EUの米中間での立ち位置

トランプ政権下で高まった米中の対立はバイデン政権になってもそれほど緊張が緩和される方向には動きそうもない。

イアン・ブレマーが主宰するユーラシアグループのニューズレターに面白い論考があった。米中間でEUはどのようにその立ち位置を定めるかという問題だ。

選択肢は以下の3つ

1.伝統的な大西洋を挟んだ米国との連携を強化して膨張する中国の力の封じ込めを図り、基本的人権や個人の自由といった「西欧の価値」を支持して行く。

2.機能しない米国政府とこれまでになく強権的な中国政府とEngageしてゆく。(うまく日本語にできないのですが、付き合ってゆく、程度の意味かと思われます)

3.米国と中国から欧州が戦略的に独立する動きを強化する。

アメリカ第一主義を掲げたトランプから同盟国との協調を重視するバイデンを欧州は歓迎するものの、米国内では依然として根強い一国主義があることや中国との貿易がEUに大きな利益をもたらしている現状を考えると案1だけに飛びつくのは躊躇される。

メルケルは案2を上手くこなしてきた。中国と欧州の投資契約の樹立はその表れだ。だがもうすぐ引退だ。

メルケル後を率いるマクロンの理想主義は案3を試行するが、国内での選挙に勝たねばならぬ事情がそれを妨げよう。

論考では、結局は3つの選択肢のどれを追及して行くかしばらくEU内での議論が必要であろう、というやや平板な結論になっている。

欧州はそうだとして、日本への教唆としては、かかる国の方針をめぐる議論が我が国には悲しいほど少ないことが第一にあげられる。

自由と民主主義を尊重する経済大国であり核兵器を持たない国として、日本としては欧州を代表するドイツや米州を代表するカナダと緊密に議論して連携しながら国策をかたち作って行く必要があるのではないかと考える次第だ。

(2021.1.30)