今日の一言
「ウィトコフ特使」
元不動産開発業者で現在「和平交渉役」とされるスティーブ・ウィトコフが面白い動きをしている。
●彼の動き(時系列でまとめる)
– 10月14日
ウィトコフが、ロシア高官ユーリ・ウシャコフと会談。
→ ウィトコフは「プーチンがトランプに電話すべき」と助言し、会話内容まで提案(トランプをガザ和平で果たした役割を称賛し、ロシアが和平を望んでいると伝えるよう指示)。
– 10月16日
プーチンが実際にトランプへ電話。通話は2時間以上続き、トランプは「生産的だった」と発言。ブダペストでの会談が検討されたが実現せず。
– 10月17日
トランプがワシントンでゼレンスキー大統領と会談。
→ トランプは事前にはウクライナ軍へのトマホーク巡航ミサイル売却を示唆していたが、電話後は提供せず。代わりに感情的になり、ウクライナにドネツク州の領土放棄を迫る。これはロシアの長年の要求に沿うもの。
●ウィトコフの動きがもたらしたもの
– ウィトコフの助言によりプーチンがトランプの姿勢を変え、ウクライナへの武器供与が阻止された可能性がある。
– その後、ウィトコフはクレムリン関係者と共に「28項目の和平案」を提示。しかしこれは一時停戦を装い、将来のロシア再侵攻を容易にする内容だった。
– ウィトコフは外交経験がなく、プーチンへの敬意の念やロシアとのビジネス利害が背景にある可能性がある。実際にエネルギーや資源、AI、北極のレアメタル採掘など米国による投資の話もロシア側と進めていた。
●要するに
ウィトコフの行動は和平促進ではなく、ロシアの立場を強め、戦争を長引かせている。彼の介入はウクライナ人の犠牲と欧州の安全保障危機を拡大させるものであり、通常の米国政権であれば即座に解任されるはずだが、現政権ではそうはなっていない。
●不動産屋の習性
忘れてはいけないのが、彼は(トランプも)不動産屋だということだ。売り手と買い手から手数料をもらえる日本とは異なり、米国の不動産屋は買い手からしか手数料をもらえない。だからディールを成立させるためには買い手の歓心を買うために何でもするのだ。
売り手(ウクライナ)には「こんなに良い条件はありませんから早く決めてください」と言って、売り手が条件を呑めば儲けものという感覚だ。彼を、自分たちの代弁者として見るべきではない。ロシアに利益のあるディールをまとめようとするロシアの代弁者とみるべきなのだ。
ニューヨークタイムズ電子版より
1.AIに関する1兆ドルの疑問
2014年に広まった『The Second Machine Age』という本は、AIが超生産性と豊かさをもたらすユートピア的未来像が描かれていた。 しかし現実には、AIが経済に過度に支配的になる不安と、人間の仕事を本当に置き換えてしまう可能性への懸念が共存している。
– 技術革命に伴う不安
過去の技術革新同様、移行期には雇用喪失や企業倒産が起こり、不安が広がる。問題はその後に何が残るかである。
– AIバブルの可能性
現在のAIブームは「1兆ドル規模の疑問」と言え経済を支えているが、方向性は不透明。利益を出せていない企業も多く、評価額の正当性が問われている。
– 大手企業の優位性
Google、Amazon、Microsoft、MetaはAI関連以外の事業で巨額の利益を上げつつ、AI開発に必要な膨大な計算資源を提供し、他社からの需要で収益を拡大している。
– バブル崩壊の影響
崩壊すれば、ドットコムバブルのように多くの企業が消滅する可能性がある。ただし、2008年の金融危機のような全体経済への深刻な打撃になるかは不明だ。投資家の過剰な借入による「システミックリスク」も懸念されている。
– 成功と失敗の分岐
OpenAIのように数年以内に数百億ドル規模の収益を見込む企業もあるが、開発コストが非常に高く、競争は激しい。勝者と敗者が分かれる構図になる。
– 鉄道ブームとの類似
19世紀の鉄道建設ラッシュのように、現在は各社が巨大データセンターを競って建設している。供給過剰が生じれば、長期的には多くの敗者を生む可能性がある。
【コメント】
この記事は、AIブームが「ユートピアへの道」か「バブル崩壊」かという両極の可能性を抱えつつ、歴史的な技術革命やバブルとの比較を通じて、その不確実性とリスクを描いている。
ボストンコンサルティンググループの「成長市場シェアマトリクス」で考えるとわかりやすい。今「問題児」にある分野は、成長力が大きいが絶え間ない追加資金の投入が必要だ。競争で勝てばシェアが高まり「スター」の地位を占めることができる。成長が一段落してキャッシュフローが生まれれば「キャッシュカウ」になり安定する。「問題児」から「スター」、そして「キャッシュカウ」への過程で息切れした多くの企業は淘汰される。
AI問題の本質はこうしたミクロの企業レベルの話ではなく、人類の生活と存続へのマクロの影響だと思うが、その点は今回は触れられていない。
2.香港大火災の生存者捜索
【記事要旨】
香港の高層マンションが、約70年ぶりの最悪の火災に見舞われた翌日、消防隊員らが住民と遺体を収容した。死者数は少なくとも83人に上った。数十人が依然として行方不明となっており、死者数はさらに増える可能性がある。
被災者の一人は、妻と二人でかろうじて炎から逃れたと語った。「誰も警告してくれなかった。警報も鳴らなかった。自力で逃げ出したんだ」
当局は、可燃性の網と発泡スチロール板が火災の燃料になった可能性があると述べている。警察は、これらの資材を設置した建設会社と関係のある3人を逮捕した。うち2人は過失致死の疑いがある。【コメント】
以前英国の高層アパートで火災があった。やはり可燃性の素材が延焼の原因になった。タワーマンションは怖い。戸建てに住んでいてよかったと思いたいが、佐賀関のようなこともある。火事は本当に怖い。
其の他の記事
・レオ14世はトルコで、教皇就任後初の外遊を開始した。日曜日には、アラブ世界最大のカトリック教徒コミュニティの本拠地であるレバノンへ向かう。
・フランスは、ロシアのウクライナ侵攻以降、軍を強化してきた他の欧州諸国に倣い、新たな兵役制度を発表した。
・米国は、ホワイトハウス近くで州兵2人が銃撃された事件に関与したとしてアフガニスタン人男性が拘束されたことを受け、アフガニスタンからの移民受け入れを一時停止した。男性はアフガニスタン戦争中、CIAの支援を受けた軍部隊に所属していた。
・ギニアビサウ軍は、大統領の側近であるホルタ・インタ将軍を新指導者に任命した。野党は、クーデターは大統領が敗北したと広く信じられている選挙後に行われたものだと主張している。
【ギニアビサウは、アフリカ大陸西部に位置する国で、北をセネガル、南東をギニアに囲まれ、西は大西洋に面しています。旧ポルトガル領ギニアであり、首都はビサウです 】
・ダニエル・ドリスコル米陸軍長官は、ウクライナ和平交渉において異例の積極的な役割を果たしている。ドリスコル長官は、ロシアが長距離ミサイルを備蓄していると欧州諸国に警告し、迅速な合意を促した。
【2024年12月の任命時の記事より:トランプ次期米大統領は4日、陸軍長官に投資家のダニエル・ドリスコル氏を指名すると発表した。ドリスコル氏は元陸軍兵で、イラクで従軍歴がある。退役後はエール大法科大学院を卒業し、投資会社で勤務したほか、バンス次期副大統領の上級顧問も務めてきた】
2025年11月28日 金曜日