「決心」考

 「去年今年 貫く棒の 如きもの」(高浜虚子)
 大晦日から新年になったと思ったら、あっという間に新年の初日が終わろうとしている。

 年の初めに人は今年こそはと決意し予定を立てたがる。
 世界の名作中、人間の決意を最も見事に描いているのは「偉大なるギャツビー」であり、ギャツビーの葬式に来た父親がギャツビーの少年時代のノートを主人公に示すくだりだ。以下に引用する。Heはギャツビーの父親だ。

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He opened it at the back cover and turned it around for me to see. On the last fly-leaf was printed the word SCHEDULE, and the date September 12, 1906. And underneath:

 Rise from bed 6.00 A.M.
 Dumbbell exercise and wall-scaling 6:15-6:30 “
 Study electricity, etc 7:15-8:15 “
 Work 8:30-4:30 P.M.
 Basaball and sports 4-30-5:00 “
 Practise elocution, poise, how to attain it 5:00-6:00 “
 Study needed inventions 7:00-9:00

 GENERAL RESOLVES
 Not wasting time at Shfters or [a name, indecipable]
 No more smoking or chewing
 Bath every other day
 Read one improving book or magazine per week
 Be better to parents

 彼は裏表紙を開き、それを僕が読めるように逆さに向けて差し出した。最後の見かえしの 紙に、きちんとした字で「スケジュール」と書いてあった。そして千九百六年九月十二日という 日付。その下にはこう記されていた。

 起床 午前六時
 ダンベル体操と壁のぼり 午前六時十五分―六時三十分
 電気などの勉強 午前七時十五分―八時十五分
 仕事 午前八時三十分―午後四時三十分
 野球などのスポーツ 午後四時三十分―五時
 演説の練習、風格を身につける 午後五時―六時
 有用な発明について勉強する 午後七時―九時

 その他の決意
 「シャフターズ」や「・・」(名前は判読できない)で時間を無駄にしないこと。
 巻き煙草、噛み煙草はもうやめる。
 一日おきに風呂に入る。
 有益な本か雑誌を週一冊は読む。
 週に三ドル(五ドルとあったのが消されている)貯金する。
 両親にもっとよくする。
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 私は最初にこの部分をロバート・レッドフォード主演の映画で見たときは胸が詰まった。小説を読んだのはそのあとだったが、同様な印象を受けた。

 ギャツビーは、こんな片田舎で一生を終わりたくない。 将来のために自分を鍛えるスケジュールをたて、実行していたのだろう。彼の成功への夢とデイジーへの想いの成就はすぐ手に届くところまで来たが、手のひらから零れて行った。

 ギャツビーの決意に比べると、自分の決意などは何とあやふやなものなのだろうか。

 ただこうも考える。
 自分はこれまで何度も失敗してきた。だからまた今年も立ち上がる必要がある。失敗するに違いなくても歩を進めるのが(残念ながら)人生そのものであり、その過程で一隅を照らすことが出来れば、それが、人生の意味なのだろうと。

2023年1月1日 日曜日