金曜のニュースで、メルセデスベンツ(以下MB)が米国でのBEVの販売を中止し、約20000台の米国での生産車を米国から他国への輸出に転換するという報道があった。トランプのEVに対する税控除の廃止で、米国でのBEV販売の急減に対した処置だそうだ。
この記事を読んで驚いたのは、MBが米国で20000台ものBEVを生産し販売していたという事実だ。2024年の日本での新車販売台数は3725千台。うちBEVは60千台に過ぎない。海外メーカーで日本でBEVを生産しているところはない。
BEV 60千台の内訳をみるとさらに驚く。輸入車(テスラ、BYD等)が42千台。日産が14千台。三菱7千台。トヨタは2.5千台に過ぎないのだ。
このBEVへの取り組みの話は別の機会にしたい。
今日のテーマはMBの世界販売だ。2024年のMB乗用車の販売台数を、全世界、米国、中国、日本に分けて示す。
全世界
• 販売台数:1,983,400台(前年比3%減)
• うちBEV(純電動車):185,100台(前年比23%減)
• BEV+PHEV合計:367,600台(前年比9%減)
• ガソリン・ディーゼル車:約1,798,300台
米国
• 販売台数:324,500台(前年比9%増)
• BEV販売台数は明確な公式数値なし
• 推定:9割以上がガソリン・ディーゼル車、EV/PHEVでの大幅増も全体比率は限定的
中国
• 販売台数:683,600台(前年比7%減)
• 中国自動車市場全体のEV比率は年40%以上増
• 同ガソリン・ディーゼル車は17%減
• MBはガソリン・ディーゼル車主体、EVは増加だが割合は20%未満と推定される
日本
• 販売台数:53,195台(前年比3.8%増)
• MBでは日本での販売車のほぼすべてがガソリン・ディーゼル車 BEV比率は1–2%と推定
ということになる。
驚くのは中国の販売台数の巨大さ(日本の13倍、米国の2倍だ)とBEV比率の高さだ。MBは低いと言っても20%はBEVを販売している。
筆者がよく行くホテル・ニューオータニの駐車場では、約6割がMB、約2割がBMW、残りの2割が欧州の高級車と国産車、で99%が非BEVだ。日本の高級車はMBが席捲している印象だ。
しかし、冷静にMBの世界販売数を見ると、日本市場がMBにとって限界的な市場になりつつあるのかなと思わざるを得ない状況だ。シェアは低いし、BEVにも飛びつかないからだ。
トヨタは中国市場に新BEVを投入し再チャレンジし始めたようだ。スズキ、三菱は中国から撤退した。日本メーカーの世界戦略に思いを致す際に、MBの全世界での販売実績は多くの示唆を与えてくれる。
2025年8月3日 日曜日