事業プランが達成できない理由

 あるハイテク(的な)企業を創業から支援している。数年前までは社外役員だった時期があるが、今は役員は辞めており単なる少数株主だ。

 この会社はとても頭のよい外国人によって創業された。その後日本人の経営者も迎え入れ、技術開発は海外と日本で行い、販売先は今のところ日本国内だ。

 創業当初は、全く新しいビジネスなので、ブルーオーシャン市場で、1年目1億円、2年目で3億円、3年目で10億円と売り上げが伸びる事業プランを示して資金を集めた。創業者の外国人社長は、驚くほど口八丁手八丁で他人を説得するのに長けている。

 しかし事業プランは実現したことがない。決算に際して、予算が達成出来なかった理由の説明には事欠かない。開発エンジニアが集まらず製品投入が遅れた。採用したエンジニアが期待レベルで無かった。来年はそれらが改善され必ず数字が達成されるという説明が上手だから、日本の名だたる大企業や投資ファンドで投資家に名を連ねるところも出てくる。しかし達成されたためしがない。

 こうした創業者は自分はイーロン・マスクやジェフ・べゾスのような天才だと思い込んでいてそのうちに事態は好転すると信じている。客観的に見ると、失敗する創業者は「ウソつき」か「愚か者」だ。実現しないプランを実現できると思い込んでいるとしたら「愚か者」だ。プランが実現できないと自分でわかっているのに他人に実現できると説明するのは「ウソつき」だ。

 ベンチャーキャピタルの投資の成功率は巷間では「千三つ」というが、私の経験では3割に満たない。我々は「ウソつき」と「愚か者」を見極めて、まともな創業者を見極める知恵が必要だ。

2022年10月29日 土曜日