外交交渉とゲームの理論

ウクライナの情勢を理解するための古典を求めて探し回った。
 ”The Strategy of Conflict”(「紛争の戦略」邦訳)は1963年にThomas Schellingによって著された古典だ。国際紛争・国際交渉の専門家である彼は2005年にノーベル経済学賞を受賞している。

 Youtubeで、Game theory of conflict by Thomas C Schelling を見つけた。
 https://www.youtube.com/watch?v=Tnys7k8c7uU Oxford大学で2016年に行われたセミナーのVideoだ。この年の12月にSchellingは95歳で亡くなっているから最後の講演ではないだろうか。

 この40分間の講演で、彼はゲームのセオリーの中で「囚人のジレンマ」について長い時間をかけて説明している。「囚人のジレンマ」は、二人の囚人が自白しなければ無罪。一人が自白すれば自白した人は3年。しなかったものは10年の刑期。二人とも自白すれば二人とも7年、という皆さんよくご存じの話だ。

 彼は、「二人とも自白しない」という最善の結果をもたらす行動をとるには、互いの信頼が必要だと説明する。牢屋に収監された後はお互いに意思疎通が出来ないが、それまでの積み重ねが大事なのだ。同じ国からの移民グループ、同じ教会の信者、幼馴染、同じスポーツチーム、というバックグラウンドを共有する人は他の囚人を信頼し口を割ることはない、とSchellingは説く。

 このたとえをウクライナ情勢に当てはめてみるとどうだろうか。米露ともに意思疎通は疎で、これまで信頼の醸成される関係もなかった。国際紛争を回避する、あるいは起きても深刻化させないためには、たゆまぬ意思疎通が重大なのがわかる。日本の外交でも心すべきポイントだと思われる。

(2022.2.22 Tuesday)