軽井沢再訪

昨晩9月19日は軽井沢に泊まった。前回はコロナ前だったと思うが、久しぶりに定点観測的な訪問だ。

いつもきまって行く場所は、駅に直結したショッピングセンターだ。巨大なアウトレットモールだ。

訪問客はとても多い。しかも若い人が。平日だが、勤務先や学校は問題ないのだろうか。中国人観光客も結構いる。大きなカートを引くひとは声高に中国語を話している。福島の「汚染水海洋放出」の影響はどうなのだろうか。あまり旅行客に影響はなさそうだ。国慶節の休暇になったらさらに多くの中国人が来ることだろう。

SCへの訪問客は多いものの、ショッピングをした証の買い物袋を下げている人は少ない。BrooksとかTommy Filfigureといった手頃な値段の買い物袋は見かけたが、値段の張る高級ブランドの買い物をした人は少なそうだ。まあ、本当のお金持ちならアウトレットに来なくても銀座で買えばよいのかもしれない。

軽井沢ではススキが伸び、水田は金色の稲穂が刈り入れ間際だった。ゴルフ場も混んでいるようだった。東京はまだ真夏日のようだが、今日は最高気温26度だった。ようやく秋めく軽井沢だった。

2023年9月20日 水曜日

世界の動き 2023年9月19日 火曜日

今日の言葉:
「キャリートレード」
機関投資家・ヘッジファンド等の有力な資金調達・運用手法とされる取引で、金利の低い通貨で資金調達して、金利の高い通貨で運用して利ザヤを稼ぐ手法をいう。特に円で資金調達をおこなう場合を円キャリートレードという。
円キャリートレードは、機関投資家・ヘッジファンド等が低金利の円などの通貨で資金調達し、それをドルに換えて、金利の高い米国債等で運用し、金利差収入を獲得する。なお、円キャリートレードが加速すると、円が売られやすくなり、円安をもたらす要因の一つと考える見方もある。
これまではキャリートレードと言えば円で調達する円キャリーだったが、最近は通貨として元を使う動きが出てきているようだ。以下Bloombergの記事より。
世界の為替投機家にとって長い間、キャリートレードは頭を悩ます必要のない取引手法だった。ゼロ金利政策を続ける日本の円で資金を調達し、より高い利回りを提供する他の国・地域への投資で利ざやを稼ぐだけのことだったからだ。しかし今や円に代わる低コストの調達手段が台頭しつつある。中国の人民元だ。ここ1カ月でインベスコやゴールドマン・サックス、シティグループ、TDセキュリティーズが、キャリートレードの資金調達通貨としての人民元の利用を魅力的なオプションとして勧めた。

ニューヨークタイムズ電子版記事より
1.国連総会開幕
【記事要旨】
国連総会が召集され、米国のバイデン大統領を含む安全保障理事会の首脳が欠席し、国際的な分断の増加が問題とされている。
今年の総会はグローバル・サウスの需要に焦点を当て、気候変動、ソブリン債務軽減、国連の開発目標の達成に関する議論が予定されている。
一部のアナリストは、世界の指導者が会合を欠席することで国連の弱体化のリスクがあると警告しており、国際機関は交渉者や調停者として排除されてきた。
ウクライナ大統領は初めて直接総会に出席し、米国の支援の有効性を示し世界に支援を訴える予定。また、ガーナ政府が財政救済を国際通貨基金に要請し、多くの国が貧困と経済危機に苦しむ状況が議論の対象となる。
イラクの首相は国連で汚職問題を解決し、信頼できる地域のパートナーになるための努力を説明する計画だ。
【コメント】
日本外交の基軸は米国との同盟と国連による多国間交渉だ。国連の機能不全が言われて久しい。日本は常任理事国入りに頑張った時期があったが現在の国力では実現不可能な目標だし。分断の進展で、支持も集まりそうにない。
多国間外交の基軸をどのように再構築するかは悩ましい課題だ。

2.イラン、拘束していた米国人5人を解放
【記事要旨】
バイデン大統領は、2年間の交渉を経て、昨日イランで投獄されていた5人のアメリカ人が出国を許可されたと発表した。
米国は、イラン石油収入60億ドルの凍結を解除し、米国の制裁に違反したとして告発されたイラン人5人に対する連邦告訴を棄却することに同意した。 共和党はバイデン氏がイランのテロ活動に資金を提供していると非難した。
アメリカ人の中には悪名高いエビン刑務所に何年も拘留されていた人もいたが、イラン人5人のうち2人との交換のためカタールに飛んだ。 米当局者らによると、他の3人はイランへの帰国を拒否した。
【コメント】
イラン人3人は帰国を拒否したということだが、彼らはどうするのだろうか。

3.トルドー首相、カナダでの殺人事件でインドを非難
【記事要旨】
カナダのトルドー首相は昨日、カナダ政府が収集した情報に基づいて、6月にブリティッシュ・コロンビア州でシーク教徒コミュニティの指導者が射殺された事件は「インド政府の工作員」が実行したと述べた。
トルドー首相は下院で、今月の20カ国・地域(G20)首脳会議でインドのモディ首相にこの問題を直接提起したと述べた。
ハーティープ・シン・ニジャールさん(45)はシーク教寺院の近くで射殺された。 彼はインドの一部をシーク教国家として独立させることを主張しており、インドは彼を指名手配のテロリストとして宣言していた。
この疑惑により両国関係はさらに緊張する可能性が高い。 カナダは今月、インドとの通商協定交渉を一時停止した。
【コメント】
土曜日16日にブログで、インドカナダ間の外交関係の悪化を取り上げた。カナダ側が更に一歩を踏み出したようだ。自国内で居住者が射殺されれば黙っているわけにはゆかない。

その他:
中国は台湾に軍事圧力
China sent a record number of military planes toward Taiwan.
リビアで反政府デモ
Hundereds of Libyans protested in Derna, demanding the removal of those responsible after torrential rains burst two dams.
ハンター・バイデンがIRS(米国内国歳入庁)を提訴
Hunter Biden sued the I.R.S., saying the tax agency violated his privacy by releasing details of his finances.

2023年9月19日 火曜日

世界の動き 2023年9月18日 月曜日

今日の言葉:
「敬老の日」
我が国は、65歳以上の人口比が29.1%。80歳以上の人口比が10%以上だそうだ。なんと国民の10人に一人が80歳以上だ。10年経つと10人に一人が90歳以上になるかもしれない。恐怖の老人国家だ。
老人国家は、老人天国か老人地獄か。後者の可能性が高そうだ。
国に頼れないとすれば自助しかないが、豊かで健康な老齢者として生きていくのはなかなか大変だ。

ニューヨークタイムズのニュースレターより
1.米国と中国の危険な秘密の探り合い
【記事要旨】
FBIのクリストファー・A・レイ氏によれば、米中間のスパイ合戦は冷戦時代の米ソ間のものよりも拡大しており、中国は人口と経済の大きさから大規模な諜報機関を構築できる。
2月に中国の偵察気球が米国本土を漂流し、アメリカの諜報機関はそれを発見した際、この競争が注目された。米国にとって、スパイ活動は中国の軍事的・技術的な台頭を抑制し、バイデン大統領の戦略の一部となっており、中国政府はスパイ機関の活動を奨励している。
スパイ活動は戦争回避や外交交渉に影響する可能性があり、冷戦時代のように武力衝突の代替となることもある。米国当局は電子通信の傍受能力を強化し、中国はソーシャルメディアと人工知能を利用してスパイ活動を行っている。
最近、米国の国家安全保障担当補佐官が中国の王毅外相とマルタで会談したことが明らかになった。
【コメント】
諜報活動は戦争を誘発するだけでなく戦争を防ぐ効果があることがわかる記事だ。我が国の諜報活動はどうなっているのだろうか。

2.ウクライナがクリシュチウカを奪還
【記事要旨】
ウクライナ軍が戦略的な村、クリシュチウカを奪還した。この村はウクライナ東部のロシア軍占拠地域からの重要な前進であり、バフムートを制御するロシア軍に対する圧力を高める役割を果たすことが期待される。
クリシュチウカは以前はロシア軍に占領されており、ウクライナの戦闘部隊とワーグナー傭兵との長期にわたる戦闘で再びウクライナの支配下に戻った。この奪還はウクライナがバフムートを保持するための重要なステップとなる。
また、ロシアが黒海穀物協定を終了して以来、初めてウクライナの港に到着した貨物船が、ウクライナが穀物の代替航路を模索する兆候を示している。
一方、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩氏の関係が強化されることが、中国の習近平国家主席にとって懸念要因となっている。ロシアと北朝鮮の結びつきが強まれば、習主席の影響力が減少し、中国政府が西側諸国との安定した関係を築こうとする努力が後退する可能性があると見られている。
【コメント】
最近ウクライナの戦争報道を熱心に見ていないので、この村の奪還がどれだけ大きな意味を持つのかよくわからない。
ロシアと北朝鮮の関係緊密化が東アジアの安定には大きな懸念だ。

3.リビアの救援活動は病気に焦点を移す
【記事要旨】
国際移住機関(IOM)によると、先週リビア北東部でダムが決壊し、数千人が死亡、4万人以上が避難し、悲惨な人道危機が生じた。
生存者発見の期待が薄れる中、救援活動の重点は医療品の不足と汚染された飲料水に移っている。 国連の報告書によると、30万人近くの子どもたちが「下痢やコレラ、脱水症状、栄養失調のリスクの増加」に直面しているという。
【コメント】
発表のたびに死者と被災者の数が増えている。悲惨な状況が続いているようだ。個人的にはUNICEFに貧者の一燈をした。

その他:
中国で高級化粧品がブーム
Cosmetics sales in China are soaring, and exporting nations led by France are pushing against restrictions they say are unfair.
(資生堂も潤っているのかな?)
日本の天文学者が大発見
Astronomers in Japan recorded a fireball hitting Jupiter, which could offer clues about the birth of our solar system.
(これ日本では全く報道されていない。なんでだろう?)
ニュージャージー州で終末ケア促進
A lawsuit in New Jersey could make aid-in-dying care available to millions of people.

2023年9月18日 月曜日

エージェンシー問題再考

ビジネススクールでファイナンスを学んだ際に(UCLAを1980年卒業だから大分昔の話だ)エージェンシー理論の説明を受けて、いろいろ考えたことがあった。計量的な話の多いファイナンスで、ここだけ文章のみの説明で、違和感があった。当時は米国でもガバナンスにはあまり重視されず、それを扱う講座も無かった。日本はというと、メインバンクによる貸出と役員派遣を通じたガバナンスがまだ効いていた時代のことだ。

戦略コンサルのフロンティア・マネージメントによる2020-04-16付け論考『理想のコーポレートガバナンスを考える上で重要な「エージェンシー理論」とは?』を基にエージェンシー問題を再考してみたい。
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多くの企業が、株主の利益を守るため企業経営を監視し、統制するコーポレートガバナンスを推進しています。 コーポレートガバナンスを考えるうえで有効なのが、ハーバード大学のM・C・ジャンセン氏らの論文で有名な「エージェンシー理論」(プリンシパル=エージェンシー理論)です。 コーポレートガバナンスの目的を達成するためには、まずエージェンシー理論の視点に立ち、経営者と株主の利害関係をとらえなおす必要があります。 本記事では、エージェンシー理論の意味やポイントを解説します。

コーポレートガバナンスを構築するうえで重要な「エージェンシー理論」
エージェンシー理論(Agency Theory)とは、あらゆる組織や人間関係を「依頼人(プリンシパル)」と「代理人(エージェント)」でとらえる経済理論です。
依頼人と代理人はそれぞれ自己利益を追求するため、両者の利害が常に一致するとは限りません。
とくに所有と経営の分離が原則である株式会社においては、企業の出資者である株主と、企業の経営者の間に、しばしばエージェンシー問題(利害対立問題)が起きます。
例えば、中長期の視点での利益回収のために投資をしたい経営陣と短期間での利益を追求する株主との意見対立は代表的なエージェンシー問題です。
そのため、株主や経営者の双方にとって、エージェンシー理論は望ましい企業統治(コーポレートガバナンス)のありかたを考えるうえで重要になります。

なぜガバナンスにおいてエージェンシー問題が発生するのか?
なぜエージェンシー問題が生じるのでしょうか。企業経営には多数のステークホルダー(利害者)が存在します。
とくに企業に出資して利益を得ようとする株主と、企業経営から利益を得ようとする経営者の間には、利害が一致しないことがあります。
株主と経営者は、目的が一致しているわけではありません。株主は利益還元のため企業価値を優先します。一方、経営者は自社における利益の追求を目的とします。

「エージェンシーコスト」の利害対立が企業経営に歪みをもたらす
エージェンシー問題が発生すると、企業経営に歪みが生じる場合があります。この歪みから生じる損失を「エージェンシーコスト」と呼びます。
エージェンシー理論では、株主よりも経営者の方が情報優位な立場にあります。
そのため、株主にとって不利益となり、フリーキャッシュフローの還元に悪影響を及ぼすような情報を、経営者はしばしば隠蔽しがちです。
企業価値の向上には必ずしもつながらない、自社ビルへの過剰な投資などが代表的な事例です。
このような対立がつづくと、経営陣に不信感を持った株主によって、行動を監視するための制度や組織をつくることが求められたり(モニタリングコスト)、情報開示や監査を受ける必要が生じたり(ボンディングコスト)、様々なコストがかかります。

経営者が自己利益を追求する過程で「モラルハザード」が生じる
経営者は株主よりも情報優位な立場にあり、株主は経営者の行動を直接観察することができません。
そのため、株主はできるかぎり合理的に振る舞おうとしますが、情報が制限されており、限定された行動しかとれません。
これを「限定合理性(Bounded Rationality)」と呼びます。経営者はこの限定合理性につけこみ、フリーキャッシュフローを私的な利得のために使って、株主に損害を与えてしまう傾向があるのです。
この行動原理を「モラルハザード(道徳的危険、倫理の欠如)」と呼びます。出資者である株主の意向を無視することは、非倫理的に見えるかもしれません。
しかし、経営者にとっては自己利益の追求が目的であるため、不正な手段であっても利益を得ることが「合理的」な行動となる可能性があります。

コーポレートガバナンスはエージェンシー問題の解決策となる
コーポレートガバナンス(Corporate Governance)とは企業経営や企業としてのあり方を監視し、統制する仕組みです。企業統治とも呼ばれます。
エージェンシー問題が発生すると、エージェンシーコストやモラルハザードなど、企業のステークホルダーに悪影響を及ぼすリスクが生じます。
適切なコーポレートガバナンスを構築することで、エージェンシー問題を抑制につながります。

コーポレートガバナンスの2つの目的
コーポレートガバナンスには、「経営の効率化」と「経営の倫理化」の2つの目的があります。
経営の効率化とは、企業の組織の在り方や統治方法を見直すことで、より利益を生み出すことを意味します。経営の倫理化とは、企業の不正を抑制し、各ステークホルダーと円満な関係を保つことです。
エージェンシー問題を考える場合には、後者の「経営の倫理化」がより重要です。
コーポレートガバナンスという考え方が生まれたきっかけは、1960年代のアメリカで多発した、自動車企業などによる水質汚染やスモッグなどの企業による非倫理的なふるまいでした。
そのため、コーポレートガバナンスは、2つの目的を追求して企業の構造を適正化し、利益を高めつつ不正の抑制を目指します。

コーポレートガバナンスの観点からみるエージェンシー問題
エージェンシー問題によって、「エージェンシーコスト」と「モラルハザード」という2つのリスクが生じます。
エージェンシー問題は企業の利益を減じ、不正の温床となり得ます。つまり、コーポレートガバナンスとは、エージェンシー問題を防ぐための仕組みづくりになります。
コーポレートガバナンスを推進する企業が、社外に取締役や監査役を置くのも、ステークホルダーである株主とのバランスを保つことが目的です。

エージェンシー問題を解決し、企業価値を高めるには?
コーポレートガバナンスを構築する2つのポイントは、「情報の対象化(情報開示)」と「利害の一致化」です。
情報の対象化とは、経営者の株主に対する情報優位を減らし、透明な情報公開に努めることです。
情報の対象化の具体的な施策としては、社外監査役の導入、内部統制報告制度の活用、IR活動の推進や、事業年度ごとの財務諸表の公開などがあります。
利害の一致化とは、経営者と株主の関係をより緊密化したり、経営者が利益追求を自己統制したりして、利害を一致させることです。
利害の一致化には、株主との対話の場である株主総会の積極的な活用はもちろん、第三者的な社外取締役の導入などの施策が有効です。
「情報の対象化」と「利害の一致化」により、エージェンシー問題を解消するのが、コーポレートガバナンスを構築する目的のひとつです。

エージェンシー問題を解消するためにコーポレートガバナンスを
所有と経営が分離する企業では、しばしば株主(出資者)と経営者の利害が対立します。
これにより、エージェンシーコストやモラルハザードといったリスクが生じます。
理想的なコーポレートガバナンスを構築するには、自己利益の追求だけでなく、不正を抑制する仕組みづくりが欠かせません。
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以上、引用したフロンティ・マネージメントの論考は、終盤は説明が簡単になったが、上手にまとめられている。

筆者は 2000年に銀行からプライベートエクイティファンドに転した。
PEファンドがなぜ企業価値を改善できるか説明する際に、「株主と経営者と従業員の目線を合わせるガバナンスの有効性」を良く使った。
最近のはやりの言葉で言うところのBoard3.0と言われるガバナンス形態の中に身を置くことになった。

Board3.0で、エージェンシー問題が無縁になるかと言えば、そんなことはない。依然として、エージェンシー問題はなかなか難しい課題だ。

株主の考える「経営の倫理化」のレベルを折に触れて経営者に説明することが目線合わせで大事なことだと実感する。

2023年9月17日 日曜日

インドとカナダの外交関係

EurasiaGroupのGZERO North!というニュースレターに、インドとカナダの冷却化する関係が取り上げられていたので紹介したい。

『ニューデリーでのG20会議は最近、多くの関係者が成功したと喧伝しながら閉幕した。 55の加盟国からなるアフリカ連合もこのグループに加わった。 バイデン大統領は、インド、ヨーロッパ、中東を結ぶ鉄道と海の回廊計画を発表した。 そして、多少の意見の相違にもかかわらず、国家元首と政府首脳は、とりわけ気候変動、貿易、地政学について触れた共同声明に合意した。
しかし、カナダのトルドー首相にとっては、飛行機が故障したため文字通り足止めされることになったこの数日は素晴らしいものではなかった。
カナダは望んでいたものを手に入れることができず、G20での手に入れた手荷物は、バイデン政権やモディ政権の手にしたものと比べると軽いように見える。
カナダ政府は、ウクライナ戦争に対するロシアへのより厳しい叱責を望んでいたが、それを確保できなかった。 また、世界で最も人口が多く、急成長する経済国であるインドへのさらなる進出を含むインド太平洋戦略を推進したいと考えていた。
トルドー首相は、恥ずかしい軽蔑を避けたかったのは間違いない。 カナダがニューデリーとの関係の重要性をますます認識しているにもかかわらず、インドとモディ首相はカナダを排除するつもりはないものの、同国をトップレベルのパートナーとして評価していないという見方が関係者の間にある。 カナダは以前にもインドに冷遇されたことがある。
カナダはインドとの強固な貿易および移民関係を必要としている。2022年の両国間の貿易額は商品とサービスで約200億カナダドル(140億ドル)に達した。 インドはカナダへの最大の移民の供給源だ。 2022 年には、インドからの 12 万人近くの新規移民が永住者になった。これは、その年のカナダの永住者全体の 4 分の 1 以上に相当する。
首脳会談に先立ち、モディ政権は両首脳の二国間会談の可能性については慎重だった。 二人の指導者がお互いに特に気を使っていないのは明らかだった。両氏は結局ニューデリーで立ち話したが、二国間会談は開かなかった。
一方、バイデン氏とモディ氏は二国間会談を開催したが、これは6月のインド指導者のワシントン国賓訪問以来、わずか数カ月で2度目となる。 どちらの会談でも、特に貿易、エネルギー、技術に関して、米国とインドの関係が進んでいることが指摘された。 インドはインド太平洋地域やそれ以外の地域において中国のパートナーおよび代替国としての地位を確立することに熱心であり、米国もこれを喜んでいる。
カナダ当局者はしばしば外国との、さらに言えば国内の政策成果を米国の政策成果と比較する。 カナダ政府は定期的に米国政府とベンチマークされるが、カナダは、最大の同盟国であり、貿易と安全保障のパートナーである米国から離れすぎることはできない。
しかし、カナダは、世界で最も重要な新興大国の一つであるインドとの関係について、米国と歩調を合わせていないように見える。これはカナダと中国の複雑な関係を彷彿とさせる。両国間の貿易は2022年に過去最高を記録したが、トルドー首相は、米国の対中政策をヘッジし、中国がカナダの国内政治に干渉しているとされることを背景に、中国との関係を管理しようとしている。
インドとカナダの関係がいかに悪くなっているかを示す兆候として、両国はG20に先立ち、10年以上続いてきた通商交渉の無期限停止を発表した。 カナダは自らの立場を「検討」するとし、インドは受け入れた。 トルドー首相はその理由については沈黙を守った。
こじれた関係の多くは、モディ政権がカナダにおけるインド人難民に介入しようとしているという非難から来ている。』

カナダとインドの関係が冷たいものであるのは、この記事を読むまで知らなかった。インドにとっては経済的には二線級なのに、人権等でうるさく言う相手だということだろう。

日本外交では「法に支配され、自由で開かれたインド太平洋」という言葉が念仏のように唱えられている。「自由で開かれたインド太平洋」については以下のように説明されている。
Free and Open Indo-Pacific is an umbrella term that encompasses Indo-Pacific-specific strategies of countries with similar interests in the region. The concept, with its origins in Weimar German geopolitics, has been revived since 2006 through Japanese initiatives and American cooperation

更に日本は法の支配Rule of Lawの重要性を訴えており、外務省の外交青書によれば以下のように記載されている。

『「法の支配」とは、一般に、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であり、国内において公正で公平な社会に不可欠な基礎であると同時に、友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤となっている。さらに、法の支配は国家間の紛争の平和的解決を図るとともに、各国内における「良い統治(グッド・ガバナンス)」を促進する上で重要な要素でもある。このような考え方の下、日本は、安全保障、経済・社会、刑事など、様々な分野において二国間・多国間でのルール作りとその適切な実施を推進している。さらに、紛争の平和的解決や法秩序の維持を促進するため、日本は国際司法裁判所(ICJ)、国際海洋法裁判所(ITLOS)、国際刑事裁判所(ICC)を始めとする国際司法機関の機能強化に人材面・財政面からも積極的に協力している。また、日本は法制度整備支援のほか、国際会議への参画、各国との意見交換や国際法関連の行事の開催を通じ、アジア諸国を始めとする国際社会における法の支配の強化に努めてきている。
日本は、法の支配の強化を外交政策の柱の一つとしており、力による一方的な現状変更の試みに反対し、領土の保全、海洋権益や経済的利益の確保、国民の保護などに取り組んでいる。例えば、日本は、国連総会を始めとする国際会議や関係国との会談など、様々な機会に法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を確認し、その促進に取り組んでいる。また、国際社会における法の支配の促進の観点から、日本は、国際法に基づく国家間の紛争の平和的解決、新たな国際法秩序の形成・発展、各国国内における法整備及び人材育成に貢献している。』

「力で現状を変更」しようとする対中国的には、「法の支配」に重点を置いた外交は有効だろう。ただ、インドのように国内の民族問題に強権をふるっているインド(やその他の強権的な政権を有する国家群)にむけて「法の支配」を強調すると、彼らの国内問題を刺激する恐れがある。

お題目として、特に対中国には、「法の支配」「開かれたインド太平洋」は結構だが、相手を見ての使い分けと、アクセントの置き方に気をつけないといけないだろう。かかる概念が広く受けいれられるのは西欧民主主義国に限られる。カナダのようにパージされる愚は避けなければならない。

2023年9月16日 土曜日