食べ物が人間を規定する

Dis-moi ce que tu manges, je te dirai ce que tu es.
「君が食べているものを私に言いなさい。私は君がどんな人かを言ってあげよう。」19世紀フランスの美食家ブリア=サヴァランの有名な言葉だ。

 階級社会の色彩が強い西欧では、階級により食べ物が異なるので、何を食べているかは身体だけでなくその人の人格も形成することになる。何を食べているか聞けば、その人の出自や階級がわかるのだ。
 フランスのまっとうな中学の給食をTVで見たことがあるが、前菜とメインが二品、デザートありで、彼我の給食の違いに愕然とした。

 日本ではどうか。
 以前、伊集院光のラジオ番組で、彼が「給食でクジラベーコンを食べ、家の夕食でクジラベーコンを食べ、自分の身体の多くがクジラベーコンで出来ている」と言っていた記憶がある。1970年頃の高度成長から一億総中流の時代は、皆同じような食生活で満足していたと言えるのかもしれない。

 現在の日本では子供の7人に一人が相対的貧困にあると言われ、子供食堂でしかまともな食事が出来ない子供たちがいる。一方、高級レストランが大流行りだ。大いなる格差社会の現在、日本でもブリア=サヴァランの言葉が説得力を持つようになってきた。

 自分はどうか。
 20年以上前、ニューヨークの勤務していたころ、毎朝ベーグル+クリームチーズとコーヒー(合計3ドル)を地下鉄の出口で買ってオフィスに持ち込んでいた。いまは大分と高くなっているのだろうか。
 伊集院氏の言い方をすれば、当時の自分の3分の一はベーグルとコーヒーで出来てたのだ。多くのインベストメントバンカーたちもそんな感じだったはずだ。

(2022.2.15 Tuesday)