福島原発とミッドウェー海戦

 本当に久しぶりに、ブログを更新しました。3.11以降の動きにいろいろと感じるところがあり、情報発信ができるかなと思った次第です。

 現在私はマレーシアの政府系投資会社の日本の代表をしていますが、原発の件ではマレーシア本社も日本の状況を大いに心配しながら注視している状況です。日本からの情報発信の重要さを認識し、英語での発信方法も検討しています。

 これから何回かリスク・マネジメントの観点で最近考えていることを述べてみたいと思っています。今回はまず、原発の事故について感じたことを述べます。事故の理由については原子力の専門家が多くの意見を述べています。それらの多くは「あるべき論」であったり「後知恵論」が多いように思えます。私は、少し見方を変えて、リスク・マネジメントの観点から事件について述べてみたいと思います。

リスク・マネジメントの要諦(その1)「全部の卵を一つの篭に入れるな」                    英語ではDon’t put all your eggs in one basket.                                      この格言はアメリカの投資の本の第一ページに書かれています。分散投資の重要性を述べたものですが、今回のような巨大な天災と人災を防ぐうえで、もっとも大切な考えと思われます。

詳細はある雑誌に投稿した以下の拙文を参照してください。

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福島原発とミッドウェイ海戦 

太平洋戦争の歴史を読んでいて、いつも不愉快になるのがミッドウェイ海戦だ。開戦以来不敗の南雲長官率いる機動部隊は一挙に四隻の大型空母を失った。敗戦の理由は様々に分析されている。曰く、「暗号が解読されていたので仕方がなかった」「戦略目的がミッドウェイ島の攻略か、敵機動部隊の撃滅か徹底されていなかった」「装着する爆弾の種類を変更する5分間が命取りになった」等々である。

私がいつも残念に思うのは日本海軍の輪形陣だ。輪形陣とは、艦隊の中心に空母を置き、そのまわりを巡洋艦や駆逐艦といった護衛艦艇で防御する方法である。この陣形を最初に考えたのは米海軍で、日本海軍も大戦前には取り入れていた。ただ、日本の輪形陣と米国の輪形陣には大きな違いがあった。日本海軍は四隻の空母を中心に集め、そのまわりを護衛艦艇で囲む。米国海軍は、空母一隻ごとにそのまわりを護衛艦艇で囲む形をとった(防御重視)。日本海軍が、中心に空母を集めた理由は、各空母から発艦した飛行機が短時間で編隊を組みやすいから(防御より攻撃を重視:効率面での制約)、航空母艦の距離が離れると母艦間、母艦と艦載機間の通信ができない(日本の通信技術の劣位・条件面での制約)とされている。米艦載機の爆撃を受けた日本艦隊は瞬時に三隻の空母を失った。一隻残り奮戦した「飛龍」は、雲下にいたため、当初の被弾を免れたと言われる。

日本の原発には用地難があり、狭い敷地に、効率的に設備を作らなければならないと言われてきた。これは、日本海軍の「効率面・条件面での制約」で空母をまとめて中心に置くという論理と一致する。

福島原発では14号機が一度に被災した。56号機は少し離れているだけで最悪の事態は免れている。ミッドウェイは日本が敗戦への坂道を転げ落ちてゆくターニングポイントになった。福島原発がそうならないことを切に祈る。

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