないが、それ以外は丹羽さんの足元にも及ばない。

企業経営の課題として以下が挙げられるだろう。
・企業の生産性を上げるにはどうすれば良いか。
・従業員が働くインセンティブは、報酬か、やりがいか、人間関係か。
・上司が部下を育てるにはどうすれば良いか。
・働く環境をどう変化させるか。
・清く、正しく、美しい企業を造るガバナンスはどうあるべきか。

丹羽さん流に考えるといろいろとヒントが湧いてくる(かもしれない)。

(2020.8.4)

尖閣問題

尖閣に中国の漁船を多数差し向けるという通知が中国からあったというニュースを聞いた。

中国は、南シナ海でも東シナ海でもブータンでもカシミールでも香港でも、自国の核心的利益は決して損なわないと明言している。損なわないのは結構だとしても、それが他国の領土・領海を堂々と侵略するものだと、ちょっと待ってくれ、と言いたくなる。コロナウィルスの原因を調べるという至極まっとうな要求をしているオーストラリアを恫喝したり、5G基地局でハーウェイを使わないことを決めた英国も恫喝しようとしている。

「あんたのやり方はまるで大東亜戦争前の日本とそっくりだ。夜郎自大がやりすぎると下手をうつぜよ」と忠告したくなる。

5GをめぐるHuaweiの排除や動画配信のTik Tokの排除といった
トランプ大統領の対応はいかにも自国中心で大人げないと思ってきたが、ここまで中国が自己中心で覇権主義的な言動をあらわにしてくるとそうも言っていられない感じになる。

兵法に「遠交近攻」というのがある。
a policy of making friends of distant countries while trying to conquer one’s neighborsとでも訳すのだろうか。

日本の近国との関係はいずれも問題含みだ。特に中国、韓国、ロシアとの付き合い方は難しい。基本は「近攻策」であろう。

特に中国への対応は、米国、インド、オーストラリア、英国、ASEAN諸国との「遠交策」をあらゆる機会を通じで緊密化するべきだ。

領土問題の解決は、平和的なものであることが望ましいのはもちろんだが、武力衝突まで考えた政策オプションを準備し対応して行くべきだ。

以前、映画「空母いぶき」を見て感動したことが有る。専守防衛を義務付けられた自衛隊がどう戦うかが描かれていた。我が国の現在の政府に国家の危機に対する対応能力があるかどうか疑わしい。
国益を損なわない毅然として対応を期待したい。

(2020.8.3)

照ノ富士復活優勝

2020年7月場所は照ノ富士が13勝2敗で優勝した。

照ノ富士は2015年7月に大関昇進、その後、膝の怪我と糖尿病のため2017年11月に序二段まで陥落した。怪我と病気を克服して、2020年7月に幕内に復帰。その場所で優勝を果たした。

興味深いことに、大関陥落から最低位まで9場所かかり、最低位から再入幕まで9場所かかっている。

年齢はまだ28才であり、怪我や病気次第では横綱再挑戦も十分可能だと思われるので頑張ってもらいたい。
今場所優勝を争った、朝の山、御嶽海には一層の精進を期待したい。

いま幕内には、栃ノ心、高安、琴奨菊の3名の大関経験者がひしめいている。彼らにももう一花咲かせてほしい。

(2020.8.2)