世界の動き 2024年6月12日 水曜日

今日の言葉
「GAA」
 GAAとはゲート・オール・アラウンド。半導体の設計方式の一つでゲートが半導体チャネルを全面的に囲む構造となっており、高い集積度、低電力消費、高性能を実現する最先端の半導体アーキテクチャーだ。
 米国は、中国の利用制限措置を検討している。GAAは半導体を高性能化させる技術。エヌビディアなどの半導体メーカーや、台湾積体電路製造(TSMC)などは向こう1年以内にGAAで設計された半導体の量産開始を目指している。
 今後GAAと言う言葉を眼にする機会が増えそうだ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.ハンター・バイデン、銃器関連罪で有罪判決
【記事要旨】
 大統領の息子ハンター・バイデンは、連邦銃器申請書に虚偽の記載をしたとして、3件の有罪判決を受けた。再選キャンペーンの最終段階に入るバイデン大統領にとって、この判決は個人的に打撃となる。
 ​​最大で懲役25年と罰金75万ドルが科される可能性がある。しかし、量刑ガイドラインではその刑罰のほんの一部が規定されており、武器を使って暴力犯罪を犯していない初犯者は通常、懲役刑を受けない。量刑日は未定。罪状の背景は以下のとおり。
 バイデンの銃器関連事件は、昨年彼に対して提起された2件の連邦起訴状の中で最も軽いと広く見なされている。彼は、長年にわたる麻薬、アルコール、浪費癖に起因する深刻な税金の告発に直面している。
 背景: 裁判では、バイデン氏のクラック コカイン中毒、無謀な行動、破滅的な浪費が公になった。これは、兄のボー・バイデン氏の未亡人を含む 3 人の元恋人によって語られた。
 大統領の反応: バイデン氏は、自分とファーストレディのジル・バイデン氏は、ハンター・バイデン氏が「回復に向けて非常に強く進んでいる」のを見て誇りに思うと述べた。大統領は息子に恩赦を与えないと述べている。
【記事要旨】
 トランプの判決と痛み分けの印象だ。エリートの家庭に育った息子がどうして麻薬の常習者になったのか。母親と兄の死が引き金になっているようだが、詳細は今後明らかになってくるだろう。

2.ハマスとイスラエル、停戦合意受け入れ圧力に直面
【記事要旨】
 国連安全保障理事会が米国が支援するガザ停戦計画を承認した翌日、イスラエルとハマスが正式に受け入れるかどうかは不明のままだ。
 イスラエル当局者は、この提案により、ハマスの能力を破壊し、ガザの人質全員を解放するなど、イスラエルの戦争目標を「達成できる」と述べたが、イスラエルがこの合意を受け入れるかどうかについては明言を避けた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この計画について断固たる態度を取ることを繰り返し拒否している。
 ハマスの幹部は、同グループはこの提案を「前向きに受け止めた」と述べた。昨日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、合意はガザのハマス最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏にかかっていると述べたが、シンワル氏はこの提案を支持するかどうかは明らかにしていない。
 人質救出:イスラエル軍は、人質の一部を乗せたトラックが故障し、武装勢力に包囲されたため、イスラエルが空爆を命じ、多数のパレスチナ人が死亡したと発表した。
 ラ​​ファ:イスラエル軍は、武装勢力が活動していた建物を爆破し、兵士4人が死亡、さらに数人が負傷したと発表した。
【コメント】
 NYタイムズによると、停戦はすぐそこのようだが、どうなるか。

3.ナイジェリアの悪化する経済危機
【記事要旨】
 ナイジェリアでは、同国が過去10年間で最悪の経済危機に直面しており、何百万人もの人々が食料、燃料、医薬品の購入に苦労している。2年前、ナイジェリアはアフリカ最大の経済大国だったが、今年は4位に転落する込みだ。。
 この危機は、燃料補助金の一部廃止と通貨切り下げに根ざしていると考えられている。15か月前に選出された大統領が実施したインフレ対策により、貧困率がさらに上昇すると予想される。
【コメント】
 ナイジェリアについて
 アフリカ大陸西岸部に位置するアフリカ最大の産油国。原油の他にも天然ガス、スズ、鉄、鉱石、石灰岩、鉛、亜鉛など豊富な天然資源に恵まれています。人口も約2億2000万人とアフリカ最大(世界7位)であることから、しばしば「アフリカの巨人」と称される。
 また、数多くの民族で構成される多民族国家としても知られる。ハウサ(北部:29%)、ヨルバ(西部:21%)、イボ(東部:18%)の三つの主要グループに、少数民族を加えると300を超えます。公用語の英語をはじめ、国全体で520を超える多様な言語が使われている。
 1960年に英国から独立し、ラゴス(旧首都)はアフリカを代表する都市に成長している。
 日揮がプラントで人質を取られ日本人の死亡事件が2013年に起きたのはアルジェリアでした。

その他の記事
フランス:
 主流保守党の党首が、今後の選挙で極右との連携を呼び掛けたが、これは党の方針からの衝撃的な離脱である。
マラウイ:
 大統領は昨日、副大統領が月曜日の飛行機事故で死亡したと述べた。
ウクライナ:
 米国はウクライナに、最も優れた防空兵器の1つであるパトリオットミサイルシステムをもう1つ提供する。数日中に前線に配備される可能性がある。
イタリア:
 同国は今週、G7を主催する。EU選挙で大勝したジョルジア・メローニ首相にとっては、影響力を示すチャンスだ。
経済:
 世界銀行は世界経済成長の見通しを引き上げたが、貿易障壁の高まりについて警告した。
中国:
 アイオワ州の大学の講師4人が公園で襲撃された事件で、警察は55歳の男性を逮捕した。
貿易:
 米国は、新疆ウイグル自治区での強制労働プログラムとの関連を理由に、中国企業3社からの輸入を禁止した。
コロンビア:
 米国の陪審は、数十年にわたる内戦中に右翼の準軍事組織が行った8件の殺人事件について、チキータ・ブランズの責任を認めた。陪審はバナナ生産者に対し、遺族に3,830万ドルの支払いを命じた。
コガシラネズミイルカVaquitas:
 研究者らは、世界で最も絶滅の危機に瀕している海洋哺乳類である小型のネズミイルカの個体数が過去最低を記録した。

2024年6月12日 水曜日

 

世界の動き 2024年6月13日 火曜日

今日の言葉
「住宅の維持コスト」
興味深いBloombergの記事を紹介したい。
『一般的な一戸建て住宅を所有・維持するための年間平均支出(住宅ローンを除く)は、3月時点で1万8118ドル(約280万円)に上ることが、個人向け金融サイト「バンクレート」の調べで分かった。この計算は月の販売価格中央値43万6291ドルに基づく。
この分析は固定資産税や住宅保険料、バンクレートの分析は固定資産税や住宅保険料、エネルギーコスト、インターネットとケーブルの料金、そしてメンテナンス費用として販売価格の2%を考慮している。こうしたコストは多くの住宅購入者が過小評価する傾向があるという。として販売価格の2%を考慮している。こうしたコストは多くの住宅購入者が過小評価する傾向がある』
コストは購入価格の4.2%に相当し、大きい印象を受ける。但し、エネルギーコスト、インターネットとケーブルの料金は持ち家でも借家でも共通して掛かる。固定資産税と住宅保険料がどのくらいかかるかが本当の持ち家コストだ。
固定資産税が米国より大幅に低い(個人的な印象では約半分)日本では、米国より低いと思われるが、このような計算は有益だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.国連は米国が支持する停戦決議を採択
【記事要旨】
米国はガザでの停戦に合意するようハマスとイスラエルに圧力をかけようとしており、国連安全保障理事会は米国が提出した即時停戦を求める決議を採択した。ブリンケン国務長官は昨日、協議のためイスラエルを訪問していた。
ブリンケン氏はイスラエルのネタニヤフ首相と会談。同日早朝、同氏はカイロでエルシーシ大統領と会談した。エジプト政府は協議の仲介に協力している。
イスラエルがハマスに合意案を提示してから2週間以上が経過したが、イスラエル政府は正式に合意を受け入れておらず、ハマスからも公式な反応はない。政府内の極右メンバーからの圧力に直面しているネタニヤフ首相は、ハマスの軍事力と統治能力が破壊されるまで攻撃を続けるべきだと述べている。
国連の投票:15カ国中14カ国が賛成票を投じ、拒否権を持つロシアは棄権した。決議を可決したことで、同理事会は、これまで3回停戦決議を拒否してきた米国に外交的勝利をもたらした。
今後の予定:ブリンケン氏は、イスラエルとハマスの仲介役であるカタールも訪問する予定だ。
イスラエルの人質作戦:ガザの住民は、襲撃中に激しい爆撃があり、イスラエル人人質4人が救出され、多数のパレスチナ人が死亡したと説明した。「病院全体が巨大な救急室になった」とガザの医師は語った。
【コメント】
奇妙な停戦交渉だ。当事者が合意していないのに米国案が安保理で可決されたが、イスラエルに対し強制力は無い。国連がハマスを抑え込んでくれるわけでは無いのでイスラエルの停戦拒否は続くだろう。

2.右派の勝利にもかかわらず、欧州では中道が政権維持
【記事要旨】
欧州の主流保守派である欧州人民党は、暫定結果によると、欧州議会選挙で好成績を収め、議席もいくつか増やして1位となった。右派はEU27カ国で好成績を収めたが、中道は政権を維持した。
これは、有権者がさらに右派のライバルに流れないように、より右寄りの政策を統合するという同党の戦略が功を奏した。選挙から浮かび上がった最も重要な傾向は以下のとおりだ。
緑の党:最大の敗者。2019年には好成績を収め、議会で重要な進歩派勢力として浮上したが、議席の4分の1を失った。
AfD:ドイツの極右政党は、一連の公的なスキャンダルの後、2人のトップ候補が選挙活動を禁止されたにもかかわらず、記録的な勝利を収めた。
フランス:痛恨の敗北後にマクロン大統領が早期選挙を呼びかけた動きを、アナリストらは分析している。この決定は、野党勢力の組織化を阻止し、有権者にマクロン氏と極右の間の厳しい選択を突きつけるための手段となる可能性がある。
【コメント】
欧州でも自国・自分中心主義が広まっている。物価の上昇と移民流入への嫌悪感が右派の勝利につながった。緑の党の大幅後退は、EUの人々の環境問題への飽きを表しているだろう。今後の環境政策の行方に注文したい。

3.Apple が AI 競争に参入
【記事要旨】
Apple は、世界中の 10 億人を超える iPhone ユーザーにこの技術を提供する計画で、生成 AI 競争への参入を推し進めた。同社は新機能を発表し、プライバシーに配慮しながらこの技術を自社製品に統合する計画も強調した。
同社は昨日、Apple Intelligence と名付けたシステムを強化するために生成 AI を使用することを明らかにした。このシステムは、メッセージと通知を優先し、テキストを校正して提案できるライティング ツールを提供する。また、同社が放置してきた Siri の大幅なアップグレードにもつながる。
Apple は、同社の AI 機能の一部をサポートするために、ChatGPT のメーカーである OpenAI と契約を結んだ。
【コメント】
この動きはNVIDIAにプラスだ。マイクロソフト、アップル、アマゾン等、どこがAIを強化しようと、同社のチップを必要とするからだ。

その他の主要記事
ウクライナ:
資金の不正管理を指摘した当局者が辞任。援助の使い道に関する同盟国の懸念を和らげようとするウクライナ政府の取り組みに打撃となった。
ハンター・バイデン:
銃器裁判の評決を巡り陪審が審議を開始。バイデンは証人として出廷しなかった。
米国:
バイデン大統領は、米国市民の不法滞在配偶者を国外追放から保護し、合法的に働けるようにする計画を検討している。
気候:
大手環境保護団体が、かつては過激なアイデアだった地球を人工的に冷却する研究に資金を提供する。
マラウイ:
アフリカの同国副大統領を乗せた飛行機が昨日の朝行方不明になり、捜索が行われている。

2024年6月11日 火曜日

世界の動き 2024年6月10日 月曜日

今日の言葉:
「米国の株高の行方」
 NVIDIAの株式分割が終わり、上期のハイテク株の過熱状況だけでは株高を維持できないという見方が広まっている。下期に株式市場が上期同様のリターンを出すには、株高の裾野の広がりが必要だ。
 テク大手の利益の伸びは今後著しく鈍化する見通しだが、素材やヘルスケアといった業界では利益拡大が見込まれており、株高を維持する可能性が高いというのが楽観的なシナリオだ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.フランス大統領、EU投票後に再選挙を要求
【記事要旨】
 欧州選挙で極右に大敗したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は昨日、下院を解散した。同大統領は6月30日から議会選挙を開始するよう要求した。
 マクロン大統領の決定は、欧州議会選挙の結果がいかに悲惨であるかを示すものだった。同大統領の中道政党は、フランスの第一党となるマリーヌ・ル・ペン氏の極右国民連合の約半分の支持を得て選挙を終える見込みだった。
 「国家主義者や扇動家の台頭は、我が国と欧州にとって危険だ」とマクロン大統領は述べた。「この日以降、何もなかったかのように過ごすことはできない」
 EU加盟27カ国が実施する欧州議会選挙の初期予測では、いくつかの極右政党が大幅な得票数を伸ばしたとみられる。結果が確定すれば、有権者の不満を測る強力な指標となり、政権与党への痛烈な非難となるだろう。
 「この動きは広く予想されておらず、その影響はまだ不明なので、マクロン大統領がなぜ今この動きを決めたのか、はっきりと言うのは少々難しい」とフランスを担当する同僚は語った。「しかし、彼の国内政策は過去2年間、下院で多数派によって妨げられており、極右勢力の強さが、これまで通りのやり方ではもう進めないと大統領を確信させたようだ。」
 右派の台頭:有権者がナショナリズムとアイデンティティに集中したため、右派政党は勢力を伸ばした。これらのテーマは移民や文化政策と結びつくことが多い。コロナ政策に対する長引く怒りも一因となった可能性がある。
 マクロン大統領の決断は、7月にパリで夏季オリンピックが開幕する数週間前に下され、フランスに深刻な政治的不確実性の時代をもたらした。
 ドイツ:同国当局によって公式に「疑わしい」過激派グループとされた極右政党「ドイツのための選択肢」が好成績を収めた。予測される結果では、同党はドイツで第2位の政党となるだろう。
【コメント】
 EU議会を巡る動きや指導者の腐敗・失政いついては以下の記事がとても役に立つ。
 「欧州議会選挙2024:フォン・デア・ライエン委員長再選を巡る議論」川口 マーン 惠美
 https://agora-web.jp/archives/240604235424.html

2.ベニー・ガンツ、イスラエル政府を辞任
【記事要旨】
 戦争内閣の主要メンバーであるイスラエルの政治家ベニー・ガンツは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相のガザ戦争への対応を理由に昨日政府を辞任した。この動きでネタニヤフ首相が辞任に追い込まれる可能性は低いが、ガンツの穏健な立場は政府の国際的信用を高めるのに役立っていた。
 先月、ガンツは、ネタニヤフ首相が人質の帰還やガザの将来の統治など、重要な問題に直ちに答えるよう努力しなければ辞任すると脅した。ガンツの政党がなければ、首相の政府は右派のリクード党、2つの極右政党、2つの超正統派派閥で構成されることになる。アナリストらは、ガンツの辞任は連立政権内の極右大臣らを勇気づける可能性があると述べている。
 戦争:イスラエルが土曜日にガザ中央部で人質4人を救出する作戦をとった際、激しい空爆と地上作戦が行われ、200人以上が死亡したと、同地域の病院関係者が語った。
 イスラエル:救出に対する高揚感はすぐに厳しい現実に取って代わられた。ガザには約120人の捕虜が残っており、イスラエル人は人質救出の時間がなくなりつつあることを恐れている。イスラエル当局は既に人質の約4分の1が死亡していると発表している。
 ガザ中央部:衛星画像では、ラファに逃げた人々が再び移動し、新たなテント村が出現している様子が映し出されている。
【コメント】
 4人の救出に狂喜するイスラエル市民の映像と、新たな空爆の犠牲となった多くのガザ市民の映像が同時に流れる。何度も繰り返すが「小の虫は殺しても構わない」イスラエルの国是は変らない。

3.モディ首相、3期目開始
【記事要旨】
 ナレンドラ・モディ氏は昨日、インド首相として3期目の就任宣誓を行った。連立政権を余儀なくされ、議会の過半数を失った今、同氏は謙虚に控えめな口調を取っている。
 同氏は金曜日の演説で「政府を運営するには過半数が必要だ。だが、国を運営するには合意が必要だ」と和解的な口調で語った。また、同氏は主要な連立パートナーを前面に押し出した。しかし、疑問は残る。モディ氏は、20年以上の選挙で政権に就いたが、合意形成の担い手になれなかった。
【コメント】
 とりあえず連立政権でのモディ首相のお手並み拝見というところ。

その他の主要記事
ベトナム:
 当局はフェイスブックへの投稿を理由にトップジャーナリストを逮捕し、「民主的自由を乱用した」と非難した。人権団体によると、この容疑は政府の批判者に対して頻繁に使われている。
英国:
 リシ・スナク首相は、フランスでのノルマンディー上陸作戦記念式典から早めに退席したことを謝罪した。
ウクライナ:
 米軍は、ロシアが依然として砲兵力で優位に立っているものの、米軍の砲弾は効果を上げていると述べている。
イラン:
 今月行われる大統領選挙には、国会議長を含む6人の候補者が出馬することが承認された。
米国:
 ノースダコタ州知事のダグ・バーグム氏が、ドナルド・トランプ氏の副大統領候補として浮上している。
西アフリカ:
 この地域における米国主導の長年にわたる高額な対テロ活動は、ほとんど失敗に終わった。

朝の読み物
 日本の円安は観光客を日本に引き寄せている。しかし、京都などの都市の人気観光地が手に負えないようになり、かつては観光客に知られていなかった場所に外国人観光客が殺到するようになり、一部の日本人住民は不満を募らせている。

2024年6月10日 月曜日

 

よくある不正事案 (備忘録的メモ)

Googleアラートで「金融庁」をフォローするといろいろな事案が上がってくる。最近の事案で最も大きいのが三菱UFGによる顧客情報の共有事件だ。

6月7日の Business Journal に詳しいフォロー記事が掲載されていた。示唆に富む記事なので引用したい。

『三菱UFJ銀行が顧客企業の事業統合などに関する非公開の情報を、同じグループ傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券に流していたとして、証券取引等監視委員会が3社を行政処分するよう金融庁に勧告する検討に入ったという。
7日付け日本経済新聞記事などが伝えている。三菱UFJ銀行が顧客企業に対し、証券2社との取引を条件に貸出金利を優遇することなども提案していたという。

三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスが合併して2005年に発足したのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)。商業銀行、信託銀行、証券会社、カード会社、消費者金融会社、資産運用会社などを傘下に持つ総合金融グループだ。

連結総資産は約404兆円(2024年3月末時点)を誇る国内1位の金融グループ。24年3月期の純利益は過去最高の1兆4907億円で国内金融グループ1位であり、同期決算の純利益ベースでは1位のトヨタ自動車に次いで国内2位。中核の三菱UFJ銀行の預金残高は国内トップの約200兆円と名実ともに国内トップバンクの座にある。

MUFJの行動の何が問題か? 「銀行は融資などで顧客企業の生存を左右する力を持つ優先的地位にあり、その地位を利用してグループの証券会社を利用するよう圧力をかけていたことになり、『ウチの証券会社を使ってくれないなら、貴社は損することになりますよ』と脅しているようなもの。法的問題以前に銀行のモラルとしてアウトで、極めて悪質だ。また、銀行は一定の条件を満たせば証券の仲介はできるが、勧誘行為は認められておらず、貸出金利優遇をダシにグループの証券会社の利用を迫るというのは、まさに勧誘行為に該当する」(証券会社社員)

なぜMUFGは不正に走ったのか? 「旧三菱UFJ証券とモルガン・スタンレーの提携がスタートして10年以上たつが、純利益ベースでは野村ホールディングス、みずほ証券、大和証券に遠くおよばない状況が続いている。背後からは2年前の相場操縦事件の傷が癒えて業績が伸びているSMBC日興証券が迫ってきており、数年以内に抜かれる恐れもある。そうしたなかで、なんとか証券部門の業績を底上げしなければならないという強いプレッシャーが、グループ内で生じていたのではないか」(別の証券会社社員)』

海外ではこの手の事件は自分の報酬・ボーナスを大きくするのが主なインセンティブだ。日本では、ボーナスで巨額な違いが出るのはまれであり、優秀な成績を基に出世するのがインセンティブになっているのだろうと思われる。

いずれにしても、優越的地位を利用して顧客にいうことを聞かせるのは昔も今も変わらない金融機関の体質だ。画期的な商品の提供で顧客に納得してもらい儲けるのが商売の王道だ。

2024年6月9日 日曜日

ダイハツの内部監査(備忘的メモ)

 同社の「抜本的な再発防止策についてのご報告」(2024年2月9日公表)より

 具体的な再発防止策
 ⑥内部監査体制の強化
これまでは、監査部として執行側で行うべきコンプライアンスなどの事務局業務に工数の多くをとられ、本来行うべき内部監査業務を十分に行えていませんでした。
 今後は、幅広く、第三者的に監査部が内部監査に注力・専念できる組織にします。その為に、次の 3 点について対応を行います。

 一つ目は、これまでできていなかった、開発、認証プロセスも含めた会社の各機能に対して、網羅的に監査を実施します。
 二つ目は、監査を確実に行うために必要な知見及び人員のリソースを改めて検証したうえで、必要な人員を確保します。
  三つ目は、GRC 推進部(仮称)を設立し、本来執行側にて行うべきリスクマネジメント・コンプライアンスなどに関する事務局業務を移管し、本来取り組むべき内部監査に注力、専念します。

<監査部:内部監査対象>
 1) 経営・ガバナンス
 2) SDGs(人権、環境その他)
 3) 労務・購買・経理・情報管理
 4) 製品監査(開発~認証~生産)
 5) 販売・サービス

<専門組織・委員会の新設>
 会社全体のリスク・コンプライアンスを把握しコントロールする機能として、GRC 推進部(仮称)を新設します。
 各本部からリスク・コンプライアンスを吸い上げ、分析・評価を実施して、後述の GRC 委員会(仮称)へ上程します
 併せて、会社としてリスク・コンプライアンス情報を認知し経営判断を行う機関として、最高リスク管理責任者(取締役)をトップとした GRC 委員会(仮称)を立ち上げます。

<GRC 委員会(仮称)の概要について>
目的 :リスクマネジメント・コンプライアンスについての会社としての判断を行い、執行側の具体的活動、継続的改善を促進する。
開催頻度 :年 4 回
メンバー構成:最高リスク管理責任者(取締役)、
       取締役・監査役(外部)、本部長
立ち上げ時期:2024 年 4 月(予定)

【コメント】
 ダイハツの第三者委員会が出した調査報告書(2023年12月20日公表)によると、内部監査は2018年に、法規認定室を対象とした型式認定プロセスの適正性監査を実施した。業務プロセスは「上司の承認プロセスが遵守され、がんじがらめの内外ルールで不正の入り込む余地はない」と結論付けている。その後は同様の監査は実施されていない。
 内部監査が行う業務監査としては不十分と言わざるを得ない。
 今回の不正を踏まえ、内部監査には監査のスコープを広げ、能力のある監査人を揃え、適切な業務監査を行ってもらえる体制を整備するという経営陣の意思が読み取れる。
 GRC委員会を作り、ガバナンス、リスク・コントロール、コンプライアンスを一元的に管理する委員会を整備するのは一歩前進だが、「仏作って魂入れず」にならないように注視する必要がある。

2024年6月8日 土曜日