時々珠玉の随筆を読み感動することがある。
今日(2023年1月21日)の日経朝刊の文化面、「1963年の還暦」はそのような随筆だった。書いたのは佐藤良明東大名誉教授にしてポピュラー音楽の研究家だ。
まず、1963年が想い出される。ビートルズに少女たちが熱狂したのも、キング牧師の人種差別反対のワシントン大行進と有名な演説も、ソ連の女性飛行士による「私はカモメ」も、米ソ首脳間の直通電話も、坂本九の「スキヤキ」が全米1位になったのも、みなこの年の出来事だと説明される。
その年に12歳だった私はすべての出来事が鮮明に記憶に残っている。前年の1962年にはキューバ危機があり、翌年の1984年にはケネディ大統領が暗殺された。11月23日、日米を結ぶ初の衛星中継の最初の映像がケネディの暗殺事件だったからその衝撃は大きかった。
今や1963年から60年が経過し思い出が押し寄せるが、それにどのように抗したらよいのかと著者は問題提起する。
佐藤の文章は以下でくくられている。
「奢りを捨てることだろう。我々の周りは萎びた自由と、太った不平等で一杯になった。老化したのだ。還暦を迎えた1963年よ、君もワークアウトが必要である。」
佐藤氏は英文法の本も何冊か著しているようだ。一度読んでみると啓発されるかもしれない。
2023年1月21日 土曜日