世界の動き 2025年9月3日 水曜日

今日の一言
「トップ経営者の突然の辞任」
 一昨日はネスレ、昨日はサントリーのCEOが突然辞任した(解任された)ニュースで驚かされた。二つの事件の概要と、どうすれば防ぐことが出来たかを考えたい。
 ネスレの事例:倫理規範違反によるCEO解任
 2025年9月、ネスレはCEOローラン・フレイシェ氏を、部下との未申告の関係が企業倫理規範に違反したとして解任しました。これは、従業員からの内部通報を受けて外部調査が行われた結果です。同社は1年以内に2人のCEOが交代する異例の事態となり、投資家からの信頼低下や株価下落を招きました。(ロイター)
 サントリーの事例:法的問題によるCEO辞任
 同じく2025年9月、サントリーホールディングスのCEOである新浪剛史氏が、違法性が疑われるサプリメントの購入に関する警察の調査を受け、辞任しました。新浪氏は違法性を否定しましたが、企業の透明性と信頼性を重視し、自ら辞任を選択しました。(東洋経済)
 私は社外監査役を務めているが、もし自分が当該社の監査役だったとしたらこのような事件を防げただろうか。
 まず、以下の点への注意が必要だ。
 • トップの私生活・行動規範違反や倫理的リスク
 社内規範や行動基準に違反する可能性(例えば部下との未申告な恋愛関係、法令違反につながる私的行動など)がSNS等で拡散し、重大なガバナンスリスクとなり得る点。
• 企業の文化・ガバナンスへの社会的批判の高まり
 トップの行動に関する情報が外部へ漏れた際、社会やメディアが逸早く企業ガバナンスや経営陣の倫理観を批判・拡散する傾向。
• 違法性の可能性がある事案への即時対応力
 法令違反(違法サプリ疑惑等)やコンプライアンス違反が発覚した場合、会社として速やかに調査・辞任勧告・危機対策を打てる体制が求められる。
• トップの交際関係・プライベートが職務に影響を与えることへの備え。
 プライベートな行動が職務や組織運営に直結する時代になり、監査役も広い視野と多様な情報ルートを持つことが重要だと思われる。
 監査役への実務的示唆は以下だ。
• 公式な通報経路だけでなく、社内外の情報に敏感になる
• トップの行動や関係性について、組織内規範や利益相反への視点を徹底
• コンプライアンス・ガバナンス規程の運用状況の定期点検
• 外部批判・社会動向・メディア報道等を含めた危機シナリオ想定を重視
 組織の信頼維持のため、監査役は「新たな兆候や情報の拡散」にもより敏感かつ迅速に対応すべきご時世なのだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
地獄のような地下鉄駅がウクライナ戦争を語る
【記事要旨】
 モスクワで開催された大規模フェスティバルの一部には、汚れたニューヨーク地下鉄と豪華なモスクワ地下鉄を対比させる展示があり、ロシア当局はこれを通じて「ロシアは西側より豊かで秩序ある社会である」とアピールしている。これは国民の目をウクライナ戦争から逸らすだけでなく、ロシアの回復力を示し、西側の衰退や混乱を強調する広報戦略の一環である。
 実際、西側諸国では政治的混乱が目立ち、民主主義への信頼も揺らいでいる。その一方で、非西側諸国の多くはロシアに肯定的な見方を持ち、ロシアは中国やインドなどの支援を得て制裁に対抗している。結果として、アメリカや西側の影響力は低下し、プーチン大統領は国際舞台で存在感を示す一方、国内では高い生活満足度が記録されている。
 この状況は、ウクライナ戦争の停戦交渉が難航している背景とも関係しており、ロシアが「戦い続けられる」という物語を国内外に発信することに成功している。
【コメント】
 この大規模フェスティバルが何か、調べたがわからなかった。Trip Advisorで調べると、数多くの大規模イベントがモスクワで行われている。そのことに驚かされた。

その他の記事
中国:同国は本日、ミサイル、兵士、そして北朝鮮の金正恩氏やロシアのウラジーミル・プーチン氏といった指導者らによるパレードで、第二次世界大戦における日本の敗戦を記念する。
米国:判事は、トランプ政権によるロサンゼルスへの軍派遣は違法だとの判決を下した。司法省は控訴する見込みだ。
災害:アフガニスタンの地震による死者数は少なくとも1,400人に上った。スーダンでは、ダルフール地方で発生した地滑りで数百人の村人が死亡した。

イスラエル:ベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザ紛争終結に向けた包括的合意を主張していることをめぐり、政治指導部と軍指導部の間で亀裂が生じている。

2025年9月3日 水曜日

世界の動き 2025年9月2日 火曜日

今日の言葉
「天候デリバティブ」
 9月になっても暑い日が続いている。天候が自社のビジネスに不都合な状況になるのをヘッジする手段に天候デリバティブがある。
 気温などの天候指標の変動による売上などの損失を金融商品でヘッジする仕組みだ。
 例えば、アイスクリーム製造業者が冷夏(気温が低く売上が落ちるリスク)をヘッジするデリバティブ契約の場合、「一定の気温より低い期間(例:35度未満の日数)」が続くほど補償金を受け取れる設計になる。製造業者はヘッジのための手数料を払う。
具体例
• 契約で「夏の平均気温が○度未満の場合、1度下回るごとに○万円支払う」というようなスキームを設ける。
• 実際に冷夏となり、気温が契約値を大きく下回れば補償金が増え、損失が軽減される。
 35度以上の高温が続く場合の損益はどうなるか。
• 設例のヘッジは「冷夏」=低温リスクに対して設計されているため、猛暑で35度以上の高温が続くと、デリバティブ契約の支払い条件に該当しない(補償金を受け取れない)状態になる。
• この場合は、アイスクリームの需要が増えて売上が伸びるため、ヘッジは発動しない。デリバティブによる損益はゼロ(または手数料分だけマイナス)となる。
 猛暑で、ビールやアイスクリームのデリバティブは不発だったはずだ。前年比の売り上げ発表はどうなるだろうか。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.アフガニスタンの地震で数百人が死亡
【記事要旨】
 昨日、アフガニスタン東部で発生したマグニチュード6.0の地震で、800人以上が死亡、2,500人が負傷した。孤立した山岳地帯への緊急救援活動が開始されたが、死者数はさらに増加する可能性がある。
 村々を孤立させた土砂崩れにより、復旧作業は困難を極めており、タリバン政権への救援を申し出たのは、イラン、インド、日本、EUなど、ごく少数の国にとどまった。
 被害の大部分はパキスタンと国境を接するクナール州で発生しましたが、病院は機能していると、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は述べている。
 人道危機:アフガニスタンは、複数の危機に直面する中で、この地震に見舞われた。国連によると、アフガニスタンの人口4,200万人の半数以上が援助を必要としているが、資金の枯渇と隣国パキスタンとイランから200万人以上のアフガニスタン人が帰還する中で、厳しい冬への備えを迫られている。
【コメント】
 タリバンは2021年8月15日にアフガニスタン全土の実権を握り、現在もアフガニスタンを統治していますが、国連を含むどの国からも正式には承認されていません。タリバン政権下では、女性に対する教育や就労の権利が大きく制限され、人権状況が悪化しています。また、経済危機、食料不足、テロの脅威が続き、国際社会はアフガニスタンがテロの温床となることを懸念しています。(アフガンの現状)

2.ブラジル民主主義の試練
【記事要旨】
 ジャイル・ボルソナーロ前大統領は本日、2022年の選挙で敗北した後、クーデターを企てた罪で裁判にかけられる。有罪判決を受ければ、数十年にわたる懲役刑に処される可能性がある。
 自宅軟禁中のボルソナーロ大統領は、逃亡の恐れから、ブラジリアの自宅を私服警官が厳重に監視している。足首に監視装置を装着しているボルソナーロ大統領は、容疑を否認している。
 わずか40年前に独裁政権から脱却したブラジルは、米国が成し遂げられなかったことを成し遂げることになる。選挙で敗北した後も権力にしがみつこうとした元大統領を、刑事告発によって裁判にかけるというのだ。
 しかし、ブラジルが裁判を確保するために取った方法――並外れた権限を持つ最高裁判所を通して――は、ブラジルが守ろうとした民主主義に関する厄介な疑問を、ブラジルに突きつけることになった。
 詳細:ブラジル最高裁判所での裁判は2週間続くと予想されており、捜査官が約2年かけて収集した証拠が審理される。これには、司法取引の一環として自白したボルソナロ大統領の個人秘書の重要な証言も含まれる。
【コメント】
 トランプ政権は、ボルソナロ前大統領が政治的迫害を受けていると反発し、ブラジルからの輸入品に高い関税を課す方針を示しているほか、前大統領の裁判を担当する最高裁のモラエス判事ら裁判官とその家族に対し、アメリカのビザを取り消す制裁措置をとるなど圧力を強めています。(NHKの8月5日ニュース)

3.習主席、プーチン大統領、モディ首相が結束を示唆
【記事要旨】
 中国、ロシア、インドの首脳は昨日、中国・天津で行われた首脳会議で、まるで親友のように互いに挨拶を交わし、笑い合った。
 習近平国家主席は演説で米国をあからさまに批判し、「冷戦的思考、ブロック対立、そして威圧」に反対するよう各国首脳に促した。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ戦争の責任を西側諸国に押し付けた。また、モディ首相は「多国間主義と包摂的な世界秩序の推進」、つまりインドのような国々が世界情勢においてより大きな発言権を持つ体制の推進について語った。ロシア国営メディアによると、モディ首相とプーチン大統領はその後、プーチン大統領の車内で50分間会談を行った。
【コメント】
 トランプへの対抗軸が目に見える形で現れた。世界人口のトップ2,核兵器のトップ1が、対米でスクラムを組んでいるように見える。どうするトランプ。

その他の記事
ガザ:イスラエルが停戦交渉の方針を転換し、ガザ市への新たな攻撃を計画していることから、戦闘はすぐに終結する可能性は低い。
ロシア:ブルガリア当局は、EU(欧州連合)のウルズラ・フォン・デア・ライエン議長を乗せた航空機へのGPS妨害はロシアの仕業だと考えている。
オーストラリア:極右の反移民デモが政府当局を不安にさせている。

韓国:18ヶ月に及ぶストライキの後、医師たちが職場復帰を始めた。
ビジネス:世界最大の食品会社ネスレは、部下との非公開の関係を理由にCEOを解任したと発表した。

2025年9月2日 火曜日

世界の動き 2025年9月1日 月曜日

今日の言葉
「ホームタウン」
和製英語の欠陥が露呈した例だ。英語でhometownと言えば、出身地や生まれ育った土地を意味する。Brice Springsteen の名曲 My Hometown を思い出す人も多いだろう。日本語で言う「ふるさと」に近い、やや郷愁を伴う言葉だ。
日本政府は、4つの都市をアフリカ諸国との「ホームタウン」に指名した。アフリカから移民が押し掛けることを危惧し、市への非難の電話が殺到している報道があった。
この報道で思うのは、多くの日本人の狭量さと、「ホームタウン」という言葉を無意識に使う政府の無神経さだ。
「友好都市」 a frendship city というべきだったと思う。和製英語の乱用には注意したい。

ニューヨークタイムズ電子版より
トランプ大統領はアメリカの友好国を遠ざけている。中国は彼らを味方につけることができるだろうか?
【記事要旨】
中国で開催された上海協力機構サミットには過去最多の首脳が集まり、インドのモディ首相やロシアのプーチン大統領に加え、アメリカの友好国であるトルコやエジプトの首脳も出席した。
中国は「アメリカはもはや主導権を握っていない」と示すため、非西側諸国を取り込もうとしている。
トランプ政権の関税政策や同盟軽視が、習近平国家主席に米国の友好国を引き寄せる機会を与えている。
トランプ氏のインド・ロシアへの対応(モディ首相には関税、プーチン大統領には厚遇)は結果的に中国を利する形になっている。
中国は「安定」を提供できる国としてのイメージを強調しつつも、西側の価値観(民主主義・人権)を共有できるパートナーではない。
サミット後の軍事パレードでは、第二次世界大戦における中国の役割を誇示し、軍事力と歴史を使って領土主張や国際的地位の強化を目指すメッセージを国内外に発信している。
【コメント】
日本が降伏した相手は国民党政権であり共産党政権ではなかった、というのは日本の繰り言だろうか。

その他の記事
インドネシア:プラボウォ・スビアント大統領は、抗議活動参加者の要求を受け、議員への手当を削減すると発表した。暴徒たちは昨日、財務大臣の自宅を含む議員や政府関係者の自宅を破壊した。
ガザ:イスラエルは、ガザ市への攻撃でハマス武装組織の報道官アブ・オベイダを殺害したと発表した。オベイダはアラブ世界で最も著名なハマス代表の一人だった。タイムズ紙の映像分析は、イスラエルがハーンユニスの病院を攻撃した理由と矛盾する内容だった。少なくとも20人が死亡し、救急隊員やジャーナリストも含まれていた。
米国:トランプ政権は、ガザ地区外からの参加者を含むパレスチナ人への訪問ビザの発給を停止した。

2025年9月1日 月曜日
今日から9月。「長月」は、夜長月とか稲長月が語源だと言われる。