世界の動き 2022.2.9 Wednesday

N.Y. Times 電子版より

1.Russia undercuts Macron
【表現】
 タイトルがはっきり理解できない初めての事例。undercutというのは
マクロンの発表を少し値引きしている(それほどの成果がない)ということ。
【記事要旨】
 フランスは、マクロンはプーチンとの会談で、ベラルーシでの演習が終われば2月中にロシア軍は撤兵する。近い将来、ウクライナ周辺で軍事行動を起こすつもりはない。という約束を得た、と発表した。
 これに対し露は以下の反応。A Kremlin spokesman rejected those reports. “In the current situation, Moscow and Paris could not make a deal. France is an E.U. and NATO member,” he said, adding, “France is not leading NATO.”
 マクロンはウクライナでゼレンスキー大統領に事態を軽視しないようにと語る。
【感想】
 マクロンープーチン会談後共同記者会見があったのだがプーチンの説明は明瞭ではなかった。フランス当局の踏み込んだコメントに、ロシアは否定している。 フランスの努力は特筆ものだが、プーチンとの会談では彼の発言を好意的に解釈するのは禁物。安倍元首相のプーチンとの十数回の首脳会談が希望的観測に終始し全く成果を生まなかったのが教訓。

2.デンマーク、コロナ制限を解除
【記事要旨】
 デンマークは世界でもっとも人口当たりコロナ感染者が多い国だったが、コロナに関する制限をすべて解除した。
 重症者、死者は著減し、ICUの使用率がここ数か月で最低水準なのが解除の理由。
 先進国ではこうなる。
 The end of restrictions in Denmark could herald a future in which rich countries can afford “living with the virus,” as long as they have high vaccination rates, huge testing capacities and strong health data infrastructure. In Denmark, 81 percent of the population has been fully vaccinated, and 62 percent have received a booster.
【感想】
 前提となるのは、高いワクチン接種率、巨大なテスト能力、強い健康データのインフラ整備、と言っているが、いずれも我が国ではまだ備わっていない。ああ。

3.オリンピックのウイグル人競技者
【記事要旨】
 Dinigeer Yilamujiangという20歳のウイグル人女性が聖火点火者に選ばれたことについて見方が分かれている。中国では好感され西側は人権弾圧を洗い流そうとするものだと見ている。
 式後目立たなくしていた彼女は出場したクロスカントリー競技で予選突破できなかった。また、
 For the second consecutive Winter Games, four of the six U.S. figure skaters who arrived to compete in singles events are Asian American. A few decades ago, figure skating was almost uniformly white.
【感想】
 人種の多様性について米国の許容性の高さを最後は言っているのかな。
 陸上競技では昔から黒人選手が代表を占めており、N.Y.Timesの自慢ともとれる記事は、的外れ。
 それから聖火の彼女はヒジャブをしておらず家族の生活ぶりをTVで見て、彼女の一族はムスリムではないと思うのだが、この重要な点を明確にした記事はない。

その他:
ワクチンはファイザーとモデルナが独占的ということか。
Johnson & Johnson has quietly shut down a crucial plant producing its Covid vaccine.

The 2022 Oscar nominations were dominated by “The Power of the Dog,” “Dune,” “Belfast” and “West Side Story.” Beyoncé got her first nomination.
日本では「ドライブマイカー」がノミネートされたことが大きなニュースですが。。

インドではヒンズーとイスラムの人種対立が激化の様子。
 Indian extremist elements are taking their calls for anti-Muslim violence into the mainstream, enabled by political leaders and law enforcement.
 Officials closed schools in India’s southern Karnataka State after protests erupted over a ban on hijabs, Reuters reports.

(2022.2.9 Wednesday)

三好達治「乳母車」を読んで

最近はめっきり乳母車を見なくなった。たまに見かけると犬が鎮座していたりする。前回の「雪」に続いて、三好達治の「乳母車」だ。

・・・・・・・・・・
母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり

時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕陽にむかって
轔轔と私の乳母車を押せ

赤い総のある天鵞絨の帽子を
つめたき額にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知っている
この道は遠く遠くはてしない道
・・・・・・・・・・
前回紹介した「雪」と同じく、「乳母車」は三好30歳の処女詩集「測量船」に掲載されている。

 この詩を読むと、夕日に向かって母親が乳母車を押しており、その中には幼児時代の三好がいる情景が目に浮かぶ。全編に「淡くかなしき」「たそがれ」「泣きぬれる」「つめたき」といった主情的な言葉がちりばめられ、強い抒情性を感じる詩だ。

 細部の理解はなかなか難しいが、最後の「この道は遠く遠く果てしない道」で母への変わらない思慕の念が表現されているのは理解できる。

 「雪」と「乳母車」をいう日本詩の中の最高傑作を処女詩集に著した三好達治は天才だと思う。三好は63歳まで生きたが、この2作を超える詩は残せなかった。

 プライベートにも波乱に富んだ生き方をした人だが、彼自身は自分の才能をどのように見ていたのだろうか。

(2022.2.8 Tuesday)

世界の動き 2022.2.8 Tuesday

N.Y. Times 電子版より 

1.ウクライナ危機に関しマクロンがプーチンと会談
【記事要旨】
 ウクライナ危機に関し、マクロンはプーチンと会談。共同宣言は無いので詳細は不明だが、マクロンはこのような会談の重要性を強調。ロシア報道官も一回の会談で問題が解決するほど簡単ではないが積み重ねが重要と発表。
 マクロンはウクライナ大統領と今日会談予定。
 一方ドイツショルツ首相はバイデン大統領と会談し共同宣言発表。対露の姿勢が明確でないショルツが状況説明に訪米したとの見方が大。露のウクライナへの軍事侵攻の際はノードストリーム2の中止を述べたが侵攻以外の露の圧力に独がどう対応するかは不明確。
【感想】

   マクロンとプーチンの1対1の会談の写真が載っているが、7m近い楕円形テーブルの両端に座っている二人が、西側とロシアの距離を明示している印象。

 危機の高まる紛争に主要国がどう対応するかを見る国際政治ショーのような印象。日本はウクライナから遠く、対岸の火事だが、台湾有事にどう対処するかはこれでは済まない。
 今からシミュレーションして対応を考えておくべき。素人に言われなくても考えているでしょうが、日本政府の対応の混乱ぶりが今から予見できる。

2.イスラエル警察は市民をスパイしているのか?
【記事要旨】
 専制国家へ監視システムを輸出しているイスラエルのNSOグループは、裁判所の許可なく自国民の監視にもイスラエル警察に使われていると告発された。ナタ二エフ前首相の裁判の証人が警察に盗聴されているとのこと。
 NSOのPegasusという製品を使い警察は多くのメディア、市民の電話を盗聴している由。
【感想】
 スノーデンレポートで米国も友好国の首脳の電話やメールを盗聴していたという話もあった。ロシアや中国は当然だ。オリンピックへのスマホ持ち込みにしても、日本は平和ボケだ。

3.カナダの首都が非常事態宣言
【記事要旨】
 ワクチン接種の義務化に反対するトラックの運転手が車列を組んでオタワを占拠した状態が11日も続き市長は非常事態宣言を出した。
 こうしたデモはカナダの大都市に伝播している。
【感想】
 サム・ペキンパー監督、クリス・クリストファーソン主演の「コンボイ」を思い出しますな。1978年公開だからもう44年前になります。
 「動き出した。もう、誰も止められない!」という予告編が印象的だった。

日本の記事:
Climate and demographic threats are chipping away at the centuries-old culture surrounding the cultivation of Wasabi in Japan.

(2022.2.8 Tuesday)

西村賢太「苦役列車」を思い出して

「苦役列車」で2011年に芥川賞を受賞した西村賢太氏が2月5日早朝に急死した。54歳だった。

 高校生くらいからずっと文芸春秋の芥川賞特集号は読んでいたが、最近は読了するのが困難な作品が多く文芸春秋を買う頻度も減った。「苦役列車」はわかりやすく読むのに苦労しない小説だった。

 社会に不満を持ち折り合いのつかない青年が、中学卒業後家を出て、苦役の伴う労働を転々とする様子が綴られている。青年の気晴らしは酒を飲むことと金がたまったら行く風俗だ。西村の実生活をつづった典型的な私小説だ。友人らしき人間がやっと見つかるが仲たがいするのがやや盛り上がり部分になるが、最初から最後まで青年の自堕落な生活が綴られている。

 西村の芥川賞受賞の言葉「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」は話題を呼んだ。受賞後も作家としてコンスタントに作品を発表していたが、自堕落な生活が寿命を縮めたのであろうか。

 似たような私小説の芥川賞受賞作に、村田沙耶香の「コンビニ人間」がある。主人公の女性は他人と普通に会話が出来ないのだがコンビニ店員としての応対は出来る。それでコンビニが人生の中心であり彼女の存在意義なのだ。この辺までは良かったが、最後の方の、好きでもない男と同棲生活を始めるところからは設定がわざとらしく読み続ける意欲を失った。

 村田は受賞後もコンビニで週三回のバイトを継続していたそうだが今はどうしているのだろうか。寡作な作家のようだ。

 西村の死で、西村と村田の芥川賞受賞作を思い出した。
 このような私小説しか受け入れられないのは、自分が私小説的な人間だからだろうか、社会との折り合いをつけにくい人間だからだろうか、と反芻する。  いずれにしても日本には私小説が多いのですがね。

(2022.2.7 Monday)

世界の動き 2022.2.7 Monday

N.Y. Times 電子版より

1.冬季五輪開幕
【記事要旨】
 金曜に開幕。習近平主席の意図は世界で拡大する中国の地位を祝うこと。
 プーチン大統領と並び、ロシアとの連帯と人権問題を持ち出す西側諸国への不満を示した。聖火リレーの最終走者にウイグル出身の女性を選び西側の批判への強い拒否を示した。
【感想】
 最終走者のウイグル人女性の家族が喜んでいる映像が日本のTVで流れたが明らかにイスラム系ではない(キリスト教か)。イスラム圏であるウイグル内での少数派から選出したと思われる。つまり、彼女はウイグル人全体を代表するものではないと考えるのが妥当だ。

2.ロシアは侵攻に動く
【記事要旨】
 ロシアは侵攻の最終的な準備を終わったようだ。クリミアで10000人の兵力を増やし、ウクライナを囲む兵力は130000人になった。ロシアの総兵力の70%に相当する。
 米は、ロシアの侵攻は最大50000人の民間人の死亡を見込み、大量のウクライナ難民の発生を懸念。
【感想】
 あげたこぶしがどんどん高くなり、下ろしようが無くなってきた。

3.アフガニスタンの医療危機
【記事要旨】
 アフガンでは栄養不良と病気の増嵩で、国内病院の90%が機能しなくなると見込まれている。元々国際支援で回っていたアフガンの医療はタリバン政権の出現による制裁で医療品が枯渇している。グテーレス国連事務総長は人道支援の再開を要望。このままでは4.7百万の栄養不良(主に子供)が見込まれている。
【感想】
 内戦のつけは一番弱い人たちに現れる。

英・米・中の記事:
Queen Elizabeth said she wanted Camilla, the Duchess of Cornwall, to be called a queen once Prince Charles became king of Britain.
  エリザベス女王の退位観測が出る。
In the U.S., the Republican Party officially declared the Jan. 6 attack on the Capitol and the events that led to it “legitimate political discourse.”
  共和党は正気ですかね。
China’s “zero-Covid” policy is creating havoc across Southeast Asia, as fruit farmers grapple with debt and abandon their harvest.
  日本ではまだ実感しないけど。

(2022.2.7 Monday)