世界の動き 2025年6月12日 木曜日

今日の一言
「GDP1,000兆円」
10日に石破首相が参院選の目玉としてぶち上げた政策だ。15年間で国民の所得を1.5倍に増やすという話だ。
「15年で1.5倍になるIRRは?」とGPTに聞くと「約2.5%」という回答がすぐ出てくる。とても便利だ。1.5倍と言うと聞こえが良いが、15年間の成長率は2.5%に過ぎないことがわかる。
石破首相の政策はダイナックな成長への政策の転換と言うよりも、人手不足による大企業中心の足元の賃金上昇が15年間続くことを前提とする単純なお絵描きでしかない。

国民全体に2万円を給付する分配政策が注目され、GDP1000兆円議論は全く盛り上がらないのは当然だ。
人口の高齢化・少子化を見据えた産業構造の変化を主導し日本経済の将来のビジョンを描こうと言う姿勢は見えない。今こそ骨太な議論が必要な時だと思うのだが。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.トランプ大統領、米中貿易協定は「成立」と発言
【記事要旨】
ロンドンで2日間にわたる協議を終えたトランプ大統領は昨日、米中両国がここ数カ月、互いの経済に対して講じてきた制裁措置の一部を撤回することで合意に達したと述べた。
この合意に基づき、中国は一部の米国製造業にとって不可欠な希土類鉱物と磁石の輸出規制を緩和する。その見返りとして、米国は中国人留学生へのビザ制限を課さず、一部の米国製品の輸出制限を緩和する。合意の詳細はすぐには公表されていない。
トランプ大統領はソーシャルメディアに、「中国との合意は成立した。習近平主席と私の最終承認を条件に。両国の関係は素晴らしい!」と投稿した。
背景:トランプ大統領が4月に大幅な関税を発表した後、米中間の経済緊張は高まった。こうした緊張の高まりは両国の企業を脅かし、今年後半にはアメリカの小売店の棚が空になるリスクをはらんでいる。
関税:両国間の関税は変更されず、一部関税の発動停止期間である90日間は8月に期限を迎える。米国通商代表部(USTR)は、両国は引き続き連絡を取り合うものの、次回の会合はまだ予定されていないと述べた。
分析:「今回の合意について私たちが知る限りでは、これは大統領自身の貿易戦争による損害とエスカレーションを解消するだけのものに過ぎないようだ」と、貿易・国際経済を担当する同僚は語った。「両国はまだ新たな貿易協定に向けて何の進展も見せていない。」
レアアース:世界のレアアース(希土類金属)と磁石の供給を支配する中国は、米国との交渉において過剰な行動を取らないよう努めていると、タイムズの北京支局長は記している。
【コメント】
トランプの発言は眉唾だ。何か決定されたか詳細はここ数日の動きを見てみよう。アメリカの守勢が目立つ交渉だったとみる。

2.米国の都市、さらなる抗議行動に備える
【記事要旨】
移民強制捜査への抗議デモが数日続いたことを受け、トランプ大統領はロサンゼルスに部隊を派遣した。その後、太平洋岸北西部から南東部にかけての米国の都市でも、抗議行動が広がっている。
ニューヨーク市、ノースカロライナ州ローリー、オレゴン州ユージーン、シアトル、セントルイス、サンアントニオで抗議行動が予想されていた。ワシントンでは、ヘグゼス国防長官が上院公聴会で、国防総省がロサンゼルスに約5,000人の海兵隊と州兵を派遣した際に用いたのと同じ法的権限を、「法執行官が脅威を感じるような暴動が発生した場合」他の都市でも適用できると述べた。
トランプに関するその他のニュース:
・トランプ大統領はイーロン・マスク氏から電話を受け、マスク氏は後に大統領への攻撃について遺憾の意を表明した。 「やりすぎた」と彼はXに書いた。
・マルコ・ルビオ国務長官は、ハーバード大学が中国で会議を開催したことで制裁に違反したかどうかの調査を推進している。
【コメント】
ヘグセス国防長官の「法執行官が脅威を感じるような暴動が発生した場合、他の都市でも適用できる」という判断であれば、全米のいかなる大規模抗議運動に大統領は州兵と国軍を派遣できることになる。米国の分断は極まれりという状況だ。

3.ネタニヤフ首相は議会での採決をめぐり圧力にさらされている
【記事要旨】
イスラエルの野党は昨日、議会解散動議の採決を示唆した。この動きは、ネタニヤフ首相率いる右派政権の崩壊につながり、早期総選挙の可能性を高める可能性がある。
動議が可決されたとしても、政権が直ちに崩壊する可能性は低く、最終採決には数ヶ月かかる可能性がある。野党は、超正統派ユダヤ教徒の男性の兵役免除をめぐる与党連合内の対立を利用している。
その他の中東関連ニュース:
・米国国務省は、イランとの緊張が高まる中、イラクから外交官を撤退させると発表した。
・ガザ地区中心部にあるイスラエル支援の支援センター近くで発生した最近の銃撃事件では、数人が死亡した。
・マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使は、イスラム諸国はパレスチナ国家に領土を提供すべきだと発言したが、これは米国の長年の政策から逸脱する提案となる。
【コメント】
ネタニヤフ首相の若いころの経歴が面白い。米国で青春時代を過ごし、高度な教育をうけた人なのだ。以下Wikipediaより。
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ネタニヤフは家族と共に1956年から1958年、1963年から1967年にかけてアメリカに在住。ペンシルベニア州フィラデルフィアの郊外で成長し、チェルテナム高校を卒業した(兄も同高校を卒業している)。高校ではディベートクラブに所属していた(そのため英語に堪能であり、言葉にはフィラデルフィア訛りがあるという)。
高校卒業後にイスラエル国防軍に入隊し、1967年から1973年にかけて様々な軍務(第三次中東戦争、消耗戦争、サベナ航空572便ハイジャック事件の解決)に従事。1972年には肩を撃たれて負傷している。第四次中東戦争では部隊を率いてシリア領内に侵入した。1973年に除隊(最終階級は大尉)。
除隊後はアメリカに戻り、マサチューセッツ工科大学の理工学位とMITスローン経営大学院の学位を取得、ハーバード大学とMITで政治学を学んだ。三度結婚しており、最初の結婚で娘のノアをもうけた。現在は、客室乗務員だった三番目の妻サラと共に暮らし、ヤイール、アヴナー の2人の息子がいる。ヤイールは現在、軍務に就いている。
MITを優秀な成績で卒業後、1976年から1978年にかけてボストン・コンサルティング・グループで経営コンサルタントとして勤務し(当時の同僚に後のマサチューセッツ州知事となるミット・ロムニーがいた)、イスラエルに帰国。
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その他の記事
北アイルランド:反移民デモが広がる中、バリミーナの町で2夜連続の暴動が発生し、警察官17人が負傷した。
ウクライナ:トランスカルパティア地方は過去3年間、ロシアによる攻撃がほとんどなく、避難民の引き寄せの場となっている。
【注:トランスカルパティア州はウクライナの最西部でスロバキア、ハンガリー、ルーマニアに囲まれた地域だ】
ポーランド:今月の大統領選挙で民族主義派の野党が勝利したことを受け、中道派政権が議会の信任投票で勝利した。

ビジネスと経済
・英国政府は今後数年間の経済優先課題を示す中で、数千億ドル規模の支出を発表した。
・エネルギー:ドイツはロシア産天然ガスからの脱却を目指し、主に米国からの液化天然ガス(LNG)輸入を処理する施設を建設している。

2025年6月12日 木曜日