「円の実力低下、50年前並み」日経新聞を読んで

日経新聞の今日の1面に標記の見出しが躍っている。
記事を読むと50年前とは1972年を指している。昨日、宇沢先生の「自動車の社会的費用」(1974年刊)について思い出話を書いたが、またぞろ、学生時代に引っ張り込む記事が出た。

日本円は戦後1947年4月に1ドル360円と決められ、高度成長期の日本は実力に比べて安い円で輸出を伸ばした。対外赤字が増嵩したアメリカは、1971年8月15日にドルと金の交換を停止し、固定相場制から変動相場制へ移行した。いわゆるニクソンショックだ。

私は1971年4月に東大の文科Ⅱ類に入学したが、変動相場制移行は大問題だと学生の間では思われており、11月に行われた駒場祭で識者を集めて講演会を開催した。大勢の聴衆が集まると思い300人ほどは入れる教室を確保したら聴衆は30人ほどしかあつまらず、巷間言われるほど、円ドルレートにみんな興味がないんだなー、と痛感した記憶がある。

今確認すると、1971年末のドル円レートは1ドル315円だ。1972年は315円で始まり12月末は301円で終わっている。当時は円相場が上がって(円が強くなって)大変だという輸出企業の声が多数だった。また、個人的にはアジアにスタディツアーを組織したり、ボストンの会計事務所で2か月研修を受けた。円が強くなったので、随分暮らしやすく感じた。アメリカの物価水準も
あまり気にならなかった。要すれば、円は強くなった、と実感したわけだ。

弱い円は困る。が、50年前を持ち出されても、個人的な当時の体験とは齟齬があるのは上記の通りだ。そもそも、50歳以下の人達には想像の外であろう。

(2022.1.21)