相場の流れをどう読むか(相場格言)

 米国市場では株価下落の動きが目立ってきた。ついにAIバブルの崩壊を懸念する声が強まっている。本格的なバブルの崩壊につながるのか、それとも健全な調整の過程なのか、見極める時期といえそうだ。

 仮にバブルの崩壊だとしても、最近3回の市場暴落時に、全売却、一部利食い、そのまま保有の3つの戦略がその後どういうリターンをもたらしたかは以下だ。

  代表的な調整局面と戦略の結果
●2000年 ITバブル崩壊
– 全売却:その後の回復(2003年以降)を逃し、長期的な複利効果を失う。
– 部分売却・リバランス:IT株の比率を減らし、他セクターに分散した投資家は損失を抑制。
– 保有継続:AmazonやAppleなど一部の優良企業は大幅に成長し、長期保有者は大きな利益。
●2008年 リーマンショック
– 株価は世界的に50%近く下落。
– 全売却:現金化した投資家は2009年以降の急回復を取り逃がす。
– 部分売却+再投資:リスク資産を減らしつつ、調整後に段階的に再投資した投資家は回復を享受。
– 保有継続:長期投資家は2013年以降の強気相場で大きなリターン。
●2020年 コロナショック
– 日経平均は2月から3月にかけて約30%下落。
– 富裕層投資家の行動:25%が資産を売却した一方、38%が追加投資を実施。結果的に回復局面で利益を拡大。
– 市場全体:デジタル関連や物流施設など構造的に強い分野は急速に回復し、投資を続けた人が優位。

 要すれば、ろうばい売りは避け、長期保有に徹することが基本だということだ。自身のポートフォリオにかなりの利益がある際は、半分は利食いして利益を確定するのが筆者のお勧めだ。

 ただし、高値で売り抜け、底値で買うことは難しい。この辺を日本の相場格言は「鯛の頭と尾っぽは猫にくれてやれ」という。同様の格言が米国にあるかと思い調べてみた。こんな言い方がある。

“Nobody rings a bell at the market bottom.”
 → 誰も底値でベルを鳴らしてくれない。つまり、最安値を完璧に当てることは不可能。
“Bulls make money, bears make money, pigs get slaughtered.”
 → 強気でも弱気でも利益は出せるが、欲張りすぎると痛い目に遭う。頭と尻尾を欲張るな、という教訓。
“The trend is your friend until the end.”
 → トレンドに乗ることが利益につながるが、終わりを見極めるのは難しい。
“Cut your losses short and let your profits run.”
 → 損失は早めに切り、利益は伸ばせ。最安値や最高値を狙うより、流れに従う方が有効。
“The crowd is right during the trend but wrong at both ends.”
 → 群衆はトレンド中は正しいが、天井や底では間違える。

 11月は、米国の機関投資家が来年のポートフォリオ戦略を策定し持ち株を入れ替える時期だ。その点にも注目して11月の後半の相場の動きを注視したい。

2025年11月16日 日曜日

週間市場動向 2025年11月10日~14日 備忘録

【先週の株式市場の動き】
先週(2025年11月第2週)の日本と米国の株式市場は、米国が持ち高調整や半導体関連銘柄への高値警戒感で下落、日本も同様に主力株の一角に調整売りがありました。以下に主要インデックスの終値と週間騰落率をまとめます。​

米国主要インデックス
インデックス 11月8日終値 11月15日終値 週間騰落率
ダウ平均 47,457.22  46,865.71 -1.24%​
NASDAQ 23,527.64  23,280.00前後 -1.05%​
S&P500 6,832.43  6,785.50前後 -0.69%​
米国市場では、週前半にハイテクやAI関連株への利益確定売りが先行し、週末にかけても経済指標やFRB見通しに対する警戒感が続きました。​

日本主要インデックス
インデックス 11月8日終値 11月15日終値 週間騰落率
日経225 50,642.79  50,842.00 +0.39%​
TOPIX 3,298.85  3,359.81 +1.85%​
日本市場は米国市場の流れを受けつつも、決算発表や景気への期待感でしっかりした動きとなり、TOPIX、日経平均ともに前週比プラスとなりました。​

主要インデックス動向まとめ
米国株は主要3指数が週間で下落、特にダウ平均は利益確定売り先行。​
日本株はTOPIX、日経平均とも上昇し、内需株や一部主力株に買いが入りました。​
いずれも週後半に利益確定や調整の動きが強まり、日米ともに市場参加者の警戒感が見られる一週間となりました警戒感が見られる一週間となりました。​

今週(2025年11月第3週)の米国・日本株式市場は、経済指標発表や企業決算に加え、米金融政策や円相場の動向が相場への影響点として注目されます。​

米国市場の見通しと主要イベント
米市場では「利益確定売りが続く健全な調整か、本格的な下落トレンド入りか」を投資家が見極めています。​

重要経済指標の発表予定は「10月消費者物価指数(CPI)」「10月小売売上高」「住宅関連統計」などですが、政府閉鎖の影響で一部延期となる可能性があります。​

11月14日(金)に「米小売売上高」、19日(水)に「米住宅着工件数」、19日(水)深夜には「FOMC議事要旨」などが控えています。​

引き続きAI関連や大型テクノロジー株の調整局面、FRBの利下げ観測が注目されます。​

日本市場の見通しとイベント
日本市場は米株動向や為替が大きな影響要因。主力株への調整売りが続けば日経平均のレンジ下限(4万9500円近辺)を試す展開も想定されます。​

今週は「7-9月期GDP速報値」(11月17日)、「訪日外国人旅行者数」(11月18日)、「機械受注統計」(11月19日)、「消費者物価指数CPI」(11月21日)など重要なマクロ統計が集中します。​

ソフトバンクグループなど決算内容や、円安傾向の継続が日経平均の下支え要因になりうるとの見方です。​

注目点まとめ
米国は物価指標・住宅統計・消費関連のデータ、およびFRBの発言や議事要旨が注目。​

日本はGDP速報値、消費者物価指数、機械受注など景気指標に加え、大型株の決算や為替の動きが注目。​

世界的な金利動向と米国政府の統計発表スケジュールにも注意が必要です。​

投資家は、景気指標の内容や主要企業の業績動向、為替市場のボラティリティに注目し、短期的な市場変動リスクへの対応が求められます。

【今週の見通し】
今週(2025年11月第3週)の米国・日本株式市場は、経済指標発表や企業決算に加え、米金融政策や円相場の動向が相場への影響点として注目されます。​

米国市場の見通しと主要イベント
米市場では「利益確定売りが続く健全な調整か、本格的な下落トレンド入りか」を投資家が見極めています。​

重要経済指標の発表予定は「10月消費者物価指数(CPI)」「10月小売売上高」「住宅関連統計」などですが、政府閉鎖の影響で一部延期となる可能性があります。​

11月14日(金)に「米小売売上高」、19日(水)に「米住宅着工件数」、19日(水)深夜には「FOMC議事要旨」などが控えています。​

引き続きAI関連や大型テクノロジー株の調整局面、FRBの利下げ観測が注目されます。​

日本市場の見通しとイベント
日本市場は米株動向や為替が大きな影響要因。主力株への調整売りが続けば日経平均のレンジ下限(4万9500円近辺)を試す展開も想定されます。​

今週は「7-9月期GDP速報値」(11月17日)、「訪日外国人旅行者数」(11月18日)、「機械受注統計」(11月19日)、「消費者物価指数CPI」(11月21日)など重要なマクロ統計が集中します。​

ソフトバンクグループなど決算内容や、円安傾向の継続が日経平均の下支え要因になりうるとの見方です。​

注目点まとめ
米国は物価指標・住宅統計・消費関連のデータ、およびFRBの発言や議事要旨が注目。​
日本はGDP速報値、消費者物価指数、機械受注など景気指標に加え、大型株の決算や為替の動きが注目。​
世界的な金利動向と米国政府の統計発表スケジュールにも注意が必要です。​
投資家は、景気指標の内容や主要企業の業績動向、為替市場のボラティリティに注目し、短期的な市場変動リスクへの対応が求められます。

【PE市場とプライベートクレジット市場の動向】
2025年11月第3週時点で、PE(プライベートエクイティ)市場とプライベートクレジット市場は、ともに拡大と変革の局面にあります。ただし各市場ごとに課題や注目点が異なります.​

プライベートエクイティ(PE)市場
PE市場は運用資産を拡大し続ける一方で、「出口待ち」の案件が急増し、ファンドの分配遅延や新規ファンドレイズの鈍化が見られています。これは、2024年時点でPEファンドが4年以上保有している企業が1.8万社超と過去最大を更新しているためです。​
2025年は上場企業の非上場化や中小企業の事業承継が積極的に進められ、日本でもオリックスとカタール投資庁による大型PEファンド設立が話題となっています。​
セクターとしては、ノンコア事業のカーブアウト、テクノロジー・エネルギー・インフラ関連分野への投資が増加しています。また、ESG分野への関心の高まりや地政学リスクが投資先選定に影響を与えています。​

プライベートクレジット市場
グローバルのプライベートクレジット市場は、特に米欧を中心に、ここ25年で約40倍へ拡大し2024年末には1.6兆ドル規模に到達しました。​
成長の背景としては銀行規制強化による融資供給縮小を補う役割が大きく、AI・デジタル分野など高成長産業への直接融資が加速しています。​
システミックリスクの観測は現時点で限定的ですが、流動性や利回りに関する投資家の関心が続いており、特にアジア(日本含む)では新規案件やウエイト拡大が続いています。​

2025年11月の注目点と見通し
PE市場は出口環境(IPO、M&A等)が不透明で、資金回収や再投資ペースに課題あり。一方で資産多様化・グローバル展開が広がっています。​
プライベートクレジット市場は、米国を中心に高成長継続が予想され、特に銀行を介さないダイレクトレンディングが成長エンジンとなっています。​

両市場とも、グローバルな資金調達競争、運用リスク管理、規制強化への対応、ESG投資への流入――といったテーマが短中期的な注目領域です。​
このような状況から、PE・プライベートクレジット市場ともに多様化・拡大は続くものの、出口案件や資金流動性、規制変化をめぐる注意が必要となっています変化をめぐる注意が必要となっています。

2025年11月15日 土曜日

世界の動き 2025年11月14日 金曜日

今日の一言
「サンユー建設」
自宅の付近に2つの上場企業の本社がある。一つはアルプス電気、もう一つはサンユー建設だ。
昨日MBOが市場に広まり株価が急騰した。詳細は以下だ。
サンユー建設(証券コード1841)のMBO(マネジメント・バイアウト)が2025年11月12日に正式に発表された。カバロ企画(東京都大田区、同社副社長馬場雄一郎氏が代表)が主体となって、非公開化(上場廃止)を目的にTOB(株式公開買付け)を実施する.
・公開買付け(TOB)の概要
買付価格は1株あたり1,600円で、直近終値(1,250円)に対し約28~40%のプレミアムだ。
買付期間は2025年11月13日から12月25日までの30営業日.
買付予定株数は2,059,981株、下限は所有割合29.36%(957,500株).
公開買付代理人は三菱UFJモルガン・スタンレー証券、復代理人は三菱UFJ eスマート証券.
・経営陣と創業家の構図
カバロ企画はサンユー建設の創業家一族の資産管理会社
TOBが成立した後、サンユー建設株は上場廃止となる予定で、創業家や資産管理会社などはTOBに応募しない.
TOB成立後は株式交換が行われ、カバロ企画がサンユー建設の全株式を取得、創業家がカバロ企画株を持つ構図になる.
・MBOの目的・背景
上場維持コストの削減.
短期業績や株式市場の評価に左右されない迅速かつ柔軟な経営判断、機動的な経営資源配分の実現.
中長期的視点で企業価値の向上、新規事業開拓や組織改革の推進を目指す.
・その他
サンユー建設は本MBOに賛同しており、株主にTOB応募を推奨している.
MBO発表後、東京証券取引所から監理銘柄(確認中)に指定されている.
建築、不動産、金属製品、ホテルなど多角的な事業展開を行っている企業.
最新情報をもとにすると、サンユー建設の今後は非公開化・上場廃止決定後、創業家主導の経営体制が再構築される見通しだ.
【コメント】
年商100億円程度で自己資本比率が80%近い上場企業で、上場している意味は少ない。知名度の向上と人材の確保といったメリットよりも、上場に伴うディスクロージャやコンプライアンスコストのデメリットが大きくなっていたのだろう。自宅近くの上場企業の半分がなくなるのは少し寂しい。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.文化的貧困と孤独な男たち
【記事要旨】
ブッカー賞を受賞したデイヴィッド・サレイの小説『フレッシュ』 “Flesh” by David Szalay は、文化的・道徳的に疎外された現代の男性像を描いた冷たく厳粛な作品である。主人公はハンガリー出身の孤独な青年で、ロンドンで運転手として働きながら上流階級に入り込むが、友情も尊敬もない世界で空虚さを抱えて生きる。
●主なテーマと論点
– 文化的貧困と孤独:主人公は物質的には成功するが、精神的・文化的な空白を抱えている。
– 男らしさの危機:現代社会における若い男性の疎外感や道徳的支柱の欠如が描かれる。
– 非道徳的な世界観:登場人物に尊敬すべき存在はなく、教育や育ちが人間性を高めるという希望もない。
– 移民と根なし感:主人公の孤独は移民であることに加え、文化的な繋がりの欠如から来る。
– 世代間の視点:安定した家庭環境の有無が若者の精神形成に大きく影響すると語られる。
●文学界への視点
– 若い女性作家の台頭は歓迎されるが、男性の疎外感を描く作家の声も重要である。
– 『フレッシュ』は読むのに覚悟が必要な作品だが、深い洞察を与える。
– 読後におすすめの、より気軽に読める作品としてイアン・マキューアン Ian McEwanの『What We Can Know』が挙げられている。
【コメント】
一風変わった書評のような記事だ。『Flesh』というタイトルは、主人公の人生を通じて描かれる「身体を通じた存在の実感」や「言葉にならない感情の表現」を象徴するものであり、現代文学における沈黙と感覚の力を強く示しているようだ。

2.パキスタンは巨額支出でトランプ大統領に取り入る
【記事要旨】
パキスタンは、トランプ政権とのこれまで険悪だった関係を好転させた。これはイスラマバードの巧みな外交戦略によるものとされている。
パキスタンは今春、ワシントンの著名なロビー活動会社と一連の高額契約を締結した。ホワイトハウスがパキスタンに有利な新政策を発表したわずか数週間前のことだ。この政策により、パキスタンは世界有数の関税率を実現し、最大のライバルであるインドに対して優位に立つことができた。
トランプ大統領に影響を与えるための、この作戦には首相側近数名が起用されたという。
【コメント】
パキスタンの現在の首相はシャリフ氏だ。2024年3月、パキスタン議会は「イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)」のシャバズ・シャリフ前首相を首相に再選した。シャリフ氏は下院での投票で201票を獲得。過半数の169票を超え、首相に選ばれた。一方、若者から強い支持がある服役中のイムラン・カーン元首相が率いる「パキスタン正義運動(PTI)」が推していた対立候補のオマル・アユーブ氏は92票を獲得した。
カーン氏の逮捕をめぐって混乱していたパキスタンの政治は現状は小康状態のようだ。

其の他の記事
・トランプ大統領は政府再開のための歳出法案に署名し、米国史上最長の閉鎖に終止符を打った。
・フランスは、130人が死亡、500人以上が負傷した2015年のパリ同時多発テロ事件の10周年を記念した。
・ロシアが戦略都市ポクロフスクの制圧目前となる中、ウクライナ軍の司令官らは、ウクライナが都市を必要以上に長く掌握している可能性があると指摘している。
・イスラエル人入植者は、占領地ヨルダン川西岸で過激派による暴力が激化する中、モスクを焼き払った。
・イラクのモハメド・アル=スーダニ首相は、同国の総選挙でリードしているように見えたが、得票率は政権樹立に必要な票数には届かない可能性がある。
・シリアの元治安当局者は、長年にわたりヨーロッパで人目につく場所で生活していた後、拷問の罪で起訴された。

2025年11月14日 金曜日

世界の動き 2025年11月13日 木曜日

今日の一言
「JPモルガンへの巨大な罰金」(少し長いですが事件をまとめました)
 ドイツ金融監督庁(BaFin)は、2025年11月6日にJPモルガンSEに対し、マネーロンダリング対策の不備を理由に過去最高額となる4,500万ユーロ(約80億円)の制裁金を科した。問題の核心は、疑わしい取引の報告義務違反にある。
● 制裁の概要と背景
 対象機関:JPモルガンSE(JPモルガン・チェースのEU統括法人、フランクフルト拠点)
 制裁金額:4,500万ユーロ(約52.5百万ドル)
 違反内容:
 2021年10月4日〜2022年9月30日の間、疑わしい取引報告(SAR)を「遅延なく」提出しなかった。報告義務違反が「組織的かつ継続的」であったとBaFinは判断。
 法的根拠:ドイツのマネーロンダリング防止法(Geldwäschegesetz)に基づき、金融機関は疑わしい取引を即時にFIU(金融情報機関)へ報告する義務がある
● なぜ問題なのか?
 即時報告の重要性:FIUが迅速に捜査や資金凍結を行うためには、報告の「即時性」が不可欠。JPモルガンSEの不備は、内部監視体制の不備や報告プロセスの遅延に起因しており、結果としてドイツのAML(マネロン対策)体制の信頼性を損なうものとされた。
●制裁の意義と影響 
 BaFin史上最大の制裁金:これまでの記録(ドイツ銀行への4,000万ユーロ)を上回る。

 EU AMLA設立直前の象徴的措置:2025年7月にフランクフルトに設立されるEUの新たなAML監督機関(AMLA)を前に、ドイツ当局の姿勢強化を示す動きと解釈されている。
 JPモルガンの対応:
「過去の問題であり、当局の捜査を妨げた事実はない」とコメント。既に内部体制の強化と職員教育の徹底を実施済みと説明。
●今後の注目点
 JPモルガンは2026年にドイツでChaseブランドのデジタル銀行を展開予定であり、今回の制裁はレピュテーションリスク(評判リスク)としても注目されている。国際金融機関に対するローカル規制順守の重要性が改めて浮き彫りになった事例だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.緊張地域での2件の爆殺事件
【記事要旨】
●インドとパキスタンで相次いだ爆破事件の概要
– 今週、インド(ニューデリー)とパキスタン(イスラマバード)で爆破事件が発生し、両国でそれぞれ約12人が死亡。
– 犯行の直接的関連性はないが、パキスタンではタリバンが犯行声明を出した。
– 両国間の緊張が再び高まり、5月の軍事衝突の再来が懸念されている。
●インドの対応と背景
– インドは慎重な姿勢を保ちつつ、デリーの爆発をテロとして捜査中。犯人は未特定。
– カシミールでの宗教的虐殺事件後、モディ首相はパキスタンへの軍事攻撃を実施し、今後のテロは戦争行為とみなすと宣言。
– インドはISなど複数のテロ組織を警戒している。
●パキスタンの反応と主張
– イスラマバードの裁判所前で自爆テロが発生。パキスタン政府はインドの関与を主張。
– タリバン政権がインドと連携しているとする見方が強まり、国内の暴力行為の責任をインドに転嫁。
– シャリフ首相は複数の攻撃が「インドの扇動」によるものと非難。インド外務省はこれを否定。
●地域情勢と外交の行き詰まり
– 両国の外交関係は近年最低水準。軍・政治指導者の強硬姿勢が目立つ。
– 一部の識者は冷静さを呼びかけており、全面戦争の可能性は低いとする見方も。
– ただし、春の衝突ではトランプ大統領の介入がなければ戦争に発展していた可能性があり、事態の急速なエスカレーションには警戒が必要。
【コメント】
 南アジアで核兵器を保有する2大国の緊張関係の激化だ。トランプに何かの効力があるなら、また出張ってもらおう。平和賞にさらに近づく。

2.エプスタイン被告のメール、トランプ大統領が自身の行為を知っていたと主張
【記事要旨】
 民主党議員らは昨日、刑務所で死亡した性犯罪者ジェフリー・エプスタイン被告が、トランプ大統領が自身の性的人身売買組織の被害者の一人と「私の家で何時間も過ごした」と書いたメールを公開した。あるメッセージの中で、エプスタイン被告はトランプ大統領が「少女たちのことを知っていた」と主張していた。
 数時間後、共和党議員らはエプスタイン被告の遺産管理団体から2万3000ページに及ぶ膨大な文書を公開した。共和党は、エプスタイン被告と不和になるまで友人だったトランプ大統領を守ろうとしてきた。しかし同時に、エプスタイン被告と権力者との交流の完全開示を求める有権者の要求にも直面している。
 トランプ大統領は、エプスタイン被告の性的人身売買組織への関与やその知識を断固として否定している。ホワイトハウス報道官は昨日、民主党が「トランプ大統領を中傷するために虚偽の物語をでっち上げようとしている」と非難した。
【コメント】
 これだけ証拠がそろってもトランプは言い逃れることができるのだろうか。たとえ、罪に問われなくても、MAGA層からの支持の低下はまぬかれないとは思う。

其の他の記事
・イスラエルは、ガザ地区北部への国境検問所を再開したと発表した。これは、同地区への支援物資の搬入を目指す団体からの長年の要請だった。
・高市早苗首相は、「過労死death from overwork」の爪痕が残る日本で午前3時に会談を予定したことで批判を浴びた。
・イスラエル大統領は、トランプ大統領から、汚職罪で裁判にかけられているベンヤミン・ネタニヤフ首相の恩赦を求める書簡が届いたと述べた。

2025年11月13日 木曜日

世界の動き 2025年11月12日 水曜日

今日の一言
「社会民主主義」
 ニューヨークの新市長マムダニ氏は自身を社会民主主義者と標榜している。トランプは彼を共産主義者と批判しているが、どう違うのだろうか。
 社会民主主義とは、議会を通じて資本主義社会の矛盾を解決し、段階的に社会主義を実現しようとする思想だ。共産主義のプロレタリア独裁を否定し、社会保障制度の充実や公正な市場経済の実現、民主的な政策運営を重視する点が特徴だ。
 主な特徴は以下だ。
・議会主義: 共産主義のように革命ではなく、議会を通じた社会政策や民主的な手段で社会変革を目指す。
・混合経済: 公有制と私有制企業が共存する混合経済を肯定する。
・社会保障の重視: 福祉や医療、教育などの公共サービスを充実させ、人々の生活条件の向上を図る。
・市場経済の調整: 市場の機能を認めつつも、格差を放置せず、社会的な規制や監視を通じて公正な市場経済を目指す。
・階級の融和: 階級間の対立を激化させるのではなく、社会の各階級を結束させ、共同の利益を追求する。
 ドイツを中心に一時は欧州を席巻した社会民主主義は衰退してきた。理由はいくつか考えられる。
・冷戦終結と共産主義の終焉:
 1989年の東欧革命と1991年のソ連崩壊により、社会民主主義が目標としてきた平等社会の実現を目指すモデルが、共産主義の挫折と結びつけられるようになった。
・共産主義国家の行き詰まり(特権階級による富の独占、官僚主義、政治的弾圧など)が社会主義全体への不信感につながった側面もある。
・グローバル化への対応の難しさ:
 グローバル化は、資本の移動を容易にし、国内産業の競争力を低下させた。
 社会民主主義が重視してきた、国家による産業保護や再分配といった政策が、グローバルな市場経済の中で制約を受けるようになった。
 経済成長を優先するネオリベラリズム(新自由主義)の台頭と、福祉国家への財政的負担増大も、衰退に拍車をかけた。
・中道左派政党の変化:
 社会民主主義を掲げていた中道左派政党の多くが、市場経済を容認し、財政規律を重視する「第三の道」やネオリベラリズム的な政策へと転換した。
 これは、伝統的な社会民主主義を支持してきた層からの支持を失い、労働者階級という伝統的な支持基盤を弱体化させる結果につながった。
 米国ではトランプの強権政治への対抗策として社会民主主義が再評価されているようだ。日本では参政党による右巻きのブームが発生している。庶民の多くが生活苦を感じる現在、清新なリーダーが率いる社会民主主義政党が注目される時期かと思う。既存政党ではれいわ新選組が近いようだが、今一つ伸びていない。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.女性指導者と右派
【記事要旨】
 ●高市早苗氏の登場とG7の文脈
– 高市氏の自民党党首当選は、日本で約250年ぶりの女性指導者誕生という歴史的快挙。
– G7ではイタリアのメローニ首相と並び、女性指導者は2人に。
– 過去のG7女性指導者の多くは右派出身で、左派はフランスのクレソン氏のみ。
 ●女性指導者の少なさと政治的傾向
– 世界的に女性指導者は少数で、国や時期が異なるため共通パターンの特定は困難。
– G7以外では左派女性指導者も存在(メキシコ、デンマークなど)。
– 先進国では左派政党が女性指導者を輩出できていない傾向がある。
 ●左派の矛盾と右派の台頭
– 左派はジェンダークオータ制など女性進出を推進してきたが、指導者には結びついていない。
– 右派の女性指導者(高市氏、メローニ氏)は、伝統的価値観を支持しつつも、アウトサイダーとして台頭。
 ●政治危機と女性の登場
– 多くの女性指導者は政治的混乱期に登場(サッチャー、メルケル、メイなど)。
– 現代の政治危機の常態化が、異質な存在としての女性指導者に信頼を与える構造を生んでいる。
 ●今後の展望と懸念
– 右派女性議員の増加は鈍化傾向。
– フランスでは極右のルペン氏が高支持率を維持し、2027年の大統領選が注目される。
【コメント】
 日本の地方の首長選では左派系の女性首長も誕生している。山形県知事、仙台市長、杉並区長などがそうだ。国政の自民党のように二世、三世議員が独占する世襲政治から、地方での変化を期待したい。

2.パキスタンの首都で死者を出した攻撃
【記事要旨】
 昨日、イスラマバードの裁判所前で爆弾が爆発した。首都では過去10年間、同様の攻撃はほとんど発生していなかったが、少なくとも12人が死亡、27人が負傷した。
 パキスタン政府に対して激しい反乱を続けているパキスタン・タリバンが犯行に関与したかどうかについては、情報が錯綜している。あるアナリストは、厳重な警備体制が敷かれたイスラマバードでの今回の攻撃は、パキスタンの治安にとって不吉な兆候だと警告した。
 この攻撃は、ニューデリーの地下鉄駅近くで少なくとも8人が死亡した爆発の翌日に発生し、警察はテロ攻撃の可能性もあるとして捜査している。2つの攻撃の関連性を示す証拠はないが、カシミールでのテロ攻撃をきっかけに今年発生したインドとパキスタンの軍事衝突を受け、緊張が高まっている。
【コメント】
 インドとパキスタンで相次いで爆発とくれば、イスラムとヒンズー原理主義の暗躍かと思いがちだが、タリバンという要素もあった。テロの激化を懸念する。

其の他の記事
・イラク国民は、次期政権がイラン支援民兵の武装解除を行うことを望んでいる米国が注視する選挙で、新たな議会を選出した。
・米国上院は、イラク史上最長の政府閉鎖を終わらせる法案を可決し、下院に送付した。
・ソフトバンクは、人工知能(AI)への新たな投資資金を調達するため、保有するNVIDIAの株式すべてを58億ドルで売却した。【コメント:売り時を捉えた印象だ。孫さんはさすがだ】

・日本を代表する映画スターの一人で、「乱」での演技で知られる仲代達矢さんが92歳で亡くなった。

2025年11月12日 水曜日