MBSの問題はSVBだけではなさそう

 住宅ローン担保証券 (MBS) は、銀行が破綻するたびに出現する。
 2008 年には、MBSは世界の金融システムをほぼ崩壊させた。なぜなら、米国の投資銀行が、不動産向け債権でリスクが高いものを集めてプールを作り、それらを分割し、投資可能なレベルの信用格付けをつけて、年金基金と銀行に安全な投資として請求されたものを詰め込み、そうした商品の本源的な弱さを露呈したからだ。
 今日は話が違うと思われていた。                        現在のMBS の基礎となるローンは、’08/’09当時のものよりもはるかに安全であると考えられていた。シリコンバレー銀行の崩壊は、SVB が帳簿に積み上げていたファニーメイ・ジニーメイと言ったエージェンシー MBS は 750 億ドルを超えていたが、それは問題ではなく、 SVB が稚拙な金利リスクの管理行っていたせいだと理解されていた。
 FRB が前例のないペースで利上げを行ったため、SVB の MBS ポートフォリオの価値は下落し、預金がなくなると、SVB は MBS と米国国債のポートフォリオの一部を売却せざるを得なくなった。こうして損失を認識したことで、SVB はその貧弱な金利リスク管理を露呈し、取り付け騒ぎを引き起こした。これが従来の説明だった。


 MBS自体には現状リスクが無いと見て良いのだろうか? 現在の市場動向がMBSにそして銀行にどのように悪影響を及ぼすのかを分析したい。米国での状況を深堀しよう。
 商業用不動産、特にオフィス部門は深刻なの銀行からの流動性の不足に直面している。最近の銀行危機は事態を悪化させる。 2023 年には、オフィスを対象とするコマーシャル MBS (CMBS) で約 170 億ドル(2.2兆円)の借り換えが予定されている。
 PIMCO、ブルックフィールド、さらにはブラックストーンでさえ、今年 CMBS 債で債務不履行を行った。最大手のプレーヤーがそうすれば、他のプレーヤーも後に続く。特に老朽化したオフィス在庫を持つ都市にとって深刻な問題だ。


 例で示すとわかりやすい。
 あなたが不動産投資家であるとする。 2016 年に、あなたはクラス B のオフィス ビルに 5,000 万ドルを支払った。購入価格の 70%、つまり 3,500 万ドルを借りいれた。 金利は 3% で、7年のローンは 30 年にわたって償却される。
 今年は借り換えをしなければならないが、環境は完全に変わった。在宅勤務の増加により、建物の 3 分の 1 が空いている可能性がある。リースがまだ残っていても、リースされたスペースが使われていない場合、更新リスクが高まるため、銀行は 2016 年と同じような収益予測をしない。
 銀行は借り換えを認めないかもしれない。 借り換えが出来るとしても、ローン・トゥ・バリューの期待値は 50% 近くになり、金利は約 7% になる。 あなたのローンの償却は 30 年なので元本はほとんど減っていない。
 あなたはどういう選択が可能か。新しいローンを得るために、さらに 1,000 万ドルの資本を注入するか、債務不履行にするかだ。
 つまり、証券化されたローンを延長または再構築するのは大変困難なのだ。
 空きビルの増加は市の財政を直撃するので、不動産セクターに見ならず公共セクターへも影響が出てくる恐れがある。


 FRBや財務省はSVBや地銀数行で問題を収めようとしているが、CMBSの脆弱性が広く認識されてくると問題は解決困難になる。

2023年3月25日 土曜日