昨日の日経新聞で知って驚いた。制度の概要は以下だ。
『2025年度(令和7年度)から、多子世帯の大学等の授業料等が、所得制限なく国が定める一定額まで無償化されます。これは、文部科学省による高等教育の修学支援新制度の拡充策です。
【対象となる世帯】
扶養する子どもが3人以上いる世帯
2025年4月に入学する学生、または2025年4月時点で前年度から在学中の学生
【支援内容】
大学等の授業料・入学金が国が定める一定額まで無償化(減額)
現金支給ではなく、各学校の授業料等が減額される
【支援の要件】
扶養の基準には年齢の制限はありません
扶養されている子どものうち1人が卒業や就職などで扶養から外れると、残る兄弟も支援対象外となる可能性があります』
随分気前の良い制度だ。日本の初任給は高卒と大卒で開きがあるので、Fランクの大学でも大学を出ておいた方が賃金上は優位だ。この制度が適用されると、大学全入時代の今日ではどんな大学でも良いので大学にとりあえず入れておこうということになるだろう。勉学にいそしむ気が無くても、無償なら行っておこうと思う若者も多いだろう。
私が大学に入ったときは(1971年)国立大学の授業料は年間12000円だった。県立高校の授業料(年間36000円)より安くて、驚いた記憶がある。当時、早稲田や慶応の授業料が年間80000円だったと記憶する。大学に子供を送ろうと考える親は、生活費を切り詰めても学費は工面するのが普通で、国の支援を期待することは無かった。
無理に補助金を与えてどんな大学でも良いから全入を図る(これを家庭の所得による学歴格差をなくす手段だと野党が主張し、与党も同調している)よりも、国公立大学の授業料は低く抑え、一定の学力のある者にメリットがある制度の方がずっとまともだと思う。
特に優秀なITエンジニアが不足している現状を打破するには理系の国公立大学を国が支援し、優秀な学生が集まる制度が必要だ。欧米ではSTEM(science, technology, engineering, mathmatics)の卒業生の数を競争しているが日本はその競争に後れを取っている。
これだけ生成AIやAIエージェントが発達してくると現在の多くのホワイトカラーの労働はAIに代替されてしまうだろう。人間に残された仕事は、エッセンシャルワーカーの仕事が中心になる日がすぐそこまで来ているようだ。
高校の無償化、給食費の無償化、大学の無償化と、政府支出の大盤振る舞いだ。お金をもらって嫌な人は少ないから選挙対策のバラマキと言う面が強いだろう。
AIの発達で過剰になる大卒労働者を生み出すよりも、近未来の社会の動きを見通したもう少し賢明な政府資金の使い方に知恵を絞るべき時だ。
2025年2月9日 日曜日