世界の動き 2025年9月25日 木曜日

今日の一言
「H-1Bビザ」
 1991年にニューヨークに赴任した際に取得したのがこのビザだった。当時は上級職に与えられるEビザの取得が困難になり、銀行の部門長クラスは、専門職に与えられるこのビザを取得して米国で働いた。取得に1か月ほどかかったが、困難なものではなかった。ニューヨークで働く日本食の職人が、やはりH-1Bを取得すると聞いて、同じ専門職扱いなのだなと、妙に感心した記憶がある。
 トランプ大統領が、移民の流入の原因になるとして、このビザの発給を限定的にして、かつ、発行に際し1件10万ドルを課す大統領令に署名したという報道があった。
 米国のハイテク企業を支える人材の多くが米国に流入するのに何らかのビザを取得した。米国のハイエク大手Magificent10のうちの6社のトップが学生ビザかH-1Bビザを取得して米国で勤務を始めた。
 具体例として「マグニフィセント10」大手テクノロジー企業のCEO10人のうち6人は、当初何らかのビザで米国に渡航した。
サンダー・ピチャイ(アルファベット) — 学生ビザ(F-1)→キャリア初期にH-1Bビザを取得。
サティア・ナデラ(マイクロソフト) — 学生ビザで渡米し、後にH-1Bビザに切り替えた(グリーンカードを放棄したことは有名)。
イーロン・マスク(テスラ) — 学生ビザで渡米し、後にH-1Bビザで就労。
ホック・タン(ブロードコム) — 1971年に学生ビザ(MIT奨学金)で渡米。
ジェンセン・フアン(NVIDIA) — 1973年に子供(約9歳)の時に家族と共に移住。多分親がH-1Bで入国。
リサ・スー(AMD) — 幼児(約3歳)の時に両親と共に移住。多分親がH-1Bで入国。
 トランプ政権は、すでに学生ビザの発給は大きく制限しており、今回はH-1Bの制限開始だ。
 米国の将来的な国力を大きく削ぐ政策だ。

ニューヨークタイムズ電子版より
(今日は、何故か配信がありませんので、私がいくつかのメディアから興味深い記事を3つ取りあげます。)

1.ジミー・キンメルがテレビ復帰:勝利か、それとも新たな戦いの始まりか?(The NewYorker Dailyより)

ジミー・キンメルは、親会社ディズニーによって一時停止されていたABCの深夜番組に約1週間ぶりに復帰しました。この停止は、チャーリー・カークの殺害後のキンメルの発言に対し、米連邦通信委員会(FCC)の委員長ブレンダン・カーが介入の可能性を示唆したことがきっかけでした。
復帰は一見すると勝利のように見えます。世論の反発によりディズニーは停止を解除し、トランプ政権に対抗する姿勢を見せました。復帰後のキンメルの冒頭のモノローグでは、トランプ大統領を皮肉り、通常通りのユーモアも見られました。しかし、キンメル自身が指摘したように、番組は依然としてシアトル、ナッシュビル、ニューオーリンズ、ワシントンD.C.、ポートランドなどの主要都市では放送停止中で、ABC系列局の約4分の1が放送を拒否しています。
さらに、トランプ氏はキンメルの復帰に激怒し、「ABCを試す」とSNSで発言。以前の対立では1600万ドルを得たとし、今回も「もっと儲かりそうだ」と述べ、対立が続くことを示唆しました。

2.NATO結束に試練(Bloombergより)

ロシアによる領空侵犯への対応をめぐり北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間で調整が難航しており、足並みの乱れが表面化している。ドイツはロシア機撃墜のリスクについて警鐘を鳴らした。一方、ほぼ同じタイミングでトランプ米大統領はポーランドやバルト3国の支持を背景に、より強硬な姿勢を取ることに前向きな考えを示した。ロシアのプーチン大統領がNATOの結束を試す中、こうした違いは同盟内に懸念すべき亀裂があることを浮き彫りにしている。ロシア軍用機によるNATO加盟国への領空侵犯は、東側の同盟諸国を中心に不安を広げている。

3.どれくらいの現金を保有して傍観すべきか?(Fitz Geraldのニュースレターより)
昨日RFDTVのスコット・シェラディ氏(別名「カウ・ガイ」)の番組で、多くの投資家が頭を悩ませている問題についてタイムリーな対談を行いました。それは、現金をどれだけ保有すべきか、それとも市場にどれだけ投資すべきかという問題です。
私の見解:短期的な思考を長期的な支払い能力と交換するのは、決して良い賭けではありません。
投資家が今日、不安定な市場から距離を置くことで避けていると考えている痛みは、資金が尽きたときの痛みに比べれば取るに足らないものです。

2025年9月25日 木曜日

世界の動き 2025年6月24日 水曜日

今日の一言
「東京の日照時間」
 秋分の日を過ぎて、これから日が短くなる一方だ。東京の日照時間が一年でどう変化するのか調べてみた。
 春分の日(2025年3月20日)
日の出:5時42分 日没:17時51分
日照時間:約12時間09分 昼夜の長さがほぼ等しい
 夏至(2025年6月21日)
日の出:4時25分 日没:19時00分
日照時間:約14時間35分
南中高度:77.8度(太陽が最も高く昇る)
 秋分の日(2025年9月23日)
日の出:5時28分 日没:17時36分
日照時間:約12時間08分(春分とほぼ同じ)
 冬至(2025年12月22日)
日の出:6時47分 日没:16時32分
日照時間:約9時間45分
南中高度:30.9度(太陽が最も低く昇る)
 春分・秋分は太陽が真東から昇り、真西に沈むため、昼夜の長さがほぼ等しくなる。
 夏至は一年で最も昼が長く、冬至は最も短い日だ。
 日照時間の差は、夏至と冬至で約5時間にもなる。
 月から金曜は毎朝5時半に起床してこのブログを書いている身には、これからは日昇前に作業することになり、つらい時期だ。
 四季の大きな変化は日本人の人生や輪廻に関する思想に大きな影響を与えているのだろうと思いながら今日もブログに取り組んでいる。

ニューヨークタイムズ電子版より
トランプ大統領の国連演説の要点
【記事要旨】
 演説の内容とトーン:
トランプ氏は国連で約1時間にわたり演説し、同盟国・敵国の両方を非難した。「あなたたちの国々は地獄に落ちていく」と発言し、国連の存在意義にも疑問を呈した。
 演説は予定の約4倍の長さに及び、移民政策やグリーンエネルギーを強く批判した。
 気候変動への姿勢:
 気候変動対策を「史上最大の詐欺」と断じ、パリ協定からの再離脱を正当化した。
 国際関係と安全保障:
 国連は戦争終結に貢献していないと主張し、自分は、世界中で戦争を終わらせたという主張を繰り返した。 「残念ながら、いずれの場合も国連は支援を試みることすらしなかった」と彼は述べた。
 NATO諸国に対し、ロシア軍機の撃墜を促す発言をした。ウクライナに関しては、ロシアからの領土奪還を支持する姿勢に転換。
 スパイ活動の疑惑:
 国連本部周辺で、携帯通信を妨害する装置や大量のSIMカード・サーバーが発見されたと報告された。
【コメント】
 もう国連を脱退したらどうですかね、トランプさん。

イーロン・マスク氏の父親が児童性的虐待の容疑で告発される
【記事要旨】
 イーロン・マスク氏の父親であるエロール・マスク氏は、南アフリカとカリフォルニアで5人の子どもと継子を性的虐待した容疑で告発されていることが明らかになった。
 この疑惑は、イーロン・マスク氏の生活にも繰り返し波及している。親族は彼に助けを求め、マスク氏は時折、仲裁に入っていることが、明らかになっている。
 最初の告発は1993年、当時4歳だったエロール・マスク氏の継娘が、自宅でマスク氏に体を触られたと親族に告げたことがきっかけだった。
【コメント】
 親子関係をまとめると以下だ。
 幼少期、イーロン氏は両親の離婚後、父親と弟と一緒に暮らしていた。エロール氏はイーロン氏の好奇心や技術への興味を支え、何でも教えてくれる存在だったという。
 しかし、イーロン氏がアメリカに移住する際には父親の理解や支援はあまり得られず、親子関係は波乱も多かったようだ。イーロン氏自身も「父親からの影響は大きかったが、否定的な面もあった」と語っている。
 近年も、価値観や人生観の違いから意見が食い違うことがあり、メディアを通じてやりとりすることもありますが、家族としてのつながりは続いているようだ。
 性的虐待についての記述は見つからない。

その他の記事
今年最強の台風ラガサが台湾南方を通過し、2人が死亡した。ラガサは本日、中国・深セン近郊に上陸すると予測されている。
チャーリー・カークに関する発言をめぐり、緊迫した対立が続いたジミー・キンメルが深夜番組に復帰したが、米国のABC局の約4分の1は放送を見送った。
【コメント:現在のところ、ジミー・キンメル氏の番組『ジミー・キンメル・ライブ』が完全に放送禁止になるという事態は回避されたようだ。ただし、状況は非常に緊迫しており、政治的な圧力が背景にあることは否定できない。】
イスラエルの国家安全保障相イタマール・ベン=グヴィル氏は、多くの国がパレスチナ国家を承認したことを受け、被占領地ヨルダン川西岸の併合を推進する意向を示した。

トランプ大統領の圧力を受け、アフリカ諸国は米国から国外追放された人々を受け入れるための協定を結んでいる。

2025年9月24日 水曜日

世界の動き 2025年9月23日 火曜日

今日の一言
「72の法則」
 この言葉をご存じだろうか。何%で運用すると資産が2倍になるかを近似的に示す方法だ。

 例えば、100万円を1%で運用すると2倍にするのに72年かかる。2%では36年。3%では24年かかる。
 つまり、2倍になるのに用する年数は、72割る運用金利で求められるという便利な式だ。
 続けると、4%では18年。6%では12年。8%では9年。9%では8年。12%では6年。24%で3年だ。
 思い起こすと、私が銀行に勤め始めたとき、1年定期預金は8%、郵便貯金も8%、10年国債も8%だった。その時に預けた郵便貯金は10年間に倍以上になって戻ってきた。
 この簡単な式は、計算の便利さ以外に何を教えてくれるだろうか。
1.複利運用の偉大さだ。
2.こんな金利下でも当時の企業は高度成長を成し遂げていた。
3.物価高でブーブーいう庶民はいたが、安易に政府に補助金や減税を求めることはなかった記憶がある。
 現在、こんなに高い利回りを保証する商品はあり得ない。「みんなで大家さん」がとん挫したのが好例だ。
 高利回りを達成するには、やはり株式運用が不可欠だ。今回の株高を機に利食いは推奨するが、半分は株式に維持しベストな銘柄を保有し続ける重要さも指摘したい。

ニューヨークタイムズ電子版より
国連から撤退する米国とその穴を埋める国々
【記事要旨】
 今年の春、ジュネーブで開催された国連人権理事会の非公開会合では、アメリカの国連拠出金削減を背景に、中国やキューバなどの権威主義国家が人権調査の縮小を提案。これは、国連の運営を自国に有利に変えようとする動きの一環と見られている。
  資金問題と影響
 トランプ政権の国連からの撤退の動きにより、国連は深刻な資金難に直面し、経費削減策として、拠点の移転や契約終了、平和維持活動の縮小などが検討されている。
 一部の国(例:カタール、ルワンダ、ロシア)はこの危機を国連機関誘致や発言制限の好機と捉えている。
  米国の影響力の変化
 アメリカは国連創設以来、強い影響力を持っていたが、近年その力が低下している。過去には中国候補の阻止や米国人のトップ選出などで影響力を行使してきたが、最近では、中国主導の会議開催を阻止できず敗北するなど、影響力の低下が顕著だ。
  結論
トランプ政権の国連離脱方針は、権威主義国家による国連の再構築を加速させており、米国の国際的影響力の低下と、国連の人権活動の弱体化が懸念されている。
【コメント】
 日本の常任理事国入りの動きは頓挫して久しい。世界のGDPの18%の経済力を持っていた時期もできなかったことが、4%の現在、できるとも思えない。
 ただ、ここで米国に追随すれば、権威主義国の益々の台頭を許すことになる。核廃絶・軍縮、人権擁護、PKO活動等に絞って、日本の外交力を発揮する必要がある。

フランス、パレスチナ国家承認
【記事要旨】
 マクロン大統領は昨日、国連総会でパレスチナ国家の承認を発表し、出席者の一部からスタンディングオベーションを受けた。
 マクロン大統領は演説の冒頭、2023年10月7日のハマスによる攻撃を非難し、残りの人質の解放と反ユダヤ主義の抑制を要求した。マクロン大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、パレスチナ国家の承認はハマスへの報奨ではないと繰り返し説得しようと努めてきた。
 この非常に象徴的な動きは、イスラエル・パレスチナ紛争における二国家解決の実現を後押しするものだ。ガザ紛争が2年目に突入し、イスラエルがヨルダン川西岸地区の入植地を急速に拡大する中、この解決はこれまで以上に遠のいている。フランスは、既にパレスチナを主権国家と認めている約150カ国に加わる。
【コメント】
 パレスチナを国家承認している主な国々
アジア・アフリカ・中南米の多くの国々
 中国、インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンなど。これらの国々は1988年以降、順次承認を表明
  最近承認した国々(2024〜2025年)
英国、カナダ、オーストラリア、ポルトガル、フランス、ベルギー、マルタ、ルクセンブルク、ノルウェー、スペイン、アイルランド、ジャマイカ、バルバドス、アルメニア、スロベニア、メキシコなど
 パレスチナを国家として承認していない主な国々
アメリカ、日本、ドイツ、イタリア、韓国など
 これらの国々は「二国家解決は交渉によってのみ実現すべき」との立場を取っています。(以上wikipediより)
 日本の立場
日本はパレスチナ国家の承認を見送る方針を維持しています。イスラエルとの関係や米国との同調を重視しており、承認は「イスラエルの態度硬化につながる」と懸念されています。

関税に関する読者の質問への回答
Q: 関税は一度導入されると、簡単に撤廃できるのか?もしその後の政権が関税を撤廃すると決めた場合、経済的なものも含め、何か障壁はあるのか?
A: トランプ大統領が導入した関税は、議会での立法ではなく、大統領令によって実施された。法的には、そのため、次の大統領が関税を撤廃するのは容易だ。トランプ大統領の関税の多くは現在、最高裁判所で係争中で、最高裁が違法と判断し、年内に大統領に撤廃を命じる可能性がある。しかし、貿易専門家は、関税は定着しやすいと指摘している。つまり、政府にとって撤廃するよりも導入する方が簡単だということだ。例えば、バイデン政権は、トランプ大統領が最初の任期中に導入した関税のほとんどを維持することを選択した。将来の大統領は、政治的に不人気な関税を撤廃することは確かに可能だが、米国の平均的な関税は以前よりも高くなる可能性が高い。 

その他の記事
天気:スーパー台風ラガサがフィリピンに上陸し、土砂崩れを引き起こした。明日香港にも到達する見込みす。予報官によると、今年これまでで世界最強の嵐とのことだ。
米国:チャーリー・カークに関する発言を理由に先週放送中止となったジミー・キンメルの深夜番組が、本日放送再開すると放送局が発表しました。【??続報を待ちたい】
テクノロジー:NVIDIAはOpenAIに1000億ドルを投資すると発表しました。これは、人工知能(AI)の世界で飛び交う荒唐無稽な財務数値を示唆しています。
ロシア:ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワとワシントンの間で締結された最後の軍備制限条約で定められた上限を、さらに1年間維持することを提案した。

TikTok:米国当局者は、中国がTikTokのアルゴリズム(アプリの動画フィードを動かすエンジン)のコピーを、米国で同アプリを監督する米国の投資家グループにライセンス供与すると述べた。【???続報を待ちたい】

2025年9月23日 火曜日

南アジアの怒れるZ世代

南アジアと東南アジア全域で、起こりつつある異例の事態についいてユーラシアグループのニューズレターが警鐘を鳴らしている。

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 インドネシアでは8月下旬、パトカーがタクシーに衝突し、若い運転手が死亡した事件をきっかけに、大規模な経済抗議デモが激化した。ネパールでは今月初め、「ジェネレーションZ」と呼ばれるデモ参加者が国会に放火し、首相の辞任に追い込んだ。そして今週、東ティモールでは、多くの学生を含む抗議者が、政治家への公用車購入計画に反対して自動車に放火した。
 大きく異なる状況に共通するものは何か?それは、若者が既得権益を持つ指導者による汚職にうんざりしていることだ。インドネシアの混乱は、高額な生活費に苦しむ若者たちが、下院議員580人全員が住宅手当を受給していることを知ったことがきっかけとなった。プラボウォ・スビアント大統領は、この混乱を鎮圧しようと必死になり、一部の高官を交代させた。
 東ティモールの抗議者(学生を含む)は、既に国会議員の収入が中央値の10倍にも達する同国で同様の提案がなされたことに激怒した。
 ネパールの若者は経済停滞に苦しんでおり、政府が言論弾圧の一環としてソーシャルメディアの大半を禁止したことで、彼らは限界を超え、「Z世代革命」と呼ばれる現象の始まりとなった。

 こうした混乱は、この地域における政治危機の山積に拍車をかけている。3週間前、タイのパトンターン・シナワット首相は、国境紛争中にカンボジアの有力政治家と敬意を払った電話会談を行ったとして、裁判所から罷免された。
 ミャンマーは、軍事政権が複数の武装勢力との激しい内戦を繰り広げる中、絶え間ない危機に瀕している。
 フィリピンでは、二つの支配一族間のより広範な争いの中、汚職スキャンダルにより下院議長が辞任したばかりである。

 インドネシア、ネパール、東ティモールにおける最近の抗議活動の中心には若者がいるものの、外交問題評議会(CFR)のシニアフェロー、ジョシュア・カーランツィック氏によると、これは東南アジアに限った問題ではないという。

 「この地域に限ったことではないと思います」とカーランツィック氏はGZEROに語った。「世界中の多くの場所で、若者は政治に完全にうんざりしています…これらの場所では、中心が崩壊しつつあります。」

 これらの反乱が国内に及ぼす影響は不明瞭だ。インドネシアではプラボウォ氏が依然として政権を握り、ネパールは次期首相をまだ決定していない。しかし、一つ確かなことは、この地域全体の外交政策が今、緊迫しており、米中対立が白熱する中で、一貫したビジョンが欠如しているということだ。

 「これは間違いなく、地域の政治とリーダーシップに影響を与えています」とカーランツィック氏は述べた。 「この地域で最も強力な国々が外交政策や地域政策に専念していない。これは大きな問題だ」

 これは経済に大きな影響を及ぼしている。なぜなら、これらの国々はワシントンと中国と一対一で交渉しており、この二大超大国に対する交渉力が低下しているからだ。

 「過去には、東南アジア10カ国が日本や中国といった他の大国と貿易協定を交渉してきた」とカーランツィック氏は付け加えた。「彼らは協力してトランプ政権の積み替え関税を拒否することもできたはずだ。この地域には10億人の人口と巨大な輸出国がいるのに、そうできなかったのだ」
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 こうした地域横断的な現象は、「アラブの春」を思い出させる。2010年末から2012年頃にかけて中東・北アフリカ地域のアラブ諸国で発生した、民主化を求める大規模な反政府デモ運動の総称だ。チュニジアで起きた「ジャスミン革命」をきっかけに、エジプト、リビア、シリアなど多くの国に広がり、長らく続いた独裁政権が次々と倒れたが、一部の国では内戦や混乱が長期化し、「アラブの冬」と呼ばれる状態に陥り、その後の社会にも大きな影響を与えた。

 アジアでの安定した自由と民主主義の大国としての我が国が果たすべき役割があるはずだ。自国優先の米国と、地域の強権支配を狙っている中国の間に立ち、混迷する民主主義国を支援するのは我が国を置いてほかにないと思う。

 日本は、ASEANや南アジア諸国との関係も深いので、以下の役割が考えられる。

  1. 民主主義支援と人材育成

    若者向けの奨学金や交換留学プログラムの拡充(民主的価値観の共有)。ジャーナリズム、法学、ガバナンス分野の教育支援。
  2. 経済・雇用の支援

    インフラ投資やスタートアップ支援を通じた雇用創出。デジタル経済やグリーン産業での協力。
  3. 市民社会との連携

    NGOや地域団体を通じて人権・透明性・腐敗防止プログラムを支援。
  4. 外交的働きかけ

    ASEANや国連を通じて「包摂的な対話」や「民主的選挙の監視」を支援。ミャンマーのような軍政下では、制裁と人道支援のバランスをとる。

 日本としては、「上からの政府支援」だけではなく、若者世代や市民社会と直接つながるチャンネルを作ることが肝要だ。それによって、彼らが「民主主義的な未来像」を具体的に描ける環境を整えることが、日本のソフトパワー外交の強みになると思われる。

2025年9月21日 日曜日