「上流思考」を読まずに読む

今朝の日経で、『上流思考』ダン・ヒース著がAmazonで第一位の人気だというダイヤモンド社の広告に目が行った。”Upstream” by Dan Hearthの翻訳本であろう。

 このブログで再三説明してきたように、まず、Youtubeで著者が話しているvideoが無いか探す。あった。https://www.youtube.com/watch?v=Edoj7cF5QKs わずか4:37の長さだ。しかも日本語訳もある。

【Videoの要旨】
 我々は日常生活で多くの問題に直面する。問題を解決してくれる、消防士、警察官、Lifeguardは重要だ。が、もっと重要なのは、燃えないビルを作る、若者が犯罪に走るのを食い止める、救命胴衣を準備する、といった、問題が起きないように「上流」ですることだ。そのためにはUpstream Heroが重要だ。

 問題の解決を上流で行おうとするUpstream Heroは目立たず時に理解されない。
 Darshak Sanghaviという連邦政府の役人のケースを見よう。彼は「糖尿病予防プログラム」を提案した。人々の健康を増進し、コストが削減できる計画だ。ところが、連邦アクチュアリー(保険数理士)はこのプランに反対した。人々が長生きするとメディケアが立ち行かなくなるというのだ。
 Sanghaviとその上司の再三の申請で、「メディケアを維持するためには病人が死んでもよい」という連邦アクチュアリーの考えは改められた。このプログラムは2015年にやっと承認された。

 このように、問題の根本を解決しようとする努力は目立たない。が、この例では、連邦のルールブックのわずかな改訂が、糖尿病の発生を抑えることにつながったのだ。Upstream Heroを見つけたたえる努力が大切だ。

【感想】
 リスク管理の世界では、予防的統制は発見的統制よりも、コストがかからず有効だと一般的に言われる。
 「今そこにある問題」がはっきりしているなら、後手に回らず先手を打ち、場当たり的に問題に対処するのではなく根本原因(はやり言葉で「真因」という)をつぶすのが正しい対処法だ。
 本書の結論は常識的だ。わかっちゃいるけど「あたふたと毎日忙しく」働かざるを得ない状況をどう解決するか、踏み込んだ分析がされているのだろうか。

 コロナ対応で、厚生労働省の医系技官、政治家、地方の組長等の思惑が異なり我が国では病院・保健所の対応の有効化・効率化が2年経過しても出来ていない。著者はこうした状況にどうコメントするだろうか。

(2022.2.21 Monday)