「東京都同情塔」を読んで

 文芸春秋の芥川賞発表号を購入した。受賞作の「東京都同情塔」を読みたかったからだ。評価は高いようだ。エドワード・ホッパー風のビルの絵が描かれた新刊本は書店で平積みになっている。

 期待を以って読み始めたが、最初の方に出てくる主人公がレイプされたかされなかったかと言う議論の部分で引っかかった。この話はその後の小説の展開に必要なのだろうか。私にはあざといプロットにしか読めなかった。

 その後、日本語と西洋語による言葉の定義についての議論が続くが、ここも共感できなかった。副主人公として出てくる男性の役割にも理解が及ばなかった。

 一応最後まで読んだが、ここ数年芥川賞受賞作に感心したことは無い。もうフィクションに感動できないほど感性が劣化してしまったのだろうか。

2024年3月9日 土曜日