消費者金融の不良資産と償却率

 前項でBNPLを取り上げたそもそもの原因は業界大手のKlarnaという会社に、とくにその償却率の低さに、興味を持っていたからだ。

 Klarna(スウェーデン発の大手Buy Now Pay Later、BNPL事業者)の直近の不良資産比率(delinquency rate)と償却率に関して、2025年Q2のデータは以下の通りだ。

 Klarnaの不良資産比率・償却率(2025年Q2)
• BNPLローン不良債権比率(delinquency rate):0.88% 前年同四半期(2024年Q2)は1.03%。
• Fair Financing(6~12カ月の分割払いローン)の不良債権比率:2.18% 前年同四半期は2.20%。
  この商品はおもに高額商品や耐久財(ホームウェア、家電等)で利用され、一般的な短期BNPLよりも不良債権比率が高くなっている。
• ローン損失率(償却率、loan loss rate)
  Klarnaの公開資料上では2024年度の「ローン損失率」として0.47%との記載があり、クレジットカード業界の標準(米国で5.2%)と比べ大きく低い特徴。
  但し、銀行業界の伝統的な損失率計算(outstanding loan残高基準)だと、Klarnaの償却率は「5.5%」となる数値も開示されており、計算式の違いで大きな差が出る。BNPLでは一時期の償却額を同時期の組成金額で割るので、新規が急増する間は償却率が低く出がちだ。

世界的なBNPL業界平均
• BNPL市場全体(グローバル)で見ると、2022年時点でデフォルト率は「2%」程度が平均水準。

参考比較
• 日本の消費者金融会社の不良債権比率は約7%、償却率は3%台前半。
• Klarnaの短期BNPLは「0.88%」、長期型Fair Financingで「2.18%」と、日本の消費者金融よりも大幅に低い。

不良資産比率、償却率が低い理由:
 Klarnaの不良債権比率や償却率は、日本の消費者金融や一般的な米国クレジットカードローンと比べても極めて低い水準。
 これは
・「少額・短期」であること、
・自動引き落としといった仕組みによる回収力の高さ、
・利用停止措置などのリスクコントロール策、
が要因と考えられている。

 この不良資産率と償却率の低さは魅力だが、一方で、米国など成長市場では損失率上昇やユーザー層(低所得の若年層)の広がりに伴うリスク拡大も指摘されている。経済の停滞期の業界の伸びと不良資産に注目してゆきたい。

2025年8月2日 土曜日