いつも金利や市場の動きに一喜一憂しているのだが、日本の古典に知恵を求めるのも一考と思われ、井原西鶴の「日本永代蔵」を読んでみた。
永代に蔵を残すようなお金持ちはどうやってできるのか、或いは築いた財産をどのように失ってしますのか、示唆に富んだ読み物だ。巻1から巻6まであり其々5つの話が盛り込まれているので全体で30の、まあ説話で構成されている印象だ。
巻3の最初の話が「煎じやう常とは変る問薬」というタイトルの、お金持ちになるなるための薬を詳述しているお話だ。
以下現代語に訳す。
『長者丸(ちょうじゃがん)という妙薬の配合を教えよう。
朝起(早起き) 5両(薬の単位で、貨幣ではない)
家職(家の仕事) 20両
夜詰(夜勤) 8両
始末(節約) 10両
達者(健康) 7両
この50両を粉末にして測り間違えないように調合して、朝夕吞み込めば、長者にならないものはいない。
しかしながら、以下の毒を絶たなければならない。
〇美食・淫乱・絹物を普段着
〇内儀を乗物全盛、娘に琴・歌歌留多
〇息子に万の打囃(打楽器の芸事)
〇鞠・揚弓・香会・連俳
〇座敷普請・茶の湯数寄
〇花見・舟遊び・日風呂入り
〇夜歩き・博打・碁・双六
〇町人の居合・兵法
〇物参詣・後生心
〇諸事の扱い・請判(調停人、保証人になること)
〇新田の訴訟事・金山の仲間入り(投機的なビジネス)
〇食酒・煙草好き・心当てなしの京上り(用の無い京旅行)
〇勧進相撲の銀本・奉加帳の肝煎
〇家業の外の小細工・金の放し目貫(刀の柄の飾をひけらかす)
〇役者に見知られ、揚屋に近付き
〇8より高い借銀(年利9分6厘=9.6%より高い借入)
これらの毒を心して避けなければ長者にはなれない。』
長者丸の一番大きな要素は家業だ。誠実に商売に励むのが一番大事だと言う教訓だ。次が倹約だ。
毒は、贅沢や浪費が上がっている。どれも楽しそうなのだが、金持ちになるには我慢しなければいけないことだ。金持ちになっても油断できない。日本永代蔵の3分の1は、毒にうつつを抜かして身代を潰す話なのだから。
2023年7月16日 日曜日